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ブリ養殖での稚魚の育て方を教えてください

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ブリ養殖での稚魚の育て方を教えてください

水産会社でブリ養殖を行っている漁師ですが、はじめて稚魚を育てる作業を任されることになりました。

これまでは先輩がメインで担当していた作業で、手伝ってはいたものの、全体の作業を把握しているわけではありません。

うちの会社にはマニュアルがなく、見て覚えろという教え方なので、不安でいっぱいです。

せめて全体的な流れを覚えておきたいので、ブリの稚魚の育て方や、育てる際に気をつけるポイントなどを教えてください。

中平博史

全国海水養魚協会 専務理事

モジャコを採取し、成長に合わせたエサを与えながら育てます

ブリの稚魚とは?


ブリは2月ごろから主に東シナ海で産卵します。卵から生まれた仔魚は体長3ミリほどで、1.5センチくらいまで成長すると、流れ藻について北上を始めます。

このような特性からブリの稚魚はモジャコ(藻雑魚)と呼ばれています。

モジャコは、外敵から身を守るために流れ藻の下に隠れながらプランクトンや小魚を食べ、少しずつ大きくなっていきます。

そして、体長が15センチほどになると、流れ藻を離れて沿岸の浅い場所に移動し、内湾や内海で完全な魚食性へと変わるまでしばらく生育します。


モジャコ漁


養殖魚の稚魚を「種苗」と言い、ブリの種苗は流れ藻について北上するモジャコを漁獲して使用します。ブリ養殖では、種苗のほとんどを天然のモジャコに依存しているため、モジャコの漁獲量によって生産量が決まります。

しかし、モジャコを乱獲することは、天然資源に影響を与える恐れがあるため、採捕尾数が制限されています。

モジャコの捕獲には県の「特別採捕許可」を必要とし、国内での採捕計画は関係都道府県の会議で協議を行い、各都道府県に割り当てられています。

そして、県が漁協を通じて申請のあった各採捕漁業者に割り当てます。

モジャコ漁は、例年4~5月ごろに行われていますが、主な漁場は九州や四国周辺の海域です。小型まき網やすくい網で流れ藻ごと巻き上げ、生かしたまま持ち帰り、種苗となるのです。

モジャコの採取からブリを養殖する方法はこちらをご覧ください
ブリの養殖はどのように行われているのでしょうか?


ブリの稚魚へのエサづけ


ブリ養殖で日本一の生産量を誇る鹿児島県の東町漁協では、以前、モジャコのエサとしてイカナゴとエビ(アミ)を混ぜたミンチを餌として与えていました。

ミンチは、小骨が残らないように2~3回擦り、液状にしたものです。

しかし、近年では完全配合飼料(ペレット)も使用されており、魚の大きさに応じて粉状のものから成長とともに徐々に大きくしていきます。

エサづけは、最初は1日5~6回与え、その後、成長に従ってエサやりの回数を減らしていき、200グラムくらいのサイズになると1日1回程度エサづけを行います。


ブリの稚魚へのワクチン接種


ブリの病気に対して、治療から予防へと対応が変わってきました。そのため、モジャコにワクチンを接種させる必要があります。

1974年に九州や四国の一部の養殖場で発生した「α溶血性レンサ球菌症」は、翌年には日本各地の養殖場へ蔓延し、大きな被害をもたらしました。

1997年には経口ワクチンが市販され、2000年にはより効果の高い注射ワクチンが普及したことで被害は減少しましたが、病気自体がなくなったわけではありません。

新たな株(1型から2型への変更等)ワクチンの効果が弱まり、現在でも養殖ブリの疾病の中で最も経済的被害が大きく、令和元年の推定被害額はおよそ16.5億円にのぼります。

魚病の発生を未然に防ぎ、不要な投薬を避けるためにもワクチン接種は必要不可欠です。ワクチンは水産用医薬品のため、国から認可されたワクチンを薬事法に基づいた用法・用量を守って与えましょう。

ブリ養殖で使用する抗生物質にはこちらをご覧ください
ブリ養殖で使用される抗生物質について知りたい


モジャコの人工種苗


人工種苗とは、人間の手で親魚から採卵し、ふ化して生まれた稚魚(モジャコ)のことです。

ブリ養殖は、天然の種苗(モジャコ)に依存しているため、漁獲時期や漁獲量が制限され、好不漁の影響で供給が安定しないという問題があります。

これらの問題に対して、人工種苗を活用すれば年間を通して安定的に種苗を入手することができます。

また、天然資源に影響を与えず環境負荷も少ないため、持続可能性があります。

さらに、採卵から出荷までの履歴を残せることや、有用な形質を持った個体同士をかけあわせる選抜育種などにより、付加価値の高いブリを育てられるなどのメリットもあるのです。

しかし、人工種苗の供給量は天然種苗の10~15%程度にとどまっており、施設や技術の面から供給量を急増することは難しいのが現状です。

今後、人工種苗(育種)の研究が進み、持続可能でより付加価値の高い養殖ブリの生産が期待されています。

ブリの人工種苗についてはこちらの記事をご覧ください
ブリの養殖期間を短くして、早期出荷する方法を教えて ください

このお悩みの監修者

中平博史

全国海水養魚協会 専務理事

全国海水養魚協会の専務理事や一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会の理事を務める、魚類養殖業のプロフェッショナル。養殖水産物の輸出や赤潮などの環境保全対策活動にも携わっている。

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