養豚家としてというか、肉屋としての悩みなのですが、マーケティングの専門家に相談したいことがあります。
私は両親と一緒に年間平均1,800頭ほどを育てる養豚農家で、2年前から自宅に加工場を作って店頭販売も始めました。
しかし、購入されやすいロースやバラなどはだいたい売り切れるものの、腕やモモといった部位が売れ残りがちなのです。
こうした脚部の肉は、繊維が複雑でカットの手間がかかりるので、売れ残るととても残念ですし、旨味成分が豊富で美味しいので、もっとたくさんの人に食べて欲しいと思っています。
そこで、何とか売り切ろうとSNSのアカウントを作って情報を上げるようにしたのですが、売り上げは一向に増えません。
どうにかして売り切る方法はないでしょうか?
(群馬県・吉田さん/仮名・40代)
山岸直輝
株式会社MISO SOUP
まずは豚足の料理教室を開いて感想を集め、それをヒントに豚足商品を販売しましょう
自社加工場を作ったからこそ見えてきた課題ですね。さまざまな挑戦をされていることがよく分かる相談をありがとうございます。
豚足のように、食べ方が限定されているものや、あまり一般的には食べる習慣が無いものを売るのは本当に大変です。
商品を買ってもらうというよりも、人の生活自体を変えようとすることに近いからです。
それでは、どうすれば豚足を売ることができるのでしょうか?
私は豚足のプロではありませんので、明確な答えを持っているわけではないのですが、まずターゲットを絞ってテストしてみることをおすすめします。
たとえば、豚足はコラーゲンがたっぷりと含まれている食材ですので、地域内の美容を気にする方々に向けて豚足の料理教室を開いてみます。
そうすると「豚足が肉屋で売っていることを知らなかった」、「豚足は美容効果があるとは思っていたけど、調理に時間かかりそうでめんどうだから買ったことがない」といった感想をもらえるはずです。
次はそうした感想を元にして、「肉屋の裏メニュー じっくり3時間煮込んだトロッと豚足」のような、調理をしなくても食べられる商品を作り、店舗で何度か目立つように宣伝します。
すると、少しずつ反応が変わってくるのではないでしょうか?
ここで大事なのは、しっかりと顧客の意見を聞くことと、その意見からヒントを得て「商品化すること」です。
実際、相談者のお店では、豚足は他のお肉と違い調理に手間がかかりそうなイメージが強いために、「商品」にしたことがなかったのではないでしょうか。
「売れない」ということは、裏を返せば「売れ始めたら競合がない」ということであり、チャンスなのです。
SNSに関しても、豚足の調理方法に悩む方に向けて豚足を使ったレシピなどの情報を発信し続けることで、独自性を出すことができ、フォロワーも増えるかもしれません。
以上のことをぜひ試してみて、また結果を教えてくださいね。
仲野真人
株式会社食農夢創 代表取締役
「食べる習慣がない食材」を売るには情報発信が大切です
豚足、美味しいですよね!私は仕事でよく沖縄へ行っているので、沖縄料理屋で豚足をよくいただきます。
豚足はコラーゲンをたっぷり含む食材なので、現地でも「食べると翌日はお肌がプルプルになる」という言葉をよく聞きました。
一方で、本州ではあまり食べる習慣がないのが現状です。
実際に私も自宅では豚足を食べませんし、沖縄料理屋以外ではほとんど食べた記憶がありません。
つまり消費者の多くは、豚足を「食べる習慣がない」のです。
だからと言って、「豚足は売れない」と決めつけて諦めてしまうのはもったいないですよね。
消費者の方は「食べ方を知らない」だけで、「食べ方がわかって美味しさが伝われば食べるようになる」という可能性を秘めているわけです。
これは他の豚肉の部位や、豚肉以外の珍しい食材にも共通して言えることです。
では、どうすればもっと豚足を売ることができるのか?
もし質問者が豚足の美味しい食べ方を知っているのであれば、そのレシピを消費者に教えてあげることです。
その際、いきなり消費者に「こうすると美味しいよ」と伝えても信用してもらえないかもしれませんので、まずは実際に豚足を使った料理を作って、来店した皆さんに試食してもらうのが良いのではないでしょうか(※コロナ禍なので可能であればですが)。
お店でSNSのアカウントを運用しているそうですからYouTube(ユーチューブ)に豚足の料理動画をアップしてみるのもよいかもしれません。
また、地元の飲食店や惣菜屋と組んで料理や商品を開発するのもポイントです。
「餅は餅屋」という言葉があるように、その道のプロに「豚足」を使ってもらうことによって信憑性が高まり、売上が上がって、かつ消費者にも周知が広がっていけば一石二鳥ですよね。
いろいろとお伝えしましたが、質問者のお店を訪れるお客様に「なぜ豚足を購入しないのか?」を率直に聞いてみることも重要だと思います。
そのうえで、「どうしたら消費者が買いやすくなるのか?」ということを考えていくのが良いと思います。
その際にはぜひ、ご自身だけで考えるのではなく、周囲の食関係の方たちに相談してみてください。自分では思いつかないアイデアを教えてもらえるかもしれませんよ。
yuik.
ISC
モモやウデは赤身ばかりで、脂ののっているバラやロースと違って家庭でおいしく食べる方法があまり知られていないですよね。自家販売をしているところは大抵モモ・ウデをどう売り切るかで悩んでいます。そういうところは、外部委託してソーセージやポークジャーキーに加工したり、ひき肉にして冷凍メンチカツや餃子に加工して販売していますよ。家庭では、手軽においしくできるローストポークのレシピを紹介し、おいしそうに盛り付けた写真とともに発信するのはどうでしょう。ぜひ「ウデやモモはうまみが強い」という、肉のプロのコメントも付けたらよいと思います。