集落内にある畑の梅の木が、実が収穫されないまま赤く熟して落ちていく様子にもったいないなあと思っています。
同じように、秋になると柿の木の実も収穫されないままに放置され、カラスやムクドリなどの餌になっている光景をあちこちで目にします。
そんな収穫されない果実を、集落内外みんなの力で有効活用していこうと、JA女性部のメンバーが動き出しています。
そのリーダーから、ボランティアを集められたら、共同で収穫・加工して、商品化につなげていきたいという相談を受けました。
これまでにも、梅干しや梅酒、干し柿などは各自の農家が、自家用や直売所向けに作っているのですが、新しい収入源になるような加工品を開発したいようです。
そこで、商品化はどのように進めていけばいいのか、教えていただけないでしょうか。
(長野県・山崎雅子さん/仮名・50代)
仲野真人
株式会社食農夢創 代表取締役
放置果樹の収穫や加工を誰が行うかが重要です。地域の高校や大学と連携してみてはどうでしょうか?
果樹は、一度植えて成長してしまえば、毎年実がなりますから、それを収穫できないままでいるのは確かにもったいないですよね。
一方で、木を切ってしまえば、また植えて実がなるまでに何年もかかってしまうので、それもまたもったいない。
そういった面でも、実がなったまま収穫されない果樹を、地域資源として活用したいと考えるのは良い着眼点だと思います。
実際に秋田県では「畑のない農家」代表の柿木崇誌(かきのき・たかし)さんが、地域や空き家で収穫されずに放置されている柿を収穫してドライフルーツに加工して販売する取り組みを行っています。
また、そういった地域課題を解決するための取り組みを考える際に重要なのが、「誰」が収穫や加工を行うか?という点になります。
ボランティアを呼びかけるというアイディアも良いと思いますが、昨今では全国的に地方でのボランティア活動が増えているので、呼び込むためにもきちんと設計する必要があります。
その際に着目したいのが、地域の高校や大学との連携です。
和歌山県田辺市にある和歌山県立神島高校では、課題研究授業の中に「商品開発」の講座を設けていて、地域の特産品である「梅」の消費拡大に協力できるように商品開発プロジェクト「神島屋」を展開しています。
この取り組みが評価され、2018年度地産地消等優良活動表彰にて教育関係部門で文部科学大臣賞を受賞しています。
地域の耕作放棄地や、収穫されないまま放置されている果実などの農業の課題を、地域の生産者だけで解決するには高齢化も進んでおり大変です。
地域内外で農業や地域活性化に興味を持っている人達を巻き込み、かつ、生産・加工・流通・販売のビジネスモデルを、誰が・どうやって担うかまで全体をコーディネートできる人材がいるかどうかも重要になります。参考になれば幸いです。