夫婦2人で小さな農園を営んでいます。農家になってからまだ今年で3年目なので、まだまだ勉強中です。
農薬や肥料をあまり使わず、なるべく自然な形で野菜を育てています。
年間で40品目程育てており、収穫量は多くありませんが、産直市場などで販売しています。おいしいものを安く食べてもらいたいと思い、価格はなるべく安く販売していました。
しかし、直売所の責任者から「他の農家さんとの価格バランスが悪いから値段を上げてください」と言われました。
たしかに私だけ安い値段で野菜を販売してしまうと、他の農家さんも値下げしなくてはならず、値下げ競争になってしまう危険性があります。
確かに意味は理解できるのですが…納得できません。
自分が育てた野菜に見合う価格を設定したいし、商売は自分が納得した価格で売るのが基本だと考えています。
そんな想いを直売所にも納得してもらいたいので、適正な価格の決め方の基準があれば教えてください。
(神奈川県・佐藤さん/仮名・30代)
仲野真人
株式会社食農夢創 代表取締役
野菜の価格を設定するときには、「原価」「競合価格」「付加価値」の3つから決めることになります
質問者さまが「農薬は使わず、肥料もほとんど使わないのでコストがあまりかからない」のは、栽培技術の研究や努力があったからこそだと思います。
そのうえで「美味しいものを、消費者が買いやすい値段で売りたい」という想いは素晴らしいと思います。
一般的に価格を設定するときには、「原価(生産コスト)」「競合価格(市場価格)」「付加価値」の3つから決めることになります。
質問者さまで言えば、原価を抑えられた分、ライバルの農家より、安い価格設定ができているということになりますよね。
この場合、値段の安さが、相談者さまの「付加価値」だと言えるかもしれません。
一方で、ほかの多くの生産者は、農薬や肥料を使っている方がまだまだ多いのが現状です。
現在、コロナ禍やウクライナ情勢によって農薬や肥料の価格も高騰しております。
食品メーカーであれば一方的に値上げができますが、農産物は生産コストが上がっても、作物の需給バランスによって値段が決まってしまうため、簡単に値上げすることが難しいですよね。
もう一点、お考えいただきたいことは、高齢化が進む農業分野では、担い手不足も深刻だという点。
働き手が減っているのは、「農業は儲からないので働きたくない、継がせたくない」と考える方が多い背景があります。
そこで、生産者が増える=儲けられるようにするためには、「高く売る(単価を上げる)」か「安く作る(生産コストを下げる)」の二択になりますが、私は両方をする必要があると考えています。
質問者さまの場合は「コストを下げて安く作る」ことが得意ですから、さらに「商品単価を上げて高く売れる」ようになれば、経営としてもより安定しますよね。
そのうえで、質問者さまがどうしても納得いかず「安く売りたい」のであれば、産直市場では売らずに、簡易直売所を作る、ネット販売をするなど自分で販売することをおすすめします。
直売所は、生産者に場所を貸しているだけのところもありますが、その一方、「生産者の所得の向上」を目指しているところもあります。
そのような直売所は、集客に力を入れる一方で、生産者に対しては品目ごとに最低価格を決めて、生産者同士の価格競争を避けるようにしています。
自由競争とは言っても、地域性や販売ルールなどはありますので、それに従いながら工夫をするか、それに従いたくないなら自分で売るという判断が必要かもしれません。