サツマイモ農家になり5年ほどになりますが、最近、病害の被害に合うことが多くなってきました。
対処をするために、地域のサツマイモ農家さんからアドバイスをもらっていますが、その中で「サツマイモの黒斑病を見つけるのは難しく、貯蔵時に気づかないまま発病してしまうと、大きな被害になってしまう」と聞きました。
事前に対処したいのですが、農家さんに聞いてみても、人によって言うことが違うので、何が正しいのかわかりません。
防除するためになにをすればいいのか、また収穫後の貯蔵中に発病を防ぐ方法などを教えてください。
山川 理
山川アグリコンサルツ代表、農学博士
サツマイモの黒斑病は黒い斑点が現れます。健全な根塊の種芋を選び、消毒やキュアリング処理で防止を
黒斑病が発生する原因・症状
サツマイモの黒斑病は、糸状菌(かび)の一種である「セラトシスティス菌」により引き起こされます。
ハリガネムシ(コメツキムシ幼虫)やコガネムシの幼虫などの害虫やネズミに食害された傷口から病原菌が侵入することで発病します。
発病初期には下葉が黄色くなり、塊根に緑を帯びた黒褐色の斑点ができます。
さらに病気が進むと黒色がより強くなって広がり、表面が円形にくぼみ、かびを生じて腐敗します。
病斑は焦げ臭いにおいがします。
収穫時に少しでも発病の疑いがあれば要注意で、仮に外観上は健全な塊根であっても、貯蔵中に発病してしまう可能性があります。
栽培時に黒斑病を防除するポイント
病気に感染していない健全な塊根を種芋として選び、さらに温湯消毒(47~48℃で40分間)あるいは農薬で消毒してから用いることで防ぐことができます。
苗の場合は、苗の基部約10cmを47~48℃の温湯に15分浸すか、農薬の希釈液に決められた時間漬けておきます。
定植前には害虫被害を防ぐために殺菌効果のあるクロルピクリン剤とマルチ被覆によって土壌消毒を行います。
貯蔵時に黒斑病を防除するポイント
貯蔵中での発病を防止するには、「キュアリング処理」を行うのが一番です。
キュアリングとは、傷口にコルク層(表皮に代わる表面の保護組織)ができるような自然治癒方法で、貯蔵中の腐敗を防止します。
具体的には収納庫内の温度を30~33度、湿度90~95%にして3~4日寝かせます。
そして、速やかに放熱した後に、13~14度の適温に調節して貯蔵する方法です。
キュアリング処理の方法を紹介している動画をご紹介します。
黒あざ病との違い
サツマイモは、糸状菌の一種である「モニロケーテス菌」によって引き起こされる「黒あざ病」があります。
塊根の表面に淡黒色から黒色の不定形のアザのような病斑が生じます。
見た目の症状は黒斑病に似ていますが、病斑は表面のみで、内部には影響がなく腐敗もしません。
黒斑病が発生した場合の対処法
収穫の時点で黒い斑点を見つけた場合、すぐに黒斑病かどうかを確認します。
被害を受けている株は速やかにすべて処分し、残渣(ざんさ)をすき込んで残りかすをなくしてから土壌消毒を行います。
使用した道具などもしっかり消毒してください。
さらに土壌内の病原菌を低減させるためにトウモロコシなどを植えて輪作(同じ土地に別の性質の作物を交代に栽培すること)することも必要です。
黒斑病以外の病害についてはこちらをご覧ください
「サツマイモの主な病気が知りたい!原因も教えて」
「サツマイモ基腐病の発生原因と防除方法 を教えて」
「サツマイモの病気を葉の症状から見つけられますか?」
「サツマイモの根(塊根)から病気を確認するポイントは?」
このお悩みの監修者
山川 理
山川アグリコンサルツ代表、農学博士
京都大学農学部卒、農学博士。農林省九州農業試験場では、サツマイモやイチゴの新品種を多数育成。1996年日本育種学会賞。1998年農林水産大臣賞。山川アグリコンサルツ代表として、食品関連企業の顧問や地域の活性化アドバイザーとして活躍。千葉大学園芸学部非常勤講師。『サツマイモの世界 世界のサツマイモ: 新たな食文化のはじまり』など著書多数。