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ブリの養殖期間を短くして、早期出荷する方法を教えて ください

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ブリの養殖期間を短くして、早期出荷する方法を教えて ください

ブリ養殖をしているのですが、養殖期間を短縮することで、供給不足になる夏場に早期出荷を行っている養殖業者がいるそうです。

しかし、どのようにして短縮したりずらしているのかが分かりません。

どうやってブリ養殖の期間を短くするのか、方法を教えてください。

中平博史

全国海水養魚協会 専務理事

人工種苗の導入や産卵時期を早めることで早期出荷の実現が可能です

ブリの養殖期間


ブリの養殖は稚魚であるモジャコの採捕からスタートします。

ブリは主に東シナ海で産卵し、卵からふ化した仔魚が1.5センチくらいまで成長するとモジャコといわれるようになり、4~5月ごろ流れ藻について北上します。

こうして北上してきたモジャコを採捕するのです。

採捕したモジャコはエサ付けをして、沖合の生けすに入れておよそ4キロまで育てます。

ブリは成長が非常に速いのが特徴で1年半後の10月ごろには出荷に適したサイズまで成長します。

ブリの養殖技術は確立されていますが、養殖用の稚魚を入手するチャンスは年に1シーズンしかありません。

そのため九州や四国など、どこの地域でも同じ時期に養殖が開始され、需要期である翌年11月ごろから一斉に出荷され、市場に出回るようになります。

出荷は4月ごろまで続きますが、5月から9月は3年目のブリが産卵期を迎え身質が不安定になり、2年目のブリでは市場に好まれる4キロサイズまで届かないため、この時期は良質なブリを供給するのが、天然種苗では難しいのが課題となっています。

一般的なブリ養殖の方法や成長速度については、こちらの記事もご覧ください
ブリの養殖はどのように行われているのでしょうか?
ブリの成長速度はどのくらい?成長すると養殖方法は変わるの?



養殖ブリの早期出荷のメリット


ブリ養殖ではモジャコが採捕できる時期が限られているため、どの地域でも同じ時期に養殖がはじまり、同じ時期に出荷することになります。

そのため、供給不足となる夏場にブリを出荷することにより、高く売ることが可能になります。また、通常の期間より養殖時期をずらすことにより、産卵による減耗コストを削減することができます。

養殖ブリの早期出荷の事例


鹿児島県「早生鰤王」


鹿児島県長島町の東町漁協では、以前から赤潮被害に悩まされていました。

特に大きい魚ほど被害を受けやすいことから、リスクの高い3年魚の保有を減らし、3年魚主体だった夏場の出荷を2年魚で対応できるようにしました。

そのためには、通常9月から出荷する2年魚が7月の時点で市場に好まれる4キロサイズにまで育っていないといけません。

そこで、採捕したモジャコの中から大きいサイズの一番仔(いちばんこ/一回目の産卵で生まれた魚)だけを集めて、大きな稚魚を育成し、早期出荷用に育てたのです。こうして誕生したのが「早生鰤王」です。

「早生鰤王」は赤潮被害のリスク軽減のみならず、他にも多くのメリットを生んでいます。

例えば、産卵による減耗コストを削減することで、通常の育成期間よりも使用するエサが減り、コスト削減に繋がりました。

また、3年目の5~6月ごろに起こっていた産卵後の脂の乗りの低下や身割れといった肉質の低下を軽減することができました。

さらに、脂肪量やDHA、EPA含有量も3年魚を上回り、血合いもきれいで変色も遅く、夏場に刺身として販売できる新たなブリが誕生したのです。


鹿児島県「新星鰤王」


<東町漁協では、親魚から採卵しふ化して育てる人工種苗を導入しています。

これは、東町漁協が行っている1年間いつでも出荷できる体制(周年出荷)を安定させるために、7月以前からの出荷にも対応できるよう導入されました。

このように、人工種苗によって完全養殖で育てられたブリが「新星鰤王」です。

近年、ブリ養殖に欠かせないモジャコの漁獲量が低下していますが、人工種苗を導入することで天然資源に依存しない持続可能な養殖が可能となります。

また、早期種苗により、育成期間が短縮でき、効率化と品質の向上が図れます。

さらに、海外では「人工種苗」で育てられ、履歴管理された養殖魚が好まれる傾向にあります。


宮崎県「黒瀬ブリ」

宮崎県の黒瀬水産で生産されている「黒瀬ブリ」は、採卵から出荷まで一貫して育てた完全養殖の「若ブリ」を使うことで、夏の出荷を実現しています。

それを支えるのが採卵や養殖技術の進歩です。

優れた卵を選び出し、陸上水槽で光と温度を調整した結果、産卵時期を10月に早めることができました。

天然のモジャコから育てる通常の養殖サイクルから半年ほど前倒しでき、春から夏に質の高い「若ブリ」を出荷することが可能となったのです。

1尾の親ブリから数十万から数百万個の卵が取れますが、初期に死んでしまう率が高く、共食いなども起こるため、最終的に養殖場に出されるのは10%程度です。

人工種苗から育てる苦労は他にもあり、水温管理やエサとなるワムシの培養も大変です。水温は常時20度に保つ必要があり、エサとなるワムシは1日に10億個が必要となります。

このように、卵の段階から丁寧に育て、その後成長に応じて養殖場へと移していきます。

黒瀬水産では、こうした完全養殖と並行して天然のモジャコから育てる通常サイクルの養殖も同時に行っています。そうすることで、周年出荷を可能にしています。

完全養殖した若ブリは春先から夏までを受け持ち、秋以降は天然のモジャコから育てたブリに切り替えることで、1年間を通して高品質なブリを出荷できるのです。

このお悩みの監修者

中平博史

全国海水養魚協会 専務理事

全国海水養魚協会の専務理事や一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会の理事を務める、魚類養殖業のプロフェッショナル。養殖水産物の輸出や赤潮などの環境保全対策活動にも携わっている。

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