葉物野菜生産が盛んな地域で農業を営んでいます。私自身、年は取っていますが、就農してまだ数年の新入りです。
日々、真面目に仕事に取り組むことで、徐々に自信が出てきて、味もおいしいという評判をいただいています。
これから、収入や生活を安定させるため、新しい販路を開拓しようともくろんでいます。
例えば、学校給食。地元の小学校や保育園の給食に野菜や果物を納めている農家がいるのですが、憧れつつ、私の野菜も卸せないものかと考えています。
学校などに自分が作った野菜を使ってもらうには、どうすればいいでしょうか?公立と私立の学校で違うと思いますが、いろいろな可能性を探りたいです。
また、自分が居住する地域以外の学校へも納入できますか?
(東京都・溝垣さん/仮名・56歳)
仲野真人
株式会社食農夢創 代表取締役
まずは給食センターの情報収集・問い合わせ。人的ネットワークを活用して
学校や保育園の給食は、地域により異なると思いますが、多くは「学校給食センター」でエリアごとに調理したものを、各校に提供することが多いようです。この場合、センターでは年間を通じて献立の計画を立てて、それに基づき仕入れを行っています。
仕入れ業者は入札で決めることが多いようですが、近年は食育の観点から、できるだけ地場のものを使おうという流れになっています。そのため、実際に納入者として採用してもらうには、それぞれの給食センターや教育委員会などに問い合わせや相談をするのが第一歩です。
しかし、農家さん単独では難しいという場合も考えられます。その時は、地域の農家さんたちで組合や法人などの組織を立ち上げる必要があるかもしれません。
それから、学校給食は、原材料の上限単価が決まっているので価格設定も重要です。私が知っている情報では、市場価格を参考に仕入れ価格を設定している農家さんが多いようです。
村山邦彦
伊賀ベジタブルファーム株式会社
ハードルは高いが個人的な繋がりやイベントなどを通してアピールを
一般に学校や保育園で給食に用いられる食材の場合、まとまった量を確実に供給できることが求められます。事前に契約を交わすので、農産物の生育に支障が生じてしまった場合には、自分で市場から仕入れて納品する対応が求められる可能性もあります。こうした条件を農家だけで引き受けるのはなかなか大変でしょう。
公立の施設では、公募や随時契約の形で納入業者が決まっている場合がほとんどですので、自治体の担当部門に仕入状況について直接尋ねたうえで、納入業者と直接交渉してみる手もあると思います。
その場合も、価格面はもちろんのこと、安定共有できるのかはやはり重視されるでしょう。通常、業者は、必要な野菜は市場で仕入れているため、生産技術や販売対応能力が一定以上のレベルでないと、農家が直接相手にしてもらえる可能性は低いかもしれません。
こうした流通面のハードルは確かに存在していますが、最近は施設の特色を出すため、地産地消や有機食材を推進したいというケースもかなり増えてきています。
担当者が意欲的な場合、食育イベントなどで地域の生産者から直接仕入れることもあるかもしれません。そういう取り組みは関係者の個人的なつながりから始まることも多いので、生徒・園児の父兄や職員の方に話を聞いてみるのもよいでしょう。
こういうケースでは、すぐにたくさん売れるというより、イベントなど交流の場を設けながら理解を深めていき、徐々に取り扱いを伸ばしてもらうような流れになることが多いでしょう。