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ナスによく発生する虫の種類や防除方法は?

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ナスによく発生する虫の種類や防除方法は?

これまで根菜を中心に栽培してきましたが、道の駅でピーマンやきゅうりなどの果菜類が人気だと聞いたので、試しに栽培してみようかと考えています。

しかし、ほかの農家も同じようなことを考えていそうなので、同じ果菜類のナスに興味を持っています。

基本的な栽培方法は問題ないと思うのですが、問題は病害虫の防除方法です。

特にナス栽培で注意すべき虫については知識がないので、どのような虫がいるのか、どう防除すればいいのかなど、具体的に教えてほしいです。

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

ナスに虫を寄せ付けないようにし、薬剤を撒きましょう

ナスによく付く虫とその被害例


葉や実に穴が空いていたり、変色していたりする場合、虫による被害が発生しているかもしれません。虫の特定と、それに応じた早急な対処が必要です。

それでは、どの虫がどのような症状を引き起こすのでしょうか。ナスによく見られる6種類の虫について紹介します。

1、アブラムシ類

2、アザミウマ類

3、ヨトウムシ類

4、コナジラミ類

5、タバコガ

6、ニジュウヤホシテントウ(テントウムシダマシ類)


アブラムシ類の被害例


1、大量発生すると、必要な養分を吸い取られるためナスの生育が悪くなる
2、アブラムシの排泄物は糖分を含むため、糖分を餌にするすす病の原因菌が発生する
3、季節により植物を移り住む習性から、モザイク病などの原因ウイルスを持ち込む


アブラムシはナスを始めとするナス科の野菜の他にも、ウリ科、アブラナ科などのさまざまな作物に発生し、農家を悩ませる虫です。

体長は1ミリから数ミリとごく小さく、植物に付くとほぼ動かず、口にある針から植物の汁を吸って栄養分にします。

1匹単位で見ると弱い虫ですが、油断するといつの間にか大量に発生して被害が拡大することもあります。

種類も非常に多く、日本国内だけでも700以上の種類が見つかっています。中でも、ナスによく付くのは「モモアカアブラムシ」と「ワタアブラムシ」です。

アブラムシの防除が遅れると、ナスの成長を妨げるだけでなく、病気をもたらします。

1年のうちで活発に活動する時期が、4~6月、9~10月で、ナスの株の成長期や収穫期と重なる点も要注意です。

アブラムシが発生しやすい環境や原因についてはこちらをご覧ください
ナス栽培で被害をもたらすアブラムシの防除方法は?



アザミウマ類(スリップス)の被害例


1、葉に付着して養分を吸い取る。初めは葉脈に沿ってかすり状の白い斑点が現れる
2、やがて葉全体に被害が及ぶと株の成長を鈍くする
3、実を食害すると、皮の表面やヘタが灰褐色になり、品質を損ねる


アザミウマは細長い形の小さな虫です。英語名で「スリップス」とも呼ばれます。

体長は1~2ミリほどで、ナス栽培では果実に付く「ミナミキイロアザミウマ」という種類に特に注意が必要です。成虫のみならず、幼虫も被害をもたらします。 

産卵から羽化までのサイクルは、25℃の温度下では約14日と非常に短い虫です。発生に気づいた頃にはすでに爆発的に増えていることもあります。また、薬剤に対しても抵抗性がつきやすいので、防除の際、同じ系統の薬剤を連用しないようにしましょう。

例えば、モスピラン顆粒水溶剤、アドマイヤーフロアブル、ダントツ水溶剤は、薬剤名が異なっていても同じネオニコチノイド系であるので、連用しないようにしましょう。

5~10月に発生することが多く、活動のピークは7~9月です。


ヨトウムシ類の被害例


1、葉や新芽を食べる。集団で食害し、ほとんど全体の葉を食べ尽くすこともある
2、実を食べることもある


ヨトウムシは漢字では「夜盗虫」と書きます。夜行性の蛾の幼虫で、ナスの他にもさまざまな植物を食べ、被害をもたらします。夜行性で日中は土の中で過ごすため、日中は見つけにくいのが難点です。

成虫は植物に1回で数十~数百の卵を産み付けます。卵からかえった幼虫が集団で葉を食べるため、気づいたときにはすでに葉がボロボロだったという農家もあります。

ヨトウムシの活動時期は種類によって異なりますが、比較的暖かい地域では、多くて年に5~6回発生し、8~10月頃が多発時期にあたるので注意してください。


コナジラミ類の被害例


1、葉から養分を吸い取る
2、アブラムシ同様、糖分を含む排泄物がすす病の病原菌を招く
3、トマトやキュウリなどの作物に付くウイルスを媒介する


コナジラミは名前の通り、粉のように白い体長約2ミリの虫です。葉の裏に寄生しますが、独特な体色のため見つけやすいでしょう。幼虫、成虫とも植物を食害します。

アブラムシと同様、植物の養分を吸うことで株を弱らせます。また、排泄物がすす病の原因になる可能性が高い点も類似しています。

コナジラミの種類によって、ナス以外にもトマトやキュウリなどの病気の元となるウイルスを媒介します。多品目の野菜を育てている農家では特に注意が必要です。

種類にもよりますが、発生が多い時期は4〜10月頃で、ハウス栽培では1年を通じて発生します。


タバコガの被害例


1、新芽や実を食べる。果実に直径5~10ミリ程度の穴が空けて侵入することも

タバコガは、ヨトウムシと同様、蛾の幼虫です。ナスの場合、実を食べることが多いです。体長は1~4センチと大きいので、発生を見つけるのは比較的容易です。体色は一様ではなく、緑色や褐色などさまざまのものがあります。

成虫が飛来してきて、卵を産むことで発生します。若い幼虫は新芽や葉を食べますが、成長すると実に穴を空けて侵入し、内側を食べることがあります。

タバコガの幼虫がよく見られるのは8~9月です。


ニジュウヤホシテントウ(テントウムシダマシ類)の被害例


1、葉を食べることにより、葉が変色して枯れ落ちる
2、やがて株全体が褐変し、生育が遅れて花や実にも悪影響を及ぼす
3、実の表面を食べると、実に浅く穴が空いたり変形したりする


ニジュウヤホシテントウはテントウムシの1種です。成虫は翅に28個の黒斑があることから「ニジュウヤホシ」の名が付けられています。体長は5~7ミリで、甲に毛が生えています。

幼虫、成虫ともナス科の作物を好み、特にナスでは葉の裏に付いて葉を食べます。実を食べることもあります。

ただし食べた跡が非常に特徴的な形状のため、他の虫と比較して発生を特定するのは容易です。ニジュウヤホシテントウが食害した跡の葉や実には、平行な網目状の傷が残ります。

露地栽培のナスは、6~8月に被害が多いです。

なお、同じテントウムシ類でもアブラムシを捕食することで、ナスの益虫となるものもいます。

益虫になるテントウムシは毛がなく、甲に光沢がありツルツルした見た目をしています。


ナスの害虫の防除方法


続いて害虫の防除方法について説明します。

防虫ネットやマルチを利用して物理的に寄せつけない


物理的に寄せつけないためには、畑に苗を移植する段階で防虫ネットで覆ったり、土壌にマルチシートを張ったりするのが最も有効です。

防虫ネットは防ぎたい虫の種類によって、最適な網目の間隔が異なります。最適な網目の間隔がどれくらいかは、ホームセンターや農業資材店で相談すると良いでしょう。


薬剤を散布する


慣行栽培の場合、虫の被害や大量発生を確認したら、すぐに薬剤で防除してください。発生サイクルが早く薬剤耐性を持つ虫もいるため、基本的には同一の薬剤(同じ系統)を使い続けないようにしましょう。

薬剤の使用方法は、商品のラベルや地域での指導に従ってください。


ナスに付く虫についての注意点


ナスに付く虫には、害虫だけでなく益虫も存在します。例えばナナホシテントウ、ナミテントウなどのテントウムシはアブラムシを捕食し、被害を軽減してくれます。

虫による被害を見つけたら、被害の様子などからどの虫がいるかを特定し、すばやく対処してください。

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このお悩みの監修者

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。

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