養豚農家を経営しています。現在は、専門の市場を通して加工場への出荷をしていますが、規模拡大にともなって販路の拡大も検討中です。
何度かスーパーマーケットに営業をしたことがありますが、今まで専門業者を通してきただけなので「販売実績のない業者さんの商品は扱えない」と話を聞いていただけませんでした。
ふるさと納税なども同様で、販売実績がないことから取り扱ってくれない現状です。
どの農家さんであっても最初は実績のない状態からスタートするので、現在ふるさと納税やスーパーへ卸している農家さんはどのようにして販路を作ったのか気になります。
また、販売実績がない状態で販路を拡大するには、どのような方法があるか教えてほしいです。
(宮崎県・香田博則さん/仮名・40代)
野方健志
株式会社プロデュース九州
直接開拓からWebサイトへのアプローチなど販売機会は広がっています
肉豚出荷の余力が見込めれば、出荷できる肉豚数に応じて、さまざまな商談会への参加、取引先などへの直接開拓からWebサイトへのアプローチなど、販売機会は多方面に広がります。
自社で精肉カットやパッキングまでの加工ができる施設を所有したり、専門の職人を確保することが難しい場合は、外部の精肉加工業者・食肉問屋にお金を払って加工を委託することも可能です。
屠畜場では枝肉加工(半身)と部位ブロック加工までは請負ってくれます。
増産した肉豚を日本ハムやプリマハムなどの大手食肉メーカへ出荷するとすれば、増産も歓迎されるでしょう。
大手食肉メーカーと取引にのぞむ際は、どれだけ肉豚に付加価値をつけることができるかがポイントになります。
取引先として選ばれるうえで、選考基準になるのは、豚肉の肉質(色見・脂質・旨味・抗アレルギー度など)の良さや、1頭あたりからとれる枝肉重量はもちろんですが、それ以外にも、豚が飼育されている施設や環境など、アニマルウェルフェア(動物福祉)に配慮しているか?とか、農場独自の給餌設計、血統の優位性などがポイントになります。
ご相談者さんの農場独自の魅力を付加価値につけたブランド豚としてアピールできれば、市場競争力が高まることでしょう。
仲野真人
株式会社食農夢創 代表取締役
飲食店などに対して販売をし、SNS等でPRしながら販路を広げていきましょう
「販売実績がないので扱えない」というのは、まさに農家あるあるですね。
でも、初めて自分で販路を開拓する人達は必ず通ってきた道です。
質問者さまがご自身で売るとなると、
(1)市場に出荷したものを買い戻して自分で加工する
(2)加工場で委託加工した自社の豚肉を購入して販売する……のどちらかになるかと思います。
まず1の場合は、自社でカットなどをしなければならないので、自社で加工場の整備をする必要があります。
その場合は加工場に販売できるスペースを作り、地元の消費者へ販売することもできますよね。
一方、2の場合は商品化されたものを売るとなるので、自分で加工する必要はなく「仕入販売」という形になります。
販売実績を作る場合、いきなりスーパーなどに売り込んでも断られてしまう場合が多いのが現状です。
そのため、まずは地元の飲食店などに対して販売をし、そのメニューをSNSなどでPRするなどしながら、販路を広げていくことが重要かと思います。
また、販路を増やしていくためには商談会への出展なども有効です。
その際には商談会シートはきちんと作り込んでおくことも忘れてはいけません。
商談会シートには商品の特徴やどういう料理にするのがおすすめか(利用シーン)、またターゲットとなる客層などを記載する必要があるので、自分のこだわりや想い、また豚肉の魅力をきちんと表現することが重要です。
そして何より、言葉で伝えてその場で食べてもらうようにすることが一番の価値だと思います。
最初は表現するのが難しいと思いますが、自分で育てているからこそ伝えられる価値があり、それが他の豚肉との差別化につながると思います。ぜひ頑張ってください。