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定置網のイワシ漁の時期が知りたい

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定置網のイワシ漁の時期が知りたい

以前、漁業体験のツアーに参加して、定置網船に乗せてもらったことがあるのですが、その際にイワシがたくさん取れて感動しました。

その時の体験が忘れられず、思い切って脱サラし、漁師になろうと考えています。

漁師になるのであれば、志すキッカケになったイワシの定置網船に乗って経験を積みたいと考えていますが、イワシ漁が行われる時期はいつ頃なのでしょうか?

その時期に合わせて、今後のスケジュールを進めていきたいと考えています。

時村宗春

公益財団法人 海外漁業協力財団 技術顧問

定置網のイワシ漁の時期は、地域や種類によって異なります

イワシ漁の時期


日本で流通しているイワシには、主に「マイワシ」「カタクチイワシ」「ウルメイワシ」「シラス(主にカタクチイワシの幼魚)」の4種類がありますが、「シラス」は定置網で漁獲されないため、3種の漁獲時期をご紹介します。

イワシは、種類により旬の季節が異なるので、以下で魚種ごとに説明します。


マイワシの漁獲時期


令和3年度のマイワシ太平洋系群の資源評価によると、マイワシは沖縄以外のすべての地域(三重県以東での漁獲が6〜9割)で漁獲できるため、漁の期間が長くなっています。

定置網漁だけの漁獲量ではありませんが、2021年の「水産物流通調査」によると、マイワシがもっとも漁獲される時期は6月(76,911トン)で、この月は千葉県の銚子漁港(39,273トン)が最大の漁獲量を誇ります。

マイワシは1年を通して漁獲されていますが、月別では5月61,724トン、6月76,911トン、7月は73,687トンと推移し、9月から54,793トン、10月67,513トンと、秋までたくさんのマイワシが獲れます。

1〜2月には、岩手県の釜石漁港や大船渡漁港、三重県の奈屋浦漁港、大分県鶴見漁港、島根県浜田漁港でマイワシの漁獲量が多くなります。

徐々に漁獲量が多くなってくる3〜5月になると、東北から中部にかけての太平洋側地域で漁獲量が上がり、宮城県女川漁港、塩釜漁港、福島県小名浜漁港、茨城県大津漁港、波崎漁港、千葉県銚子漁港、静岡県沼津漁港、焼津漁港、長崎県佐世保漁港、松浦漁港において、1年でもっとも多くマイワシが漁獲される時期になります。

年間でもっとも漁獲量が多い6〜8月には、北海道根室漁港、青森県八戸漁港、宮城県石巻漁港、愛媛県愛南(深浦)漁港、宮崎県北浦漁港、鳥取県境漁港、山口県下関漁港など、多くの漁港で盛漁期を迎えます。

この時期は、北からの親潮と南からの黒潮が関東沖でぶつかることで、イワシのエサとなるプランクトンが豊富な環境になります。

また、この頃は産卵を終えたイワシが栄養を求めて、たくさんのエサを食べて脂を蓄えます。そのため、脂がのった大きいサイズのイワシがよく獲れるのです。

この梅雨の時期のマイワシは「入梅いわし」と呼ばれています。

9〜10月になると、北海道釧路漁港、宮城県気仙沼漁港、長崎県長崎漁港や鹿児島枕崎漁港でマイワシが漁獲される時期になり、全体の漁獲量が減少していく11〜12月には、北海道歯舞漁港、岩手県宮古漁港で漁獲されています。

地域別マイワシがもっとも漁獲される時期

1月

釜石漁港  

大船渡漁港 

鶴見漁港   



2月

奈屋浦漁港

浜田漁港




3月

女川漁港

塩釜漁港

大津漁港

波崎漁港  

沼津漁港  

4月

佐世保漁港

松浦漁港




5月

小名浜漁港

銚子漁港

焼津漁港



6月

石巻漁港

北浦漁港

愛南(深浦)漁港

境漁港


7月

根室漁港

八戸漁港




8月

下関漁港





9月

長崎漁港





10月

釧路漁港

気仙沼漁港

枕崎漁港



11月

歯舞漁港  

                            
12月

宮古漁港  

                          

2021年「水産物流通調査」

カタクチイワシの漁獲時期


コイワシと呼ばれることもあるカタクチイワシは、北海道から九州南部の沿岸で漁獲されますが、現在は、太平洋側では太平洋中区(千葉県~三重県)のなかでも東海地方(神奈川県~三重県)の漁獲が、対馬暖流側では東シナ海区(福岡~鹿児島)の漁獲が主体になっています。

カタクチイワシは初夏から秋にかけてが旬といわれ、広島県ではこの時期の「小いわしの刺身」が有名です。また、三浦半島の定置網ではカツオ一本釣りの撒き餌(活き餌)としても有名です。

カタクチイワシの漁獲がもっとも多い時期は、2021年の「水産物流通調査」によると9月(2,220トン)です。この月にもっとも漁獲量が多いのは鳥取県の境漁港で、1,746トンが水揚げされています。

日本全体の漁獲量としては、6月(1,080トン)から徐々に増え始め、7月1,436トン、8月931トン、そして9月にピークを迎え、10月1,307と推移します。その後、冬の間は漁獲量が少なくなりますが、2月には1,395トン、3月には1,781トンと再び増加します。

地域別では、1月は漁獲量が少ない時期になりますが、3月になると、愛媛県愛南(深浦)漁港、長崎県松浦漁港、長崎漁港、佐世保漁港でカタクチイワシの漁獲量が多くなります。

4〜6月には三重県奈屋浦漁港、千葉県銚子漁港、静岡県沼津漁港、宮崎県北浦漁港でもっとも漁獲量が多い時期になり、7月は大分県鶴見漁港で盛漁期になります。

9〜11月には、青森県八戸漁港、宮城県女川漁港、石巻漁港、鳥取県境漁港、鹿児島県枕崎漁港で漁獲量が多くなりますが、12月には再び漁獲量が少なくなります。

地域別カタクチイワシがもっとも漁獲される時期

1月



2月





3月

愛南(深浦)漁港

松浦漁港   

長崎漁港   

佐世保漁港  

4月





5月

奈屋浦漁港




6月

沼津漁港

北浦漁港

銚子漁港


7月

鶴見漁港




8月





9月

境漁港




10月

石巻漁港




11月

女川漁港   

枕崎漁港   

              

12月





2021年「水産物流通調査」

ウルメイワシの漁獲時期


ウルメイワシは西日本側に主な産地が集中し、通年漁獲されています。その中でも、10月から2月頃の冬場のウルメイワシは、脂がのりやすく、市場での人気が高くなります。

2021年の「水産物流通調査」によると、もっとも漁獲されている時期は10月(5,831トン)で、10月に漁獲がもっとも多いのは宮崎県北浦漁港で2,972トン漁獲されています。

全体としては、6月(4,254トン)より漁獲量が増え始め、7月は4,968トン、8月は(6,127トン)、9月は(7,615トン)と推移し、10月にピークを迎えます。

1〜4月は漁獲が少ない時期になりますが、島根県の浜田漁港ではもっとも漁獲量が多い時期になり、徐々に漁獲量が多くなる5〜7月には、福岡県福岡漁港、長崎県松浦漁港で漁獲が多い時期になります。

夏に獲れるウルメイワシは脂が少なく、多くが干物として流通しています。

徐々に漁獲量が増える8〜10月は、千葉県銚子漁港、三重県奈屋浦漁港、愛媛県愛南(深浦)漁港、大分県鶴見漁港、佐賀県唐津漁港、鹿児島県枕崎漁港で漁獲が多くなります。

そして岩手県大船渡漁港、静岡県沼津漁港、宮崎県北浦漁港、島根県境漁港では、11〜12月が年間を通してもっともウルメイワシが獲れる時期になります。

漁港別ウルメイワシがもっとも漁獲される時期

1月




2月






3月

浜田漁港





4月






5月

福岡漁港





6月

松浦漁港





7月






8月






9月

銚子漁港





10月

奈屋浦漁港  

愛南(深浦)漁港

鶴見漁港   

唐津漁港   

枕崎漁港   

11月

大船渡漁港  

沼津漁港   

北浦漁港   

              

12月

境漁港





2021年「水産物流通調査」

イワシ漁は1年中、全国で行われているため、定置網漁師に興味を持っている方は、漁業会社や漁業協同組合(漁協)、一般社団法人 日本定置網漁業協会や全国漁業協同組合連合会などに相談してみましょう。

このお悩みの監修者

時村宗春

公益財団法人 海外漁業協力財団 技術顧問

元独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所長。農学博士。日本の漁業・水産関連の研究だけでなく『韓国の漁業』『東シナ海・黄海の魚類誌』など、東アジアの水産関連の著書も執筆。現在は、太平洋島嶼国等を対象とした漁業支援や研修等を担当。

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