東京で、野菜農家を家族で営んでいます。
農業というと、都心から離れた農村をイメージする人もいますが、都会は人口が多いので、遠くの農村よりも都市近郊でつくられた野菜の方が、新鮮に届けられます。
輸送に時間やコストがかからないので、お客さんにも手にとってもらいやすいです。
私の実感ですが、最近は特に直売所での売れ行きが好調です。
ありがたいことに、私の野菜を購入した方から「山木さんの野菜を買いたい!」と直売所へお問い合わせもいただくようになりました。
新鮮な野菜や有機栽培で育てた野菜が売れるので、形はイマイチでも、質にこだわって栽培しています。
しかし、あまりの売れ行きの良さに、同業者の反感を買ってしまったこともあります。
「山木さんのところは家族経営だから人件費がかからないし、その分、安くしてるから売れてる。味はよくない」と噂話をしているのを耳にしました。
確かにそういった要因もあるのですが、価格だけではなく、味でも他の農家さんの野菜には劣っていないと思っています。
ですが、直売所の景気の良さから、最近では近隣の農家さんも直売所に野菜を卸すようになりました。
このままでは価格勝負になってしまいそうですし、できれば野菜のブランド力を高め、もっと多くの人に買っていただきたいです。
(東京都・山木さん/仮名・50代)
鈴木光一
鈴木農場・伊東種苗店
嫉妬は憧れの裏返し。直売所を味方に活気ある売り場に変えていきましょう
「出る杭は打たれるが、出過ぎた杭は打たれない」という考え方で取り組んでいくのがよいと思います。
はっきり言って、他人の感情はどうしようもないことです。「ヤキモチなどまったく気にならない」という人はほとんどいないでしょう。ここは、自分が「どこを目指して商品を作るのか?」を考えて、出過ぎるぐらい突き抜けた方がよいと思います。
ひと昔前に比べ、今は直売所の競争が激しくなっています。直売所を運営、経営しているオーナーにしてみれば、質問者さんのように個人にファンがつくような農家さんをどれだけ集められるかが、重要なのです。
そうした農家さんが高め合うことこそ、直売所の活性化につながるというわけです。ですから、仲間から疎まれるようなことがあるなら、運営者に協力を仰いでみてはいかがでしょうか。
運営側から「ウチ(の直売所)は活気ある売り場を目指しています」という大義名分を他の農家さんに伝えてもらい、理解を促していくのが有効でしょう。
大切なのは、自分の野菜をブランド化したい!という明確な目標を持つことです。ブランド化とは、すなわち「その他大勢との差別化」をはっきりさせることでもあります。「こういう野菜を作りたいから、私はこのように工夫しました」という自分のコンセプトを確立させることです。
それはおいしさなのか、栄養価の高さなのか、珍しさなのか、付加価値となるポイントはさまざまです。そうした思いはもちろんのこと、それをしっかりと伝えていくことが重要です。
それはお客さんにとっても、直売所にとっても、同業者にとっても同じことが言えます。だからこそ、商品が並ぶ舞台である直売所には最大限協力してもらうべきです。
もし、それがかなわない直売所であるならば、私ならば見切りをつけて別の直売所へ持っていきます。活気があって、自由な競争のある舞台の方が、意欲ある質問者さんにとっても最善の環境だと思いませんか。