定置網で漁をしています。魚は鮮度が命です。
たとえ雑魚であろうと、身が活きている魚は美味しい。でも、市場では値のつかない魚は見向きもされません。
毎日水揚げの中には一定数の雑魚が混ざりますが、自家消費以外はほとんど廃棄されています。
本当にもったいなくて、これを何とかきちんとした価格で売れないものかと、いつも思っています。
これをメインの仕事にできないことはわかっていますが、私たちの地域には単身の高齢者も少なくなく、年金生活の中で生活のやりくりも大変です。
こうした人たちをはじめ、地元の人たちに新鮮な雑魚のおいしさを届けられるといいのですが…。
手間をかけずにこうした魚を販売できるとしたら、高齢者の方々でも徒歩で気軽に立ち寄れる場所に無人売店をつくって、販売するのもいいかなと考えたりしています。
無人販売を行う場合の手続きや販売の仕方を教えていただけないでしょうか。
(三重県・久住孝さん/仮名・40代)
麓 貴光
株式会社水土舎 代表取締役
売上をあげられる可能性はありますが、工夫しなければいけません
魚の無人販売は売上をあげられる可能性はありますが、いろいろと注意、工夫しなければいけないことがあります。
過去に漁業者が個人で無人販売を試みた事例があるのでご紹介します。鹿児島県漁業士会の川畑さんは、当時、ご自身の自宅前で無人販売用のクーラーボックスを設置しました。
はじめ100円分(サバ1尾、ヒラアジ2尾)の魚を袋詰めし、それをクーラーボックスに入れて、自宅前に貯金箱とともに置いておきました。初日の売り上げは100円だけ。でも次の日、貯金箱を覗くと500円入っていました。
ある時、お客さんから「その魚はどう食べたら美味しいの?」と聞かれ、「魚によって食べ方が違うことは知られていないんだ」と気づきました。
そこで、クーラーボックスに調理法や食べ方を書いた紙を貼り付けたところ、売り上げが驚くほど伸びました。
もっと売り上げを伸ばすために、切り身として販売してみると、これまた売り上げが好調に!
しかし突然、保健所の職員がやってきて、販売停止を命令されてしまったのです。魚を販売するためには、食品衛生上、施設を作って鮮魚販売の許可を取らなければいけないとのこと。
ここで辞めたくない!と思い、保健所の職員と話し合いながら簡易的な加工場を造り、鮮魚販売の許可を取得しました。
今では朝の6時30分〜7時まで丸物(1尾)を販売し、その後、売れ残った魚を加工場で三枚おろしや刺身用に調理して、冷蔵庫に保管。それをお客さんが自由に開けて持ち帰るという方式で販売しています。
このように、無人販売を行うためには、魚を調理するための加工施設と、保健所への販売許可を取っておく必要があります。