熊本県でメロン栽培を夫婦で行っております。
まだ二人とも30代で、経験は10年に満たない程度ですが、試行錯誤を重ねて糖度16度以上の甘さ重視のメロンを育てています。
努力の甲斐があり、おかげさまで最近ではリピーターの方々が増え、さらに贈答用として利用される人も増えてきました。
ある日、私たちのメロンをいつも買っていただいている方から「せっかくだから名前を決めてブランド化してみたら?できるなら商標登録してもいいかもよ」という声をいただきました。
たしかに「甘いメロン」という強みだけで売るのは難しいです。
競合のメロンと差別化しなければと感じていたところでしたので、思い切って商標登録してみたいと思います。
しかし、商標を登録するための手順がわかりません。
費用や注意点なども教えていただきたいのですが、そもそも個人で登録申請することは可能なのでしょうか?
できれば地名を入れた名前にしたいと考えているのですが、地域の名前を勝手に使ってもいいものなのでしょうか?
(熊本県・松元由美香さん/仮名・30代)
松田恭子
株式会社結アソシエイト 代表取締役
商標登録は事前の調査が大切です!「知財総合支援窓口」に相談してみましょう
ご相談者さまの氏名(苗字)を、仮に「加藤さん」としましょう。熊本県に住む加藤さんが自分達の栽培しているメロンの商標を考えるとき、「加藤メロン」や「熊本メロン」といった名前が思い浮かぶと思います。
しかし残念ながら文字だけでは両方とも商標に登録できない可能性が大きいです。
商標の登録に関しては、特許庁が商標法に従って審査しています。
そもそも商標は、自己と他人の商品などを区別するために用いられるものです。商標法では、他人の氏名(苗字)を含む商標の登録は認められておりません。
つまり「加藤」という苗字の方は全国に他にもたくさんいるために「加藤メロン」は登録できない可能性が大きいです。
反対に考えると、もし苗字が全国にただ1軒だけしか無いとか、下の名前が珍しくて苗字と合わせた氏名は1人しかいないという場合は、その「氏名+メロン」で商標登録できることになります。
「熊本メロン」といった「地域の名称」と「商品(サービス)」の名称の組合せについては、かつては普通名称になっているとして、登録が認められない場合が多かったです。
しかし、地域経済の活性化を目的として2006年4月1日に導入された「地域団体商標制度」により、「熊本メロン」を地域団体商標として登録することができるようになりました。
登録は地域に根ざした事業協同組合や農業協同組合などが一定の条件を満たせば可能で、個人や特定企業などが登録することはできません。
そこでよくある方法が、「加藤メロン」「熊本メロン」の文字と、メロンのデザインやロゴマークなどの図形を組みあわせたものを結合商標として登録するという方法です。
結合商標は文字や図形、記号などの組み合わせなので、一部だけ変えられたものを「真似ではない!」と言い張られてトラブルが発生する恐れはありますが、ご相談者さまの考えていらっしゃるブランド化の目的は達成されるのではないかと思います。
商標は特許庁の審判を行う人たちの全体観察によって決められます。最終的に商標が認められるための条件は、ケースバイケースとなります。
全国各県には商標などの知財に関して専門家の相談を受けられるワンストップの「知財総合支援窓口」があります。無料の個別相談サービスもあるようですから、連絡してみてください。
商標には文字や図形のほか、色彩、音の組み合わせ、さらに図形の動きなども対象となります。自分のメロンブランドを見分けてもらうために音楽やロゴの動きなどを考えても良いかもしれません。