定置網船に乗って漁をしています。
毎朝、出漁前に市場の横丁で食べる朝食を楽しみにしています。
先日、いつも行っている食堂のおかみさんに、カツオ船乗組員さんが作ったカツオの塩辛をおまけで出してもらいました。
カツオの胃袋を使って作ったらしく、とてもおいしかったので、自分でも作って漁師仲間たちに振る舞いたいと思いました。
料理はときどきやるのですが、塩辛を作った経験はありません。カツオは市場で新鮮なものが丸ごと1本手に入るので、挑戦してみたいです。
どのように作るのでしょうか。上手に作るコツを知りたいです。
(宮城県・高橋久幸さん/仮名、40代)
西潟正人
地魚料理「あじろ定置網」、東京海洋大学講師
塩と酒だけで醸して、日本酒をまぶし、小瓶に詰めて寝かせましょう
カツオの主に内臓を使った塩辛は、カツオ節工場から出る副産物を誰かがもったいないと思ったことが発想でしょう。
塩辛という着眼が、よかったと思います。
そもそも料理と呼べるような代物ではなく、塩で自然発酵させただけの「腹ワタもの」です。
あまり難しく考えず、単純に作った方が素材のうま味が生きてくるはずです。
内臓を使うだけに、カツオは捕れたての鮮度でなくてはなりません。
主役となる胃袋(歯ごたえの素)は開いて、粗塩を摺り込むようにしてよく洗います(ヌメリを完全にとる)。
心臓、肝臓、中腸線なども、塩でよく揉み洗いします。繊維の柔らかい腸は、臭みが出るので使いません。
大ざっぱに刻んで、たっぷりの粗塩であえたら数時間おいて水分を流します。
そのまま水洗いをせずに、日本酒を浸る程度にしてまぶし合えます。
腹下の薄い身も塩で締めてから小口に刻んで入れると、噛みしめる脂から、うま味が滲み出ますね。
小瓶などに詰めて、ときどき振ってあげて2~3週間。
忘れたころに、うまい酒盗が出来上がっていることでしょう。
みりんや甘味料を添加したできあいの物や、料理書もありますが、塩と酒だけで醸(かも)された酒盗こそ本物。
ぜひ、自家製に挑戦してほしいです。