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働いている梨園ではまだ病気の被害にあったことはないそうですが、近隣のバラを栽培している農家さんが黒星病の被害にあったそうです。
梨栽培でも黒星病という病害が起こりうるから気をつけないと樹生や収量の低下につながると聞きました。
人ごとではないとしり、さらに雨も多い地域なので余計に心配です。
初期に見つけるポイントや対策方法を知りたいです。
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前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
梨の黒星病は梅雨時期に発生しやすい病害で、薬剤や早めの摘果などを行って対策します
梨の黒星病について
ナシ黒星病は梅雨時期に発生しやすい真菌性の病害です。
この病気は葉や果実に黒または暗褐色の斑点を生じ、葉が早期に落下し、果実の成長が阻害されることで収量の低下につながります。
葉や葉柄だけではなく、果実にも症状が出ます。
具体的な症状
黒星病の症状が出るのは、4月下旬〜5月上旬です。
春先に葉や葉柄に細長く黒い病斑が作られ、手で触れるとすすついたようになります。
秋に発生すると、葉の裏に少し黒ずみ、汚れたような病斑を作ります。
果実が急激に肥大する時期に発生すると、果実にはエクボ状の病斑が発生し、裂果の一員となります。
果実への影響が出る前に、葉の段階から早期発見をして、対策に努めましょう。
黒星病が発生する原因
ナシ黒星病の原因となるのはカビの一種で、感染源となる子のう胞子が3月中旬から落葉上で形成され、5月中旬頃まで降雨などによって分散して感染を引き起こします。
ナシ黒星病菌は、気温が10度前後になると活発化し、15~20度の比較的涼しい気温でで特に発生しやすいので、5〜6月に気温が低く、雨が多いときは要注意です。
また、夏には高温で一時発生が衰えますが、秋になるとまた発生します。
さらに、葉が雨に濡れて24時間以上経過している場合も感染を招きやすいです。
特に、樹勢が低下している場合は感染しやすい傾向にあります。
黒星病を防除するポイント
黒星病は、感染してからの対策ではなく、感染させないための対策が重要です。
・過去に黒星病が出たほ場内の落ち葉を集めて土に埋める
・早めの摘果を行い、幼果が密集しないようにする
・密集した枝を整理して、多湿にならないように風通しの良い環境を心がける
・発病した部位は見つけ次第、除去し土深くに埋める
過去に黒星病を出した圃場であれば、落葉からの感染を招く可能性があるので、適切に処理をしておきましょう。
また、早めの摘果を行って幼果が密集しないようにしておくことも重要です。
摘果については、梨栽培における摘果の方法を知りたい(リンク)記事をご覧ください。
薬剤での防除も効果的
梨を黒星病から守るには、耕種的防除だけではなく、薬剤での防除も効果的です。
黒星病に対する予防及び治療効果が最期待できる薬剤として、DMI剤が使用されています。
・りん片脱落直前(4月上旬)
・落花期(4月下旬)
・果実肥大最盛期前(7月中旬)
上記のタイミングで定期的にDMI剤の散布を行うことで防除効果が期待できます。
薬剤耐性菌の出現を防ぐためにも、DMI剤の年間使用回数は3回以内に抑えるようにしましょう。
赤星病の対策についてはこちらをご覧ください
「梨の赤星病を初期段階で防止するには、どう対策すればいい?」
このお悩みの監修者
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。