昨年から新しく、なすの栽培をスタートしました。
昨年は収量も確保でき、なかなか良い品質だったので今年も続けてナスを植えようと思っています。
しかし、うちの圃場は狭く、ほかの作物も栽培しているので、空いている土地がありません。
同じ土地で育ててしまうと連作障害がでるのではないかと心配しています。
やはり、他の作物に切り替えたり、土地を休ませたりするべきでしょうか?
ナスの連作についてアドバイスをいただきたいです。
昨年から新しく、なすの栽培をスタートしました。
昨年は収量も確保でき、なかなか良い品質だったので今年も続けてナスを植えようと思っています。
しかし、うちの圃場は狭く、ほかの作物も栽培しているので、空いている土地がありません。
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前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
同じ場所でのナスの連作は避けましょう
ナス科の野菜は連作障害を起こしやすい
作物によって、連作障害を起こしやすいものとそうでないものがあります。一般的にナス科は連作障害を起こしやすい野菜です。
ナス科には、ナスの他にトマトやピーマン、じゃがいも、ししとうなどがあります。
ナスを同じ場所で栽培する場合には、最低でも3~4年の間隔を空けることが望ましいです。
ナスの後にトマトを植えたり、じゃがいもの後にナスを植えるなど、ナス科同士で連続栽培するのも避けてください。
連作障害はなぜ起こる?
連作障害が起こる仕組みについて説明しましょう。
植物は、土壌の中の栄養分を吸収して生長します。また、土の中にはさまざまな微生物も存在します。微生物は植物が育つのを助けたり、阻害したりする働きを持っています。
一度何らかの作物を栽培すると、育った後に土の中に残る栄養バランスに変化が起こります。作物が生長するのに使われた栄養分が減り、必要とされなかった栄養分が残るのです。
したがって次のシーズンには、必要な栄養分は不足し、要らない栄養分は余っているという土壌環境になってしまいます。
土の中に生息して活動する微生物についても同様です。
微生物には、植物にとっていい働きをするものと悪い働きをするものがありますが、土壌中の栄養分が偏ると、そこに棲む微生物のバランスも崩れるのです。
作物に被害を与える病原菌や害虫も集まりやすくなります。連作障害は、毎年農家を悩ませる課題の1つです。
対策せずにナスを連作するとどうなる?
では、対策を取らずに同じ圃場でナスを連作してしまうとどういう事態を招く可能性があるのでしょうか。
土壌に病原菌が付き、青枯れ病や半身萎凋病が起こる
ナスの栽培で最も避けたいのは、「土壌に病原菌を発生させてしまうこと、その被害を拡大させてしまうこと」です。しかし、連作するとナスに「青枯れ病」や「半身萎凋病(はんしんいちょうびょう)」を引き起こす病原菌が発生しやすくなります。
「青枯病」は、最初は日中に葉や茎がしおれ始めるという症状から発症します。夜間や雨、曇りの日に回復するのですが、やがて回復しなくなり、最後には全体が枯れてしまいます。
「半身萎凋病(はんしんいちょうびょう)」は、最初、株の半分程度の葉がしおれたり、または、葉や茎の片側だけが黄色く変色してしおれます。したがって、青枯病とは、区別できます。そして、そのしおれが全体におよび、枯れていきます。
半身萎凋病や青枯病の対策についてはこちらをご覧ください
「ナスが萎凋病になってしまった。どう対策すべきか教えて」
「ナスを青枯病から守るためにはどのような方法があるのかを知りたい」
土壌にセンチュウが多発すると葉がしおれ、株の生長が抑制されます
農家を悩ませるのが、作物へのセンチュウ被害です。対策なしに連作をすると、土壌中のセンチュウが増えます。
青枯病発生圃場では、センチュウの寄生によって発病が助長されるので注意しましょう。
センチュウは全長は1ミリに満たない細長い虫で、肉眼で確認することが不可能です。被害をもたらすセンチュウとそうでないものが存在しますが、連作することで、土の中に「ネコブセンチュウ」などが増えます。
「ネコブセンチュウ」はナスの根に寄生し、根にこぶを作ります。多発すると株の生長を妨げます。
害虫対策についてはこちらもご覧ください
「ナスによく発生する虫の種類や防除方法は?」
「ハウスで育苗中のナスにアブラムシがついてしまいます…」
「ナスを栽培しているハウス内にハダニやコナジラミが発生します。農薬を使わない防除方法は?」
ナスを毎年収穫したい場合はどうする?
毎年栽培をするために有効な対策を4つ紹介します。
栽培が終わったら土壌を消毒する
連作障害の原因は、栽培によって土壌の栄養や微生物のバランスが崩れることでした。
ナスの栽培が終わった後に土を消毒すれば、偏った環境をリセットすることができます。土壌を消毒するには、太陽熱を利用する方法や、薬剤を使用する方法があります。
栽培しない時期に土の上に水を溜めておく
土の上に水を一定期間溜め、水田のような状態にしておけば、土壌の中の病原菌や有害な微生物も死滅させることができます。
土壌に残った肥料の成分も水に溶け出します。
他の作物と組み合わせて輪作する
同じ場所で、一定の間隔で異なる作物を栽培することを「輪作」と呼びます。連作障害を起こさないための最も一般的な対策は、輪作をすることです。
ナスの後にはナス科以外、マメ科やウリ科、セリ科、ヒルガオ科、ユリ科の作物を栽培しましょう。
科や目にも相性の良し悪しがあるので、相性の良い科や目の作物をチェックして、4~5年をサイクルとする栽培計画を立てるのがおすすめです。
圃場を3~4区画以上に区切って、毎シーズンそれぞれ異なる科や目の作物を栽培するようにし、そのうち1つをナスにすれば、場所を変えながらナスを毎年収穫することができます。
コンパニオンプランツを活用する
薬剤を使いたくない場合におすすめです。相性のいい植物同士を組み合わせて栽培することで、土壌の生物相も多様になり、バランスの偏りを抑える効果があります。
他にも、「土壌の状態を知るために土壌診断を利用する」「病気に強い接ぎ木苗を活用する」「微生物や堆肥など、土壌環境を改善する資材を投入する」などの方法があります。
いずれか1つではなく、栽培方針に沿って複数の対策を組み合わせることで、より連作障害が起こりにくくなるでしょう。
このお悩みの監修者
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。