これまで葉野菜を栽培してきましたが、果菜類の栽培にも挑戦しようと考えていて、まずはナスの栽培に取り掛かろうと考えています。
しかし、近所の農家さんから、ナスは育苗が難しい野菜だと聞きました。
私は営農3年目で経験もあまりないので、その話を聞いてから不安に感じています。
また、実を大きく育てるのも難しいという話を聞いたので、苗や実をどうすれば大きく育てられるのか教えてほしいです。
これまで葉野菜を栽培してきましたが、果菜類の栽培にも挑戦しようと考えていて、まずはナスの栽培に取り掛かろうと考えています。
しかし、近所の農家さんから、ナスは育苗が難しい野菜だと聞きました。
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前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
ナスの苗の温度管理に気をつけ、水や肥料、日当たりが不足していないかチェックを
ナスの苗や株が大きくならない場合
まずは「苗が大きくならない」というトラブルについて、原因と対策を説明します。
苗や株が大きくならない原因
苗や株がなかなか伸びない場合のおもな要因には、以下のようなものが考えられます。
・植え付けた時期が早いなど、生長に最適な気温・地温にまだ至っていない
・畑の日当たりが悪い
・水やりが不足している
・育てる土壌の酸度(ph:ペーハー)が栽培に適していない
苗や株を大きく育てる方法とポイント
先に挙げた原因をなくすことが、苗を育てるポイントになります。
まず大事なのは、育てる場所の気温と地温です。
ナスはインドが原産で暑い時期を好み、初夏から盛夏にかけて勢いよく育つ作物です。適した気温や地温で生育する温度管理が非常に重要です。
苗を育てるには「夜間の気温が15~20度」、畑への植え替えに最適なのは「気温10度以上・地温15度以上」といった細かな目安があるので、それより温度が低い環境にならないように、温度管理を工夫しましょう。
特に苗を畑に植え付ける時期が早すぎると、生長速度が非常に鈍くなってしまいます。
また、苗の植え付け前には、畑の土壌ph(土壌が酸性かアルカリ性かを表す数値。基準;数値が小さいと酸性 大きいとアルカリ性を示す)を測定し、必要があればナスに最適な6.0前後に調整してください。
石灰や土壌改良用土、肥料などを土に混ぜ込むことで調整できます。
そして、株どうしの間隔が狭くなりすぎないように気を配り、十分な日光が当たるように配慮しながら畑に苗を植えましょう。苗を畑へ植え替えたら、しっかり水やりを行ってください。
ナスの実が大きくならない場合のチェックポイント
続いて、実が大きくならないときのチェック項目を紹介します。
水・肥料が足りているか
苗と同様に、水と肥料が足りているかどうかを栽培中には常に気を配りましょう。ナスは水と肥料を吸ってぐんぐん生長します。
肥料不足か否かは花の状態を見ると分かります。追肥を定期的にたっぷり与えるのもポイントです。
また、水やりにもコツがあります。栽培時期の温度管理にも関連し、季節により最適な水やり方法が変わります。
4月頃までの気温がまだ低い時期は、気温が上がる前(午前中)に水やりしてください。
反対に5月以降の暑くなる時期は、逆に日中の水やりだと温度が上がりすぎて逆効果になってしまいます。
暑い季節には、朝の早い時間帯か気温が下がり始める夕方に行いましょう。
さらに、畑の土の表面だけでなく、水や養分を吸い上げる根の部分が乾燥していないかを意識して、しっかりと水やりするとよいです。
肥料が適正かどうかを見極める方法はこちらをご覧ください
「ナスを栽培していますが、あまり元気がありません。追肥の手順や注意点を教えてください」
株が疲れていないか
作物の中でも、ナスを始め、トマトやピーマン、エンドウマメやキュウリなどの「果菜類(果実や種を食用にするもの)」には「なり疲れ」という現象を起こすものがあります。
これは、収穫シーズン初期には順調に実などを付けるものの、一般的には最盛期を迎える時には収穫量が減ってしまうという現象です。
このような状況になっている時、「株が疲れている」と表現することがあります。
具体的には、茎や葉が勢いよく伸びているにも関わらず、付ける実が少なくなる、付く実が小さくなるなどの状態です。
ナスの株が疲れる場合、水・肥料不足のほか、剪定が十分でないという可能性が考えられます。
剪定が不十分でどんどん枝や葉が過剰に茂ってしまうと、広がった枝や葉に栄養が奪われてしまいます。
その結果、実を付けたものの大きさや味がいまいちだったり、実をつける期間も短くなったりします。
剪定作業についてはこちらをご覧ください
「ナス栽培の剪定作業はどのように行えばいいのでしょうか?」
日当たり不足が起きていないか
日当たり不足も、実が大きくならない原因につながります。成長段階に応じてしっかりと剪定作業をすることで、日照不足はある程度解決できます。
「苗を大きくするには」で説明したポイントと同じですが、植え付けるときから適切な間隔を保っておくほか、こまめな剪定で葉の陰などが大きくならないように調整してください。
ナスの苗や実を大きく育てるための注意点
ナスの苗、株、実を元気に育てるには、温度管理、水やりと肥料、剪定などが重要であると説明しました。
しかし、それらに気をつけていても、害虫などが付いているために生育にトラブルが生じる可能性もあります。
ナスに被害をもたらす害虫には、アブラムシがいます。
アブラムシが付くと、ナスの苗や株から汁を吸われます。繁殖力が強いので、見逃すといつの間にか大量発生している、ということも起こり得ます。
飛来を物理的に防ぐには、植え替える際に防虫ネットをかけるのもおすすめです。
ネットを使わない場合は、害虫が葉の裏に付いていないか、水やりや剪定の機会にこまめにチェックしましょう。そして、できるだけ早い段階で見つけて駆除します。
アブラムシからナスを守る方法についてはこちらをご覧ください
「ハウスで育苗中のナスにアブラムシがついてしまいます…」
「ナスによく発生する虫の種類や防除方法は?」
このお悩みの監修者
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。