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梨が胴枯病に。どう見極めてどう防ぐ?症状や対策を教えて

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梨が胴枯病に。どう見極めてどう防ぐ?症状や対策を教えて

今年中に妻の地元である山間部へ移住して、新規就農する予定です。

妻の実家では梨をメインに、冬から春はいろいろな野菜も栽培しています。

梨の栽培についていろいろ調べる中で、以前親戚の梨農家が胴枯病の被害に遭ったことがあると聞きました。

梨の胴枯病の症状や影響力、対策などについて詳しく教えてください。

李 哲揆

データサイエンティスト

梨の胴枯病は樹皮に病斑ができ、樹勢が衰弱して枯死することも

梨の胴枯病とは


梨の胴枯病は枝や幹に発生する病気であり、梨にとって最も深刻な病害の一つです。

以下に梨胴枯病の症状、原因、影響、対策について詳しく説明します。

初期症状


梨の胴枯病の初期症状として、1、2年生の枝では、感染した部位の樹皮に赤褐色や紫褐色の特徴的な病斑が現れます。

最初は小さな斑点状ですが次第に大きくなり、周囲との境界がはっきりします。

周囲の樹皮とは明らかに色や質感が異なるので、できるだけこの段階で発病を疑いましょう。

病気が進行すると、変色部は縦に長くひび割れ、樹皮が剥がれやすくなります。


進行した症状


病斑が広がり枝や幹を囲むようになります。

病斑が木の内部まで達すると、栄養や水分の通り道が阻害されてしまいます。

その結果、枝は枯れ落ち、最終的には果樹全体が枯死してしまうこともあります。

感染が広がる前に見極めて、早期発見で適切に対処することが何よりも重要です。


ナシ胴枯病の影響


ナシ胴枯病が果樹に与える影響は以下のとおりです。

果実の収量減少:病気が進行すると枝や幹が枯れるため、果実の収量が減少します。
果実の品質低下:病原菌が果実に感染すると、「心腐れ病」という病気を引き起こします。これは収穫前後の果実で心部から腐敗、軟化させる病気です。
樹勢衰弱:病気がまん延すると株全体が衰弱し、枯死することもあります。


ナシ胴枯病の原因


ナシ胴枯病は、糸状菌(カビ)が原因で引き起こされます。

前年度に形成された病斑から、春〜夏の降雨時に胞子が飛散します。

剪定による切り口や日焼け、昆虫による食害痕など木の表面にできた傷から侵入し、枝や幹の内部を伝って移動します。

特に凍害や凍霜害により多発することもある。早ければ5月から病斑が見え始め、初夏から秋にかけて急激に拡大します。


ナシ胴枯病にかかりやすい品種


梨の中には胴枯病にかかりやすい品種が存在します。

最も注意が必要なのは「幸水」です。

次いで「豊水」や「長十郎」、「新水」、「新高」、「南水」などの品種もかかりやすいでしょう。

一方、「二十世紀」は、比較的胴枯病に強いです。

新たに栽培を始める際には、品種による病害への抵抗性をチェックしておいてください。


他の果樹や庭木などでも発病する


胴枯病は、梨だけでなく他の果樹や庭木でも発病します。

これまでに国内では、リンゴやイチジク、桃などの落葉果樹で報告されています。

特に欧米原産種の栗においては、胴枯病は最も注意が必要な病害とされています。

さらにサクラやポプラ、モミジなどの庭木や造林用樹木でも発生しています。


「さび色胴枯病」は原因・症状が異なる


梨には胴枯病の他に「さび色胴枯病」という病気も存在しますが、これは胴枯病とは原因・症状が異なります。

さび色胴枯病は7〜10月の比較的気温が高い時期に枝幹部を中心に発生します。

発病部位から樹液が流れ出て、樹液が乾燥するとさびのような赤褐色になり、樹皮には焦げつくような跡が残るという症状が見られます。

さび色の樹液のようなものが見えたらさび色胴枯病を疑いましょう。


梨の胴枯病を防ぐには


それでは梨の胴枯病を予防するには、どうしたらよいのでしょうか。

5つの対処法を紹介しましょう。

1.切断面は薬剤などで保護


胴枯病を防ぐのに不可欠なのが、切断面への薬剤などの塗布です。

剪定によって枝の切断面が増えると、それだけ原因菌が侵入するリスクが増えます。

そのため枝を切った直後の切り口全体に、しっかりと「癒合(ゆごう)促進剤」を塗布してください。

木にとっての傷口を保護し、迅速な回復をうながしましょう。

具体的には、「トップジンMペースト」や「バッチレート」「ベフラン塗布剤」、マシン油で希釈した「ベンレート」などがよく使われます。


2.排水不良なほ場の改善


ほ場が排水不良で根が傷んでいる場合は、胴枯病をはじめさまざまな病気が発生しやすくなります。

適度な冠水や施肥を心がけながら樹勢を適正に保ちましょう。

また、排水用の溝を設置するなどで、土壌に水がたまりにくいよう改善しましょう。


3.害虫対策


害虫対策も欠かせません。虫の食害で木に傷口ができるのを防ぎましょう。

定期的に木を観察し、見つけたらすぐに駆除してください。

特に注意が必要なのが、ナシホソガ、カイガラムシ、ガの幼虫、シンクイムシなどです。

定期的な薬剤散布や捕獲トラップ設置など物理的対策によって、発生・拡大を最小限に抑えることが大切です。


4.凍害対策


寒い冬には、梨の樹皮が凍ることにより亀裂が生じる可能性があります。

凍害リスク軽減のため、冬の剪定では強く刈り込みすぎないようにしましょう。

また低温期を迎える前にアルミシートやわらを木に巻いたり、根元に敷いて対策をする農家もあります。

また特に先に述べた胴枯病にかかりやすい品種の剪定作業は、寒い時期からずらして、春先に行うとよいでしょう。


5.被害発生時は感染部を削り取る


胴枯病に感染した場合、早期発見と迅速な対処が最も重要です。

病斑を発見したら、削り取るようにしましょう。

この削り取り治療は形成層をなるべく傷つけないように、病斑部を浅く広めに削り、前述の塗布剤を塗っておきましょう。

胴枯病の予防についてはこちらもご覧ください
胴枯病に感染しないための予防や、罹患してしまった時はどう対策すべき?



梨の胴枯病対策のポイント


胴枯病は、発症すると完治は難しいため、事前の対策徹底が求められます。

梨は胴枯病に品種によりかかりやすさに差があることを理解した上で、対策に取り組んでください。

その他の病害虫対策についてはこちらをご覧ください
梨の黒星病の症状や対策方法について調べています
梨の赤星病を初期段階で防止するには、どう対策すればいい?

このお悩みの監修者

李 哲揆

データサイエンティスト

名古屋大学大学院生命農学研究科にて博士(農学)を取得。東北大学、東京大学、理化学研究所などを経て、2018年からは東京農工大学生物応用システム科学府にて助教を務める。主な研究テーマは土壌微生物を用いた環境に優しい農法の開発。2021年4月から民間企業でデータサイエンティストとして働く。

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