ブリ養殖をやっている水産会社に入社して、勉強しながら養殖法を覚えている新米漁師です。
先輩に教えてもらいながら経験を積んでいますが、「見て覚えろ」と言われることが多いので、自分でもネットや本を見ながら勉強しています。
養殖方法については作業を通じて学ぶことができるのですが、ブリの生態や習性についてはわからないことだらけです。
最近困っているのが、ブリの成長速度についてです。ブリはどれくらいの年月で成長するのか把握できていません。
今後のためにもちゃんとした知識を得ておきたいので、ブリの成長速度や養殖法について教えてください。
中平博史
全国海水養魚協会 専務理事
養殖ブリは1年で30cmほど成長!養殖する水温が成長速度を左右する
養殖ブリの成長速度とは
ブリは1年で30cmほど成長し、養殖魚の中でも比較的成長が早いとされています。
ブリは「出世魚」とも呼ばれており、稚魚から成魚までの成長段階によって呼び名が変わります。ブリの成長速度に伴った呼び名の関係は以下の通りです。
ブリの成長段階
ブリの大きさ
0年
20cm以下
モジャコ
モジャコ
モジャコ
0〜1年
20〜40cm
ワカシ
ツバス
コズクラ
1〜2年
40〜60cm
イナダ
ハマチ
フクラギ
2〜4年
60〜80cm
ワラサ
メジロ
ガンド
4〜5年
80cm以上
ブリ
ブリ
ブリ
ブリの体長が80cmを超えるためには4年ほどかかり、「ブリ」と呼ばれる状態まで成長するには、4年以上の歳月が必要であるといえます。
養殖期間を短くする方法についてはこちらをご覧ください
「ブリの養殖期間を短くして、早期出荷する方法を教えて ください」
養殖ブリの成長速度とエサの関係
養殖ブリの生理状態に合わせてエサの油脂や量を選択することで、ブリを効率よく育てられるといわれています。
ブリは季節によって脂質の利用方法を変えるため、ブリの身質は季節によって変化します。
夏のブリは脂肪分が少なく、ほっそりした体型が特徴です。身体に蓄積した脂質を、エネルギー源として積極的に利用するためといわれています。
一方、冬のブリは脂肪分が多く丸い体型を帯びています。 脂質を体脂肪として蓄積するためです。
養殖ブリのエサに使用する脂肪分の中でも、動物性の脂肪に含まれる「飽和脂肪酸」や、不飽和脂肪酸の1種である「一価不飽和脂肪酸」はエネルギーとして利用されやすく、DHAは身体に蓄積されやすいことが報告されています。
つまり、夏季の給餌には飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸、冬季にはマグロオイルなどの魚由来の油脂を与えるのが最適です。
季節に合わせて油脂や量を選択することで、ブリの成長の効率化や付加価値の向上なども期待できるでしょう。
養殖ブリの成長速度を遅くする要因
養殖ブリの成長速度は、水温によって左右されることが報告されています。ぶりの成長速度と水温との関係性は、以下の通りです。
0年魚の養殖ブリ
0年魚のブリの成長速度は、水温20度以上なら良好ですが、水温20度以下になると成長量が下降します。成長せずに体重が減少してしまうケースも発生するようです。
ただ、越冬後には水温の上昇とともに成長速度が回復します。水温20度以上になれば、成長はさらに促進されます。
1年魚の養殖ブリ
1年魚のブリは7〜12月までは比較的良好であり、12月の水温15〜20度の環境下でも成長速度は落ちません。
しかし、1~2月に水温14度以下となると体重が減少し、3月以降の水温上昇に伴って再び成長速度が良好となります。
2年魚の養殖ブリ
2年魚のブリは、8月以降の水温下降に伴い12月までの水温15度以上の環境では成長速度が良好になります。 12月においても、1年魚より成長速度は良好です。
ただ、水温14度以下になると摂餌が減り体重は減少します。水温14度以上になると、再び摂餌が増えて体重が増加します。
3年魚の養殖ブリ
3年魚のブリは、春先の産卵の影響で24〜29度の水温に対しては成長速度が落ちてしまいます。秋の水温16〜23度の状態が、きわめて良好な成長を示します。
また、水温15度以下の冬場でも体重がゆるく増加しますが、4月は春先の産卵の影響で体重が減少してしまいます。
水温の低下が成長速度を低下させることを確認できるため、ブリの飼育水温が成長に大きな影響を与えるといえるでしょう。
年数別の正しい養殖方法についてはこちらをご覧ください
「ブリの養殖で年数・年齢別に正しい育成方法を教えて」
このお悩みの監修者
中平博史
全国海水養魚協会 専務理事
全国海水養魚協会の専務理事や一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会の理事を務める、魚類養殖業のプロフェッショナル。養殖水産物の輸出や赤潮などの環境保全対策活動にも携わっている。