水産会社で事務職員をしていますが、現場の漁師たちを見るうちに、自分でも養殖をやってみたいと考えるようになりました。
うちの会社ではブリ養殖をしていますが、ブリは多くの会社や漁師が行っているので、ほかの魚種を養殖してみたいです。
個人的に気になっているのがサバの養殖で、加工品にできるので、うまくいくのではないかと予想しています。
しかし、同じ国内に流通しているサバでも、天然物と養殖物では単価も違うと思うので、現在の市場ではどの程度、養殖のサバの需要があるのかわかりません。
養殖サバが占める割合や、需要の見通しについてアドバイスをいただけないでしょうか。
中平博史
全国海水養魚協会 専務理事
養殖サバの割合は低いがサバの需要は比較的高く、養殖サバに注目が集まっています
国内サバ生産高のうち養殖サバの占める割合
流通しているサバのほとんどが天然サバ
国内のサバは、ほとんどが漁船で水揚げされた天然サバです。
「令和3年漁業・養殖業生産統計」によると、日本では44万tもの天然サバが水揚げされており、魚の種類別でみると国内第2位の漁獲高となっています。
一方で養殖業をみると、「漁業・養殖業生産統計」の主要魚種にサバは入っておらず、正確な数値は公表されておりませんが、養殖サバの産地が多い九州では年80万尾超を出荷しているとのデータもあります。
出荷時のサイズを400gとすると、九州における養殖サバの生産量は320t超であり、天然サバに比べると生産量は多くありません。
つまり日本のサバは天然サバの割合がほとんどで、養殖サバは少ない状況です。
サバの漁獲量と養殖サバの将来性
減り続ける漁獲量
農林水産省の海面漁業生産統計調査によると、天然サバの漁獲量は1970年代の162万tをピークに減り続け、2021年には44万tとなっています。
サバは陸地から200海里以内の沖合漁業で漁獲され、一度で大量に漁獲できるため、多獲性浮魚類(たかくせいうきうおるい)といわれます。
ただし、海水温などの環境の変化の影響を受けやすいため、年によって漁獲量が大きく変動します。
サバの需要
総務省の家計調査の一世帯当たり年間品目別支出金額によれば、サバは魚種別金額で12位となっています。
国内ではサバが多く消費されており、比較的需要が多い魚です。
一方で、世界的にはサバの市場規模は2028年に13億ドルに達するとの試算もあります。
養殖サバの将来性
このようにサバの需要と、天然サバの漁獲量の減少により、近年養殖サバへの注目が高まっています。
養殖は天候や海洋環境の影響を受けにくいため、生産量に大きな変動がなく安定しているのが強みです。
サバの旬は夏ですが、養殖技術の向上によって、季節を問わずに生産することも可能になりました。
近年は生食ができることを特徴にした養殖サバが開発されています。
サバはアニサキスという寄生虫に感染しているリスクがあるため生食が難しいですが、養殖方法やエサを工夫することで生食を可能にしたサバが養殖されています。
また、海から遠い場所でもサバを養殖できる陸上養殖施設の技術開発が進められています。
陸上養殖の技術が定着すれば、養殖によって獲れたてのサバがどこでも手に入るという新たな価値を提供できます。
鮮度が落ちやすいサバの刺身も大都市圏の近くで養殖すればより多くの人に提供できます。
アニサキス寄生対策や与える餌についてはこちらをご覧ください
「養殖しているサバがアニサキスに寄生される可能性はありますか?」
「サバの養殖に使用する餌は?餌の種類と特徴を教えて欲しい」
養殖サバのブランド化についてはこちらをご覧ください
「養殖のサバでブランド化したい!各地域の養殖サバの特徴は?」
このお悩みの監修者
中平博史
全国海水養魚協会 専務理事
全国海水養魚協会の専務理事や一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会の理事を務める、魚類養殖業のプロフェッショナル。養殖水産物の輸出や赤潮などの環境保全対策活動にも携わっている。