サツマイモを中心に栽培している宮崎県の農家です。
サツマイモを収穫していると、質はよいけれど規格外で市場に出荷できないものがあり、どのように活用していこうか悩んでいました。
先日、部会の集まりで、「他の県では、自分の畑でとれたサツマイモを焼き芋にして移動販売しとる人がおるらしい」という話を聞きました。
確かに、規格外のサツマイモを焼き芋として販売できれば、副収入になりそうなので「やってみようかな」と思っているのですが…。
でも、値段の付け方や、どれくらいの量を用意すればよいのか、保健所や市役所へ届出を出さないといけないのか、車をどうするかなど、わからないことだらけで二の足を踏んでいます。
焼き芋の移動販売を行っている農家さんから、1日どれくらい売れるのか、費用はどれくらいかかるのかなど、教えていただきたいです。
また、焼き芋をおいしそうに感じてもらうためには、どんな工夫をすればよいのでしょうか?
(宮崎県・木村さん/仮名・40代)
松田恭子
株式会社結アソシエイト 代表取締役
売り方・売る場所の工夫をしましょう。費用はまず、ご自身で調べてみてください
まず、焼き芋の移動販売でどのくらい儲かるか、単純な計算式を考えてみましょう。「サツマイモ1本の値段×数量-費用(材料費・人件費・その他経費)」となります。
ここで問題があります。規格外となると、サツマイモの品質がまちまち。そのため、1本の値段ではなく、100g当たりの方が良いかのしれません。そもそも、お客さまに選んでもらうと、極端に小さいものなどが売れ残ってしまう可能性もあり、好ましくありません。
そのため、「選り好みはできません!」と言って、100g単位の詰め合わせにするかわりに、割安にする。そうでなければ小さいもの同士で揃えるなど、工夫が必要です。もしくは、規格品も含めて販売することで、値段に差を付けるという方法もあります。
価格は地域差があります。1本300円で売っている所もありますが、さつまいもの産地で、旬の時期になるとさつまいもの貰い物があるというような地域では、あまり高い価格は付けられません。
どのくらい数量が売れるかについては、立地によります。ポイントは、「自分で焼き芋作れちゃうから、いいわ」ではなく、「焼き芋みたいな天然のおやつが好きだけど、作るのは面倒……」という人が集まるところを見つけられるかです。
なお、焼き芋は農産物に簡単な加工を行なって販売するので、かつては保健所の許可が不要でした。しかし、2021年6月1日から食品衛生法の改正により、保健所への営業届出が必要となります。また、衛生管理の手法(HACCP)に沿った衛生管理も必要になりました。
また、ほかにも注意しなければいけないことがあります。一定時間道路上に停止して販売する際には、道路使用許可を警察署に届出ることが必要です。さらに、軽トラに焼き釜を乗せるタイプの販売では、自動車屋さんと相談して焼き芋機を購入し、状況に応じて車両検査を受けましょう。
そして、これらの設備を整えたときにいくらぐらいかかるかを、ご自身で調べてみて下さい。その設備が7年持つとして、7年で割った費用(減価償却費)、人件費、光熱費、原料費などが費用となります。これらの費用を売上から引いて、きちんとお金が残ることが重要です。
最後に、焼き芋を美味しく感じてもらうためのコツですが、
・焼き芋は、さつまいもの品質がそのまま出るため、規格外といえども品質を下げない(収穫してから貯蔵して糖度を増やす、筋張った芋は美味しくないため、絶対に商品にしない)
・加熱の仕方も、さつまいも本来の糖度を引き出すような時間とする(すぐに高熱で加熱すると、デンプンを糖化する酵素が失活する)
・食感の好みが人によって異なるため、お客様の希望を聞き、さつまいもを選ぶ目安を説明する
このような工夫を行うことで、美味しい焼き芋をお客さまに味わっていただけます。
仲野真人
株式会社食農夢創 代表取締役
面白い取り組みをしている企業があるので、参考にしてみてください
焼き芋の移動販売事業となると、基本的にはキッチンカーでの販売になるかと思います。焼き芋の移動販売事例はたくさんありますが、有名な所で言えば、宮崎県串間市のくしまアオイファームの取り組みがユニークです。
冷凍さつまいもスティック、さつまいもペースト、さつまいも麺、地元菓子メーカーと「宮崎おいもプリン」などを開発し、海外への販路を広げています。
海外でも、さつまいもは人気です。香港、シンガポール、タイなどでは、日本が輸出したさつまいもをスーパーで小売りするだけでなく、焼き芋として販売する事例も増えています。店内で焼き芋を販売しているドン・キホーテでは、シンガポール、タイ、香港など海外の店舗で焼き芋を展開し、人気を得ていますよ。