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定置網漁のオーナー制度とは?メリットや注意点について知りたい

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定置網漁のオーナー制度とは?メリットや注意点について知りたい

定置網漁船に乗っている漁師です。最近、水温の影響からか、漁獲量が安定せずに、経営も不安定になってきています。

さらに、燃料費も高騰が続いているので、このままだとかなり苦しい状況です。

先日、インターネットで「定置網のオーナー制度」が開始されたというニュースを見ました。

漁獲する前に消費者に売ることができるというような内容だったと思うのですが、もしそれが本当なら、定置網漁師にとっては嬉しいです。

そこで、オーナー制度について詳しく教えていただけないでしょうか。

石戸谷 博範

海と定置網の研究室

定置網漁のオーナー制度では漁獲前に収入が見込めて、消費者と深く交流することも可能です

オーナー制度とは


オーナー制度とは、魚介類が水揚げされる前に消費者に魚を売ることができる制度です。

消費者に漁で獲れた魚を直接販売する方法の一つで、漁を行う前に売買契約が成立していることがオーナー制度の特徴です。

漁で水揚げされた魚を直送するものや、実際に漁船に乗って網の引き上げ作業を体験してもらうものなど、さまざまな内容のオーナー制度があります。

消費者は新鮮な魚という価値以外にも、どんな魚が獲れるのか分からないドキドキ感や漁師体験などの経験にも価値を感じてオーナーになっています。

定置網漁でオーナー制度を行う場合には、消費者にどのような価値を提供していくのか考える必要があります。


定置網漁でオーナー制度を行う方法


鮮魚直送型


定置網でオーナー制度を行う方法として、漁で獲れた新鮮な魚を直送するオーナー制度があります。オーナーは自宅で新鮮な魚を手にすることができます。

石川県七尾市にある株式会社鹿渡島定置では、富山湾の定置網で獲れた魚をすぐに活〆や神経抜きして鮮度を保ち、朝獲れたばかりの魚を直送するオーナー制度を行っています。

また、鮮魚だけではなく、鮮魚を加工した干物も直送しており、オーナーは鮮魚か干物かを選択できます。

その他にも、漁師の仕事体験として、ロープワーク学習や、お魚講座の受講、干物づくり体験ができるプログラムも行っています。


漁師体験型


定置網漁で行うオーナー制度では、漁師体験型のものもあります。

オーナーはあらかじめ漁師が設置した網まで漁船に乗って移動し、実際に網を引き上げてもらいます。網の中に入っている魚は全てオーナーのものです。

熊本県天草市の大浦地区振興会では、漁業従事者が中心となって「ひと網オーナー制度」を企画し、地域の住民らと一緒にオーナー制度を運営しています。

地域で昔から行われているつぼ網という小型の定置網をオーナーと引き上げ、漁獲された魚は全てオーナーに渡します。

4月から7月まで1日4組を上限として募集を行うことで、漁師が月収の予測をしやすくなっています。

平成25年度は370組の参加があり、ひと網オーナー制度による売上は漁師の収入の2割から3割を占めています。


定置網漁でオーナー制度を行うメリット


水揚げ前に売上として計上できる


オーナー制度のメリットは、オーナーに事前に申し込みをしてもらうため、漁獲前から売上の見込みが立ちやすいことです。

定置網漁は水揚げをしてみないと魚種や漁獲量がわからないため、売上の見込みを立てることは難しいものです。

しかし、オーナー制度は水揚げ前の契約となるため、天候などにより漁獲量が変動した場合でも売上として計上でき、収入の安定化につながりやすくなります。


直接販売が可能


消費者に直接販売ができる点もメリットです。

オーナー制度では仲介業者を通さないため、漁師は消費者と直接交流することが可能です。

オーナーに漁師を知ってもらうことで、地域の定置網漁に愛着を持ってもらえます。

ファンができることで、リピーター客の確保に繋がる可能性があるため、漁師にとってはメリットになります。

実際にオーナー制度の参加をきっかけとしてオーナーと交流を続けて、個人販売の販路が広がったケースもあります。


SNSの発信によるPR


オーナーがSNSでオーナー制度の内容を発信すれば地域の定置網漁のPRになります。

漁師体験や鮮魚直送の様子が発信されれば、その投稿を見た人はオーナー制度を知って新たなオーナーになってくれる可能性もあります

また漁師にとっては、喜んでもらえた感想がコメントやメッセージなどで届くと、モチベーションの向上にもつながります。


定置網漁でオーナー制度を行う際の注意点


オーナー制度はメリットが多くありますが、注意点もあります。

農業のオーナー制度では、オーナーが農作業に参加することを必須としているところもあります。

しかし、定置網のオーナー制度ではオーナーは作業にはほとんど関与しないため、日常的に行う網の設置や補修などを漁師だけで行わなければなりません。

さらに、天候などで漁に出られない状況などを予め想定し、補償内容を考えておく必要があります。


定置網漁のオーナー制度のメリットを知ろう


定置網のオーナー制度は、水揚げ前にオーナーと売買契約を結ぶもので、漁師は消費者に直接魚を販売できます。

また、定置網漁で朝獲れたばかりの新鮮な魚を直送できたり、定置網の引き上げ体験を行ってもらうプログラムを実施したりと、さまざまな価値の提供ができます。

定置網でオーナー制度を行うメリットとしては、水揚げ前に収入の見込みが立ちやすいことや、直接消費者と交流できる点などが挙げられます。

定置網漁でオーナー制度を行う方法やメリットを知って、オーナー制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

このお悩みの監修者

石戸谷 博範

海と定置網の研究室

定置網漁業学の専門家。2009年水産海洋学会より「相模湾における急潮と定置網漁業防災対策に関する研究」で宇田賞を授与。定置網漁業に関する国、地方、業界の各委員を務め、日本沿岸各地の地域活性化に取り組んでいる。博士(東京大学農学)。

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