これまで稲作をしていましたが、転作しようと考えています。
近所の道の駅は観光客で賑わっているのですが、ほかの農家さんが作っていない作物を販売しようと思い、レンコンなら水田で栽培できるし、うちの地域では誰も作っていないので、チャンスがあるのではないかと思います。
しかし、これまでレンコンを育てた経験がないので、悩んでいます。
特に、肥料に関して不明なことが多く、自分で調べてみても、何が正しい情報なのか判別できません。
レンコン栽培の施肥の基本とはどのようなものでしょうか?施肥の時期や量、元肥と追肥のポイントを教えてください。
野田勇人
特定非営利活動法人れんこん研究会 理事長
レンコン栽培の施肥には石灰窒素の肥効を考慮して調整しよう
レンコン栽培における施肥の基本
レンコンの生育段階を3段階に分けると以下のようになります。
・種レンコンの貯蔵栄養分を利用して、自立栄養のための新しい葉を成長させる生育初期
・茎葉が繁茂し光合成を盛んに行い、地下茎を伸ばす生育中期(この間に葉からの養分供給により成長する自立栄養に転換します)
・地上部の成長が落ち着いて開花が終わる頃、地下茎先端のレンコン肥大が進行するのを生育後期とします
施肥管理においては生育中期がポイントになります。
生育後期に窒素が過剰になると、栄養成長が促進され地上部が過繁茂になったり、無効分茎(むこうぶんげつ/未熟な肥大茎)が増えたりし、レンコンの肥大が進みません。
開花を目安に行う追肥ではリン酸・カリウムを中心にして生育後期には窒素成分が効かないようにします。
栽培時期についてはこちらをご覧ください
「レンコンの栽培時期と生育スケジュールを教えて」
レンコンの施肥の時期と量
生育初期から中期における施肥管理を怠ると、地下茎の伸長と分岐が不完全となり、レンコン収量低下の原因となります。
レンコンの養分吸収は、定植から6月頃までは少ないですが、7月以降は急激に旺盛になります。
こうした養分吸収特性を考慮したうえで施肥を行うことがポイントです。
茎葉の旺盛な繁茂により急速に地下茎が伸長するので、増大した生育量に応じた施肥がなされないと、レンコンの肥大時期に肥切れをおこしてレンコンの肥大が不完全になります。
レンコンの収量性(過去の出荷実績など)は圃場条件によって左右されます。
そのため過去の収量から逆算して施肥量を算出すると良いでしょう。
レンコン栽培の元肥と追肥
石灰窒素の施用
窒素供給と腐敗病対策として、石灰窒素を施用します。
圃場への植え付け2か月前に水を落とし、乾いてから10a当たり60~80kgを散布しよく混和させます。
根吸収への障害を避けるためにも植え付けの40日前までに施用します。
元肥
その他の肥料は石灰窒素の施用から2週間以降とします。
有機肥料をベースにした遅効性の肥料か、IB化成や被覆肥料などの緩効性肥料を用います。
近年は追肥不要の全量元肥1回の施肥というケースも増えています。
この場合は緩効性肥料が主体であり、生育状況に応じて肥効が現れます。
流亡も少ないので従来の窒素施肥量より1〜2割減でも十分です。
元肥を全面に施用した後に、十分な耕うんを行います。
追肥
生育中期に差し掛かる頃からレンコンの生育は急速に進みます。
生育途中で肥切れや障害が起きるとその時点の肥大に影響し、収量・品質ともに低下します。
そのため生育に応じて追肥して養分を補います。
追肥には目的別に、茎葉の繁茂を促す追肥と、レンコン肥大のための追肥(止肥/とめごえ)があり、前者の場合は窒素成分を主体に、後者はリン酸やカリ成分を主体に施します。
一般には、1回目は5月下旬の立葉2~3枚頃、2回目は6月中旬の立葉5~6枚頃、止肥は6月下旬に1番花の開花を合図に施用します。
レンコンの栽培方法や繁殖、作型などについてはこちらをご覧ください
「レンコンの栽培方法が知りたい。植え付けや収穫の時期はいつ?」
有機質肥料の活用と効率的な施肥
レンコン栽培には化成肥料が用いられることが多いですが、品質向上のために有機質肥料が使われることもあります。
化成肥料は尿素や塩化カリなど即効性のものがあり、迅速な肥効が期待できます。
近年利用が増えている元肥1回で済ませる緩効性肥料は追肥の手間を省くことができます。
対して骨粉や魚かす、油かすなどの有機質肥料は肥効の発現が分かりにくいです。
しかしながら微生物による分解で植物に吸収されるので、元肥に多く施しても濃度障害が出にくくなります。
いずれの肥料も効率的な施用により品質向上につながるので、それぞれの特徴を踏まえて施肥の参考にすると良いでしょう。
このお悩みの監修者
野田勇人
特定非営利活動法人れんこん研究会 理事長
私たちNPO法人は、レンコンづくりにあたって直面する様々な問題を解決するためのお手伝いと、レンコンについての幅広い知識を、生産者や一般の方たちに知っていただくことを目的とする団体です。