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栽培した米で日本酒を作り輸出したい。酒蔵さんはどうやって販路を開拓しているの?

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栽培した米で日本酒を作り輸出したい。酒蔵さんはどうやって販路を開拓しているの?

先祖代々続く、造酒屋を営んでおります。2年前まで東京でサラリーマンをしていましたが、Uターンで帰郷し、後を継ぎました。

父と母、それに職人である杜氏(とうじ)2名と営業1名という小規模な醸造元です。農場も自前で持ち、山田錦を栽培しています。

日本酒は、アジアやアメリカなどで人気が出てきていて、積極的に売り込みをかけている酒屋もあります。そのため、うちも国内だけでなく、海外に打って出て行かなければと感じるようになりました…。

しかし、海外の人に受け入れてもらえる酒造りや、パッケージ開発、どう販売するかなど、課題は多くあります。

また、私は海外への渡航経験はたった数回で、英語も基本的な単語やフレーズが話せる程度です。ほかの酒蔵さんや商社さんはどのように海外への販路を開拓しているのか知りたいです。
(兵庫県・山田さん/仮名・40代)

杉本琢真

兵庫県立 農林水産技術総合センター

香港は大吟醸酒が人気でした!製造や販売に関しては専門家に相談を

日本酒の醸造には、「山田錦」が使われることが一般的です。この山田錦をもとに、新しい酒米を開発し、海外シェアが取れる日本酒造りを目指そうというプロジェクト「次世代酒米コンソーシアム事業」があります。

私が所属する兵庫県立林水産技術総合センターが舵取り役として、石川県など全国18の研究所や酒造メーカーなどと研究に取り組んできました。

石川県医においては、延べ11年間に渡り研究・実験を行い、新品種「石川県68号(名称:百万石乃白=ひゃくまんごくのしろ)」の完成にたどり着きました。完成に至るまでには、「山田錦」を母に、「'05酒系83」という系統を父として交配を行い、12世代にわたって交配を行ったのです。

新品種のお米や酒米の開発には、一般的に10万個の米粒を蒔いた中から、ようやく1個の品種が出来上がると言われるくらい、労力がかかります。一般的な米は、肥料を与え過ぎると、収穫量は増えるものの、稲が倒れやすくなるリスクがあり、一粒のコメに含まれるタンパク質の量が上がります。

そうすると、コメの雑味が増え、食味が悪くなります。酒米も同じで、タンパク質のの量が多くなると、雑味成分が多い、時に苦味があるお酒に仕上がります。そのため、開発の際は、収穫量と食味や酒造適正を両立するために、肥料をどこまで与えることができるか、実験を繰り返しました。

そうして出来上がった石川県68号「百万石の白」の場合、タンパク質を貯める構造が、他の品種と異なります。肥料を与えても、タンパク質含有量が増えないのです。また、心白(しんぱく)という、日本酒醸造に必要な部分の発現が少ないものの、よいお酒に仕上がることも分かってきました。そのため、日本酒醸造に非常に適したお米として、酒蔵からは非常に好評をいただいています。

そして、海外では「どのようなお酒が好まれるのか」ということですが、私がヨーロッパやアジア諸国の飲食店・スーパーなどで、市場調査を実施しました。

およそ500種類の日本酒を調査した結果、香港では食前酒のように甘みや香りの高い純米吟醸、大吟醸が好まれた反面、ヨーロッパでは肉料理など食中酒に合うコクのある酒を中心に普通酒や純米酒など色々な酒が好まれることがわかりました。

具体的には、香港では純米大吟醸種が51%(144種類)、大吟醸酒18%(50種類)と大吟醸酒の取り扱いが圧倒的に多く、欧州では、ロンドンで3カ所、パリで2カ所のスーパーで販売されている日本酒を調べましたが、調査した269種類のうち、普通酒が29.4%(79種類)、純米酒26.4%(71種類)という結果でした。

また価格については720㎖あたりの平均販売価格は、香港のスーパーで10,310円、レストランで18,492円、ロンドンのスーパーでは10,307円、パリで5,608円となり、日本国内の販売価格の約3倍程度とかなり高かく設定されていました。

私の研究部署や工業技術センターでは、日本酒用の酒米開発から醸造まで相談に乗ることも可能なので、こういった専門機関に頼ってみてはいかがでしょうか。

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仲野真人

株式会社食農夢創 代表取締役

商社を通して輸出するのがおすすめ!輸出に強い会社を選びましょう

確かに農林水産物、食品の輸出は、日本政府も力を入れているプロジェクトです。かつ、世界では日本食ブームも広がっているので、チャンスですね。しかし、明確な計画なく、ただやみくもに輸出したいと言っても、成功する確立は低いのが現状です。

一般的に海外への輸出については、JETRO(ジェトロ・日本貿易振興機構)が海外の商談会を開催していますので、まずJETROに相談する事をおすすめします。

その上で、実際に重要になってくるのが、「自分で輸出するのか」「商社を通して輸出するのか」という点です。自分での輸出は、手間も多く、ハードルがかなり高いため、まずは「商社を通して輸出する」ということをおすすめします。

商社選びについては重要なポイントがあります。それは、輸出対象国を検討した上で、「輸出したい国に強い商社を探す」ということです。輸出には税関を通さなければならず、突発的な問題もよく発生します。そのため、輸出対象国の各種手続きに慣れている商社でないと、商品自体が輸出できないということも多いです。

輸出に関して情報を知る上では、農林水産省が立ち上げているGFP農林水産物・食品輸出プロジェクトというサイトがおすすめです。各種輸出や事例紹介も行われており、登録も無料です。ぜひ登録してみてください。

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