これまで根菜を中心に栽培をしてきましたが、直売所でナスの売れ行きが良いらしく、新たにナスの栽培を始めたいと考えています。
栽培に関してはまったくの素人なので、どうすればいいのか調べているのですが、だいたいのことは理解できました。
しかし、悩んでいるのが剪定作業です。
これまで育てていた作物では剪定作業がなかったので、どうすればいいのかわかりません。
剪定作業のコツや、ポイントがあれば教えてほしいです。
これまで根菜を中心に栽培をしてきましたが、直売所でナスの売れ行きが良いらしく、新たにナスの栽培を始めたいと考えています。
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前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
ナス栽培では「わき芽かき」「摘芯」「更新剪定」が必要です
ナス栽培の剪定作業
ナス栽培では剪定作業が非常に重要になります。
剪定は成長する植物の枝を切り取ることで、株全体の形を整えたり、風通しをよくしたりする効果があります。
剪定作業のメリット
ナスは剪定を怠ると、わき芽(葉や茎の付け根から出てくる芽)からどんどん枝が増え、葉も茂ってしまいます。その結果、以下のような事態を引き起こす可能性があります。
1、広がった枝や葉に栄養が奪われるため、実を付ける期間が短くなってしまう
2、実に養分がいきわたらず、大きさや味などの品質を損ねてしまう
3、圃場の風通しが悪くなり、病気や害虫が付きやすくなる
そのため、剪定作業を適切に行うことにより「より長い期間収穫できる」「大きくておいしい実がなる」「病害虫の発生を防ぐことができる」というメリットにつながります。
剪定作業の時期と必要な道具
ナスの栽培は、2~3月に種まきをして苗を育て、5月に植え付けするのが一般的な栽培スケジュールです。
植え付け後の作業は、おおまかに「わき芽かき」「摘心」「更新剪定」が必要になります。
5月に植え付けて、その後、成長に伴い、「わき芽かき」「摘芯」を、梅雨明け以降(7月頃)に「更新剪定」を行いましょう。
剪定作業には軍手を着用し、剪定用ハサミを使いましょう。
ナス栽培の作業1「わき芽かき」
まずはじめに行う作業は「わき芽かき」です。「芽かき」とも呼ばれることもあります。
「わき芽」は茎の葉のつけ根から出る芽(枝)のことです。成長前の「わき芽」を取り除くことによって、枝や葉に無駄な養分が運ばれることを防ぎ、実に養分を集中させることができます。
ナス栽培でわき芽かきを行う時期は、最初の花(1番花)が咲く5月頃です。
「わき芽かき」の手順
わき芽かきの方法は2本仕立てか、3本仕立てかの仕立て方により、手順が異なります。
2本仕立ての場合、手順は以下のような流れになります。
1、一番花(初めに咲いた花)の下にある枝を確認する。
2、一番花の真下の芽はそのまま残す(伸ばす)。それより下のわき芽(枝)はすべて切除する。
3、これで「主枝」と「側枝」の2本が残ります。
3本仕立ての場合は、上記2の段階で、一番花の真下の芽2つを残し、それより下のわき芽はすべて切除してください。これで主枝1本、側枝2本が残ります。
ナス栽培の作業2「摘芯」
「摘芯」は枝の先端部分を摘み取り、わき芽を伸ばして開花させることです。摘芯を行うことで、2番花や3番花が付き、より多くの実がなることにつながります。
「摘芯」の手順
1、側枝に花が付いたら、その側枝の花の先端に葉を1枚残して切除(摘芯)する。
2、着果したらある程度大きくなってから収穫。このときに収穫した枝の根元にある芽だけ残し、他の伸びた枝は短く切り詰める(切り戻し)
※ただし、切り戻しする前に、主枝に一番近い芽からわき芽(新しい側枝)が伸びていることを確認する
次はこの側枝に花がつき、着果する。
3、残した芽に花が付いたら、再度1→2の手順を繰り返す。
基本的にこの3つの手順を繰り返すことで、ナスは同じ枝に着果しつづけます。
具体的な摘芯の方法はこちらをご覧ください
「なすを長くたくさん収穫するための摘芯のやり方は?」
秋ナス収穫のための「更新剪定」
暑さの盛りである7月~8月頃には「更新剪定」を行いましょう。更新剪定は、枝や葉が増えすぎて栄養が回らず樹が衰えてしまわないよう、強めに切り戻す工程です。
更新剪定を行わないと、株が疲れて夏の終わりには枯れたり、または、秋に良いナスを収穫することができなくなります。
「更新剪定」の手順
1、枝を切る
骨格として残している2本もしくは3本の枝を各々半分~1/3程度の高さで切ります。実がなっている枝を切ってしまっても問題ありません。傷んでいる葉や茎も確認して、切り取っておきましょう。勢いのある芽があれば、その部分は残し、周囲の他の枝を切ってしまうのも有効です。
2、根を切る
株の中心から30センチほど離れた土壌に垂直にシャベル(スコップ)を入れて、根も切ります。1株につき、2カ所程度にシャベル(スコップ)を入れましょう。3、肥料を与える
シャベル(スコップ)で切った根の周辺土壌に肥料を与えます。化成肥料であれば10㎡当たり窒素成分で30グラム程度、液肥を用いられる場合は、商品によって希釈倍数が異なりますので、商品の説明書きを確認するようにして下さい。液肥は、薄めに(薄い濃度で)散布して散布回数を増やすことをおすすめいたします。
かなり大胆に切り戻すので、慣れないうちは不安になるかもしれませんが、全体を半分ぐらいにするイメージで切るのがポイントです。
また、根切りにも忘れずに対応しましょう。
更新剪定によって株が若返り、1カ月ほどを目処に秋ナスが実を付けはじめます。
剪定以外の作業についてはこちらをご覧ください
「ナス栽培では季節ごとにどのような作業が必要?」
このお悩みの監修者
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。