大阪の都市近郊で多品目の野菜を栽培し、市場に出荷しています。
最近、父親から一部の畑を任せてもらったので、有機栽培に挑戦してみようと考えています。
畑は住宅地に近いので、立地を活かして、住宅街に住んでいる人たちに販売しようかと検討中です。
販売場所は自宅の入り口付近に、小さな小屋を建てて販売所にするつもりです。
早朝に収穫した野菜を売るだけでなく、夕方の時間帯にも午後収穫した野菜を置いて販売しようかと考えています。
家はそこそこ人通りの多い道路に面していますが、まず存在を知ってもらわないといけません。
どう宣伝してお客さんを集めればよいのか教えてください。
(大阪府・橋本大輔さん/仮名・30代)
脇坂真吏
AgriInnovation Design/東神楽大学学長
「お客さまがよく見える関係性」を活かして近隣住民のお抱え農家になりましょう
想像するだけで成功しそうですね!
それは「お客さまがよく見える関係性」を前提に進められるからです。
おそらく、相談者さんが生まれ育った場所かと思いますので、近所に住んでいる方々にはどんな方が多いかなど、その傾向をよく理解できているかと思います。
さらに、近所に住まわれる方々のうち、直売所に来店して買われるお客さんが具体的にはどんな人で、何を求めて来られるのかについても想像しやすいでしょう。
ご相談者さんが成功するためには直売所の存在意義を追求することが大事です。つまり、来店するお客さんのニーズに合った野菜を提供できるかどうか?と言う点です。
お客さんが増えていくなかで、どんな会話をしているか、実際に何が売れ行きがいいかを分析すると、生産数を増やしたり、新たに追加するべき野菜は何なのかな?といったヒントも得られると思います。引いては売れ行きアップにつながりやすくなります。
ご相談者さんが目指すところは、「近隣住民のお抱え農家」と言ったところではないでしょうか?
さて、直売所を設置するにあたっては、認知度をアップし、リピーターを増やしていく取り組みも成功の鍵になってきます。
そのポイントは4つあります。
1は、直売所の運営体制
有人、無人のどちらでも構いませんが、どちらにするかによって見せ方などが変わってきます。
例えば、通常は無人販売ですが、「〇時~〇時は農家が店頭に立っています」などと告知しておくと、生産者と会話したいお客や質問がある人は滞在時間に来られます。生産者と消費者がお互いにコミュニケーションをとれるようになるため、情報収集のチャンスですし、長い目で見て売上アップにもつながってきます。
常に無人の場合は、商品補充に気をつけないと、いつ来ても商品がないお店と見られてしまうことになりかねません。
その場合は、商品の補充時間などを掲示しておくと、その時間をめがけてお客さんが来てくれることもあります。
2、道路からの視認性
認知度をアップしたい場合、まずは視認性が大事です。
人通りの多い道路沿いとはいえ、道路からお店がしっかり見えるか、見える場合は何屋さんなのかがはっきりわかるかという点が重要です。
農家さんが自宅の軒先を利用した直売所などで見かける例ですが、大きな門をくぐって、外からはっきりと売り場が見えてないところへ入っていくのは、消費者にとってはちょっと勇気が必要です。
外からはっきり見えていない場合、通りから見える場所に「農産物直売所」や「営業時間」などの記載があると入りやすくなります。
また、農産物直売所などの「のぼり」も効果がありますので、同じことを書いたのぼりをたくさん設置することが大事です。
人は通行しているときには、自分が見たいものしか目に入ってこないという習性がありますから、ある程度、目立たせておく必要があります。
また、お客さまがどんな方かがわかっている状態だと思いますので、その対象エリアにチラシをポスティング(郵便ポストに入れる)することが大事です。
何度もやるよりは、1回しっかりやってみて、その効果を検証してみるのがおすすめです。
3、来やすい、買いやすい環境
お店の存在が認識されて、お客さんが「寄ってみたいなあ」と思ってくれるようになっても、利便性は十分でしょうか?
例えば、駐車場がないから車が停められないとか、自転車が置きづらいなどという状況ではないでしょうか?また、先客がひとりいるだけなのに、商品がよく見えないので、探しにくかったなどというように、せっかく買いたい気持ちがあるのに、買いにくい気持ちが優ってしまう状況はないでしょうか。
よほどのファンではない限り、そのような場合は「今日はいいや」と諦めてUターンしてしまいますので、そうした部分も意識して改善していくことが大事だと思います。
4、コミュニケーションの取り方・SNSでの発信
今はスーパーでも、コンビニでも野菜が買える時代ですから、新規の顧客を増やし続けることよりも、お客さんにリピートしてもらうことの方が重要になります。
わざわざ足を運んでくれるお客さんを増やさなくてはいけません。
公式LINEなども最初のうちは無料で使えますので、来てくださったお客さまにLINE登録してもらいましょう。
会員登録もQRコードをただ貼っておくだけでは増えないので、新規登録で野菜をひとつプレゼントするなど、何らかの仕掛けや工夫をしていくのがおすすめです。