千葉県でメロンを栽培しています。
商品に付加価値を加えるため、特別注文でメロンに名前を入れられる「名入れメロン」を作っています。
しかし、コロナ禍の影響でお祝い事や人が集まる機会が減ったため、注文がほぼなくなってしまいました。
贈答用に販売していたので、ふつうのメロンよりも値段を高く設定しています。
そのため、北海道などのブランドメロンと同じくらいお客さんに価値を感じてもらわないと、この先も売れないのではないかと心配です。
名付け以外に、どういった付加価値をつければ、ブランドメロンに対抗できるでしょうか。
可能であれば、あげる人、もらった人が笑顔になるようなひと工夫ができればなと思っています。
(千葉県・最上さん/仮名・50代)
本多英二
aula brand design(アウラブランドデザイン)
強敵に対抗するよりも、情報発信&受信でお客さんとのズレをなくしましょう!
お隣に茨城のメロンが控えていますね。熾烈な戦いだと拝察します。茨城の「イバラキング」、北海道の「夕張メロン」、静岡の「クラウンメロン」という名だたるブランドメロンに、「文字入り」を武器におひとりで対抗しようとするのはかなり厳しいのではないでしょうか。
なぜならば、既存の有名ブランドメロンは県や地域を挙げて数十年に渡る時間と資金を投入し培った知的財産ですし、文字入りメロンもそうそう珍しいアイデアではありません。一旦争う軸を変えてみましょう。
ポイントは、ブランド対抗意識を捨てること。例えば、私がブランディングを担当している高知県のマスクメロンも上記有名ブランドには敵いません。
3年前にブランドを立ち上げ「一果相伝(いっかそうでん)」という名で売り出していますが、まだまだ「何それ?」状態です。
しかし、初年度8千万(温室規模1.6h)ほどだった売り上げが、3年経った今では倍増。単位面積あたりの数字では有名産地を凌ぐパフォーマンス(結果)です。
販売戦略はここでは書き切れないので割愛しますが、ご相談内容の「あげる人、もらった人が笑顔になれる工夫」について経験談を紹介します。
まず、食べものですので「美味しくなければならない」のは絶対条件です。前述の「一果相伝」は、温度調節はもちろん、湿度やCO2濃度の管理、灌水量の調節で「皮間近まで甘い」マスクメロンの栽培に成功しました。
また、メロンは、ギフトで使っていただくことも多い果実です。パッケージデザインは大切で、受け取った人が見ただけで笑顔になるような工夫が必要です。
食べごろを記したカードを添えたり、母の日のプレゼントでは赤いリボンを結んだり。こんなちょっとした心遣いがお客さんの心を掴み、単なる消費者からファンへと昇華させます。
ファンはリピーターとなり繰り返し買ってくれますので、安定的な経営の下支えとなります。
JAの選果基準ではハネ物扱いとなる網目の乱れや傷のあるメロンを、従来は格安で加工業者向けに卸していました。
しかし「一果相伝」は主軸をインターネット通販、オンラインの直売所などに移し、傷モノを「訳あり」と表して売り出したところ爆売れし、お客さんからは「どこが訳ありなのか判らない」「こんな美味しいメロンが安く買えて嬉しい!」などの声が寄せられるようになりました。
相談者さんのメロンが苦戦している理由、それは欲しているお客さんに情報が届いていない、あるいは届ける努力をしていないからかも知れません。
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生産者さんが考えている価値観と、お客さんが求めている価値観が少しズレていることが往々にしてあります。
「こんなに努力しているのに売れない」ではなく、お客さんの立場になって考えることがまず重要です。
お客さんと直接つながる「道具」を使って情報を発信&受信することでそのズレを修正し、商品を整え、きちんとお客さんに届けるといった行動を実践すれば打開策は必ず見つかります。答えはお客さんが教えてくれますよ。