豚に餌として米を与えて肉質を良くしたい！正しい給餌方法を教えて

YUIME Japan編集部 / 2021.12.21

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家族で養豚場を経営していますが、昨今は飼料用の輸入穀類の価格が高止まりしているため、コストがかかって経済的に大変です。

そこで、手に入りやすい余剰米を使ってなんとか効率的に肉質の良い豚を育てたいと考えています。

そんな時、仲間うちで飼料の話をしていると「米を与えると肉質が軟らかくなり、商品価値が上がるらしい」と聞きました。

試しに、今使っている配合飼料の70％ほどを占めているトウモロコシの全量を玄米（2mmメッシュで粉砕したもの）に変えて、うちで飼養している「LWD3元交雑豚」の一部に体重70kgから与えてみたのですが、1日平均増体量、飼料摂取量、飼料要求率、110kg到達日齢は従来の配合飼料を与えた群れと特に差はありませんでした。

これから先、輸入穀物はさらに値上がりするかもしれませんし、そうなると経営も厳しくなってしまうでしょう。

国内産の米を使って肉質も良くなるなら助かるので、ぜひ正しい給餌方法が知りたいです。
（埼玉県・堀田さん/仮名・40代）

飼料用米は玄米を配合すると、市販の配合飼料を与えた豚との差別化が図れます

飼料用米の給与技術については『飼料用米の生産・給与技術マニュアル<2016年度版>』が発行されていますので、そのなかから「豚」について紹介します。

なおデータは、岩手県農業研究センター畜産研究所と福井県畜産試験場から発表されたものを引用します。

肥育後期の豚に玄米を給与すると、背脂肪内層中のオレイン酸・リノール酸の割合が変化して、トウモロコシ主体の慣行飼料で生産された豚肉との差別化が図れます。

他の飼料原料と組み合わせることを想定すると、飼料中に40％以内で配合するのが一般的には使用しやすいでしょう。

岩手県農業研究センター畜産研究所の飼養試験では、肥育前期豚に玄米を給与する場合、飼料中に40～50％以内の配合であれば、飼養・枝肉成績、肉質は低下していませんでした（肥育後期の豚への玄米の最大給与量は飼料の75％で、すべてトウモロコシで代替することができます）。

飼料用米を給与する際には、籾米よりも栄養価の高い玄米を20㎜メッシュで粉砕したものを肥育後期（体重70kg以降）に給与するのが一般的です。

また、自家配合によって配合量を多くする場合（岩手県農業研究センター畜産研究所）、もしくは市販配合飼料の一部を玄米に置き換える場合（福井県畜産試験場）には、生産性を落とさないためにも中央畜産会が定めている栄養要求量を満たすことが重要になります。

岩手県農業研究センター畜産研究所では飼料用米を多給する実証事例として、市販の配合飼料中の飼料用米を55％または75％の割合で代替した飼料をバークシャー種肥育後期豚（体重70kgから110kgまで）に給与し、発育と肉質を調査しました。

その結果、飼料用米55％・75％で代替した飼料で黒豚の発育成績と肉質成績が向上し、食味も良くなるのに加えて、肥育日数が短くなる傾向が見られました。

具体的には、肉色、脂肪色、肉の硬さ、ロース肉の脂肪含量とグルタミン酸等アミノ酸含量は飼料用米給与の有無で差はなく、皮下脂肪ではオレイン酸割合が増えリノール酸割合が減少しました。

また飼料用米を給与した豚肉と給与しない豚肉を食べ比べたところ、圧倒的に飼料用米給与の方が美味しいという結果になりました。

福井県畜産試験場では、肥育豚に対する玄米の給与割合の違いが発育や肉質に及ぼす影響を検討するため、出荷前の1カ月間、豚肥育後期用市販配合飼料に玄米を15％、30％、50％代替給与しました。

すると、玄米代替割合が多くなるほど組蛋白質が低くTDNが高い低蛋白質・高カロリー飼料となりましたが、日増体量や発育に影響は認められませんでした（現地実証試験でも同様）。

また腕最長筋の粗脂肪含量については、玄米を50%代替して給与した場合、2.1％から4.0％に増加しました。

そして玄米代替割合が多くなるほどオレイン酸割合が増加し、リノール酸が低下する傾向を示しました（試験に用いた玄米はいずれも福井県産コシヒカリを2mm以下に破砕したものとし、市販の記合飼料に混合）。

なお粗蛋白質含有率は、玄米代替前の市販飼料13.0％、玄米15％代替で12.3％、玄米30％代替で11.5％、玄米50％代替で10.5％でした。