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定置網ではどんなイカが漁獲できる?

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定置網ではどんなイカが漁獲できる?

現在、親方の船に乗り、定置網を行っている新米漁師です。まだまだ右も左もわからないので、勉強中の身です。

でも、いつか自分の船を持って独立したいという夢があり、地元に帰って漁業を盛り上げたいです。

私の地元ではアオリイカが名産なので、将来的にはイカ漁師としてやっていきたいと考えているのですが、イカは定置網でも漁獲できると聞きました。

うちの船ではそんなにイカは獲れないのですが、定置網ではどんなイカが漁獲されているのでしょうか?

石戸谷 博範

海と定置網の研究室

アオリイカなど4種類以上のイカが大型定置網や小型定置網で漁獲されています

定置網でイカは獲れるのか


定置網では、さまざまなイカや魚などの魚介類が漁獲され、その種類は何百種類にもなります。

定置網漁は、沿岸から数百m〜5kmほど離れた海域に網を設置する漁業です。

定置網の構造

獲りたいイカや魚種の習性や、海底の地形、潮の流れなどを見て網を置きます。

獲物が網に入ってくるのを待つため、待ちの漁業とも呼ばれています。

その性質上、時には狙っている魚介類以外にも漁獲されることがあるため、豊富な種類が水揚げされているのです。


漁獲できるイカの種類


スルメイカ

スルメイカの写真

スルメイカは、日本で最も馴染みのあるイカで、胴長が約30cm、濃い赤褐色が特徴です。

対馬沿岸や日本海中央部、津軽海峡、三陸沿岸が主な漁場として有名ですが、回遊する性質から全国各地で水揚げされています。

東シナ海や日本海の南部でふ化した子スルメイカは、春から夏にかけて、成長しながら北海道まで北上します。

日本海の対馬暖流や、太平洋の黒潮の流れに乗って群れで移動しますが、産卵シーズンの秋には、九州付近に向かって再び南下をし始めます。

この夏から秋がスルメイカの旬になっています。


アオリイカ

アオリイカの写真

アオリイカは胴が卵形で、波打つヒレが胴回りを一周しているのが特徴のイカです。

背中の模様が線状になっているものが雄、点状になっているものが雌です。

3種類が存在し、最も広く分布しているシロイカ、最も大きくなるアカイカ、小型のクワイカに分類されます。

漁獲シーズンは大きく2回あります。

1回目は海水温が上昇する、冬から春の産卵期です。群れで産卵場に近づいたアオリイカを定置網で漁獲します。

2回目は春にふ化して成長した子イカが餌を求めて盛んに動き回る、秋から冬です。

暖かい海水温を好むため、生息地は北海道より西とされていましたが、近年は北海道でも水揚げされています。


ヤリイカ
ヤリイカの写真


ヤリイカは、名の通り細く先が尖った体をしており、雄は30〜40cm、雌は20〜25cmの大きさのイカです。

冬から春にかけて産卵のために沿岸に近づく時期に多く漁獲されています。夏から秋には、春にふ化して成長した小ヤリイカも漁獲されます。

普段は水深30〜200mほどの砂泥底の海域で、海底から10mのところを群れで生活しているのが特徴です。

北海道南部から九州地方にかけて全国的に生息しています。


コウイカ

コウイカの写真

コウイカは、胴長は約20cmと小ぶりのイカで、胴の周りを縁取るようにヒレがついています。

背側に甲羅状の骨を持つのが特徴で、墨を蓄える袋が大きく、スミイカとも呼ばれます。

春から初夏に産卵し、ふ化して成長した新イカは、夏から初秋にかけて成長して成イカとなる生活サイクルを有しています。

秋から春にかけて漁獲され、春には最盛期を迎えます。比較的温暖な海域を好み、西日本でよく漁獲されています。


イカを漁獲できる定置網の種類


大型定置網


大型定置網では、主にスルメイカが水揚げされています。

大型定置網は回遊する魚をさえぎり運動場へと誘導する垣網と、運動場から最終的に魚を留めておく身網によって構成され、水深27mより深いところに設置されているものをいいます。

6人くらいから30人くらいで操業する大掛かりな漁業です。

定置網の構造についてはこちらをご覧ください
定置網とは?どういう仕組みや構造で魚を漁獲しているのでしょうか?
定置網の身網の役割を教えてください



小型定置網


家族で経営できる規模の定置網を小型定置網といいます。

水深27m未満に設置され、2人くらいから操業が可能です。

大型定置網を小型化した「小型二段落網」や、回遊した魚が道網にぶつかり、円形に囲まれた網へと誘導され、その後袋網の中に誘導される「つぼ網」などがあります。

徳島県では、アオリイカ専用の小型定置網「角網」が普及しています。

垣網に当たったイカは箱状の魚とり部に入り漁獲される構造になっており、1人から操業が可能です。

角網の普及もあって、徳島県ではアオリイカの水揚げ量が、全国トップクラスとなっています。

小型定置網漁についてはこちらもご覧ください
小型定置網漁とはどんな漁法か教えてください



イカを定置網で漁獲する方法


イカの群れが通りそうな沿岸に網を設置し、回遊しているイカの群れが網に入ってくるのを待ちます。

夜明け前に沖へ出発し、30分から1時間ほどかけて定置網に到着すると、まずは網を引き上げ、漁獲した魚を船内に取り込む「網起こし」を行います。

最も人手が必要となる作業で、1〜2時間ほどかかります。

その後、必要があれば網の修繕を行い、再度網を設置してから帰港します。

港に到着した後は、漁獲されたイカなどの選別作業を行い、出荷が終了となります。

その後は、船や網の手入れを行います。

定置網漁師が行う作業についてはこちらをご覧ください
定置網漁師はどんな作業をしているのですか?

このお悩みの監修者

石戸谷 博範

海と定置網の研究室

定置網漁業学の専門家。2009年水産海洋学会より「相模湾における急潮と定置網漁業防災対策に関する研究」で宇田賞を授与。定置網漁業に関する国、地方、業界の各委員を務め、日本沿岸各地の地域活性化に取り組んでいる。博士(東京大学農学)。

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