ブリ養殖を始めたばかりの新人漁師です。ブリは出世魚で年数(年齢)ごとにそれぞれ育成方法が違うようです。
しかし、新人なので何が違うのか理解できていません。先輩に聞いても「見て覚えろ」と言われるのですが、ちゃんと知っておきたいです。
ブリの年数ごとの特徴と正しい育て方を教えてください。
ブリ養殖を始めたばかりの新人漁師です。ブリは出世魚で年数(年齢)ごとにそれぞれ育成方法が違うようです。
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中平博史
全国海水養魚協会 専務理事
養殖ブリは年数により成長速度が違います。常に適正給餌を心がけましょう
ブリ養殖の年数とは
養殖ブリが市場に出荷されるのは4キロサイズ以上になってからで、そこまで成長するのにおよそ1年半~2年かかります。
1年目の4~5月ごろに稚魚であるモジャコを採捕して、ブリ養殖が始まり、2年目の秋ごろに4キロまで成長したブリから順次出荷されます。成長速度が早ければ、9月ごろに出荷サイズまで成長するものもいます。
こうしたサイクルの中で課題になっているのが、夏場の出荷です。夏場に出荷するには、3年目のブリを使用することになります。
しかし、ブリは3年目の春に卵を産む特性があり、産卵期後のブリは身質が不安定になります。
こうした課題を解決する上で注目されているのが、人工的に秋頃魚から採卵した卵をふ化させて育てる人工種苗です。
人工種苗を活用することで、夏場には2年魚の出荷が可能となり、より高品質なブリが年間を通して市場に供給できるようになります。
ブリの稚魚
ブリは2月ごろになると主に東シナ海で産卵します。そして、ふ化した仔魚(モジャコ)が1.5センチくらいになる4~5月ごろ、流れ藻について北上します。
ブリ養殖は、4~5月ごろにモジャコの採捕からスタートします。小型まき網やすくい網で流れ藻ごと巻き上げ、種苗となるのです。
その後、採捕したモジャコは選別を行いサイズを揃えてエサづけをします。この時使用されるエサは、イカナゴとエビ(アミ)を混ぜたミンチや完全配合飼料(ペレット)です。
エサづけは1日5~6回与えはじめ、その後、成長に従ってエサやりの回数を減らし、200グラムのころには1日1回となります。
稚魚の育て方についてはこちらをご覧ください
「ブリ養殖での稚魚の育て方を教えてください」
ブリ養殖の1年目(1年魚)
年魚は成長するに従って、エサの摂取量が増大します。また、成長に伴いエサの成分も変わっていきます。
以前はマイワシにビタミン剤を添加して与えていました。しかし、近年はMP(モイストペレット)やEP餌料などの配合飼料が主流となっています。
エサにビタミンやポリフェノールなど抗酸化作用のあるフルーツなどを混ぜることにより、高品質なブリを育てることができます。
順調に成長すると、1年目でおよそ2キロくらいまで成長します。
ブリ養殖の2年目~3年目(2年魚、3年魚)
2年魚になると、免疫力が強くなりだんだん病気にかかりにくく、大きく成長します。
成長に伴いエサの必要量も増加しますが、気をつけなければエサの与え過ぎやエサ不足です。
とくに、エサを与え過ぎると、残ったエサが海を汚したり魚が不健康になるので注意が必要です。
また、エサの量が増えると、ブリがエサを食べる際に酸素を消費したり、エサの食べかすやフンなどの有機物質が酸素を消費するため、酸素消費量も多くなります。
しかも、水温が高くなると溶剤酸素量(海水に溶け込んでいる酸素量)が低下するため、海水内の酸素量が少ない状態にあります。
生けす内の溶剤酸素量が低下した場合は、エサ止めをするなどの対策が必要です。
2~3キロの中間魚まで育ったころ、さらなる成長と成熟のために大きな生けすに移す漁師もいます。
大きな生けすに移すことで、豊富に運動するため身が締まります。
そして2年目の10月ごろには、4キロ以上のサイズになり出荷を迎えます。
冬のブリは脂を蓄えているので、最も市場のニーズが高まる時期です。
出荷はその後3年目となる4月まで続きますが、5月〜9月は3年魚のブリが産卵期を迎え身質が不安定になります。
2年目のブリも市場に好まれる4キロまで成長しないため、この時期は良質なブリを供給するのは、天然種苗では難しいでしょう。
このお悩みの監修者
中平博史
全国海水養魚協会 専務理事
全国海水養魚協会の専務理事や一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会の理事を務める、魚類養殖業のプロフェッショナル。養殖水産物の輸出や赤潮などの環境保全対策活動にも携わっている。