漁師になろうと考えています。説明会に参加したところ、定置網漁に興味が沸いたのですが、うちの地域では小型定置網を行っている漁師が多いと聞きました。
普通の定置網と小型定置網では何が違うのでしょうか?また、新米漁師でも働くことができるのでしょうか?
小型定置網漁とはどんな漁法なのか教えてください。
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石戸谷 博範
海と定置網の研究室
小型定置網漁とは家族で操業できる小規模の定置網漁です
小型定置網漁とは?
定置網とは、一定期間魚が回遊する場所に網を設置し、網にかかった魚を獲る漁法です。
その中でも、家族でも操業できる家族経営型の定置網を小型定置網といい、漁師の間では「つぼ網」「ねずみ網」などとも呼ばれています。
東京湾や伊勢湾、大阪湾、瀬戸内海、九州などの内湾や入江の遠浅(水深27メートル未満)などに敷設されていて、対応水深は6m以上で、慣れてくれば1人でも操業が可能です。
現在、大型の「二段落網」を小型化し、2、3人で操業できるように改良した「小型二段落網」が普及しています。
この他にも、ます網、つぼ網、角建網、底小健網、張網などが小型定置網で使用されています。
新しく小型定置網を敷設するには、5,000~6,000万円の費用がかかります。
操業方法は、ロープを引いて魚を漁獲している主網を持ち上げ、漁獲物を取り出す方法で、初めて漁をする漁師には比較的行い安い漁獲方法です。
小型定置網漁の構造と仕組み
小型定置網の構造は、定置網と同じく「垣網」「運動場」「登網」「箱網」に分かれています。
潮の流れに沿って泳いできた魚は、直線に伸びた垣網(障害物)を避けるため、沖に向かって進路を変更します。
こうした習性を利用し、身網(運動場、登網、箱網)の中へと誘い込みます。
そして、入口から入った魚は運動場に導かれ、その中を自由に泳ぎ回ります。
網の入口は常に開いているので、再び出ていく魚もいます。
運動場を泳ぎ回る魚のうち、一部が登網(通路)を通ってより奥にある箱網へと向かいます。
この登網は先端が細くなっており、その構造上、一度箱網に入った魚は外へ出て行きにくくなります。
こうして箱網に溜まった魚を獲るのが小型定置網漁の仕組みです。
小型定置網では、このような仕組みの身網が制度上、水深27m未満に設置されています。
小型底定置網についてはこちらをご覧ください
「小型底定置網に興味があるので、どんな漁法なのか知りたいです」
小型定置網漁の流れ
小型定置網漁の操業の流れは、「出港」「網起こし」「網の修繕」「選別作業」の4つの工程に分かれます。
出港時刻は夜明け前が一般的で、網を設置した漁場へと向かいます。
網を設置した場所に到着したら、箱網を引き上げる網起こしを行い、漁船に魚を積み込みます。
この作業におよそ1~2時間ほどかかります。
魚を積み終わったら、網の状況によりその場で修繕作業を行い、箱網を海へ戻します。
そして港に戻り、漁獲した魚の選別作業を行います。
その日の成果次第ですが、船の機関や設備の修理、網の補修などの作業が長引くことがなければ、昼頃には仕事が終わる日が多いのが特徴です。
定置網のメンテナンス方法についてはこちらをご覧ください
「定置網のメンテナンス方法はどうやってやるべき?」
このお悩みの監修者
石戸谷 博範
海と定置網の研究室
定置網漁業学の専門家。2009年水産海洋学会より「相模湾における急潮と定置網漁業防災対策に関する研究」で宇田賞を授与。定置網漁業に関する国、地方、業界の各委員を務め、日本沿岸各地の地域活性化に取り組んでいる。博士(東京大学農学)。