イワシ漁の網の種類について教えてください

イワシ漁には主にまき網や船びき網、定置網が使われています

イワシ漁の主な漁法

イワシには、マイワシ､カタクチイワシ、ウルメイワシ、シラス（大部分はカタクチイワシの稚幼魚）などがあります。

令和3年の「漁業・養殖業生産統計」よると、マイワシは全体で68万2千トンのうち、まき網が大部分（53万5千トン）、次いで定置網（10万1千トン）で漁獲されていて、この2つの漁法が大部分を占めます。

カタクチイワシは全体で11万７千トンのうち､まき網（5万7千トン）と船びき網（パッチ網など）（4万9千トン）が主体で、他にも定置網で8千トン漁獲しています。

ウルメイワシは全体で7万3千トンのうち、まき網（6万9千トン）が大部分ですが、定置網でも漁獲(2千トン)され、和歌山県では棒受網で、本種が高く評価される高知県では多鈎釣でも漁獲されています。

シラスは全体で6万9千トンで、そのほとんどが船びき網（パッチ網など）で漁獲されています。

他にも「敷網漁」や「地びき網漁」「流し刺網漁」などをする漁師もいますが、イワシは群れを成して泳いでいるため、一度にたくさんのイワシを漁獲できる漁法が用いられています。

イワシの産地として有名な千葉県の九十九里では、以前、イワシの地びき網漁が有名でしたが、今ではほとんどがまき網を中心とした漁を行っています。

まき網（巾着網）

イワシの漁獲方法の中で、漁獲量が最も多いのはまき網漁です。

まき網漁は、探索船、運搬船、網船など、それぞれに役割を持った船が2〜6隻で船団を組み、大型から中型の網を円形に広げて、海の表層や中層上部にいるイワシを群れごと包み込むようにして獲ります。

イワシの群れを網で囲むと、イワシが逃げ出さないように、網の底を巾着のようにしぼって囲みを小さくします。このことから、巾着網と呼んでいる漁師もいます。

まき網漁は、イワシなど大群で回遊する魚を漁獲する方法としては効率がよく、一度に大量に獲ることができます。

定置網

イワシの定置網は、沿岸を回遊して移動するイワシの通り道に網を仕掛けて魚を獲る方法です。季節ごとに潮の流れを読んで、網の設置場所を決めます。

定置網は基本的に垣網部と身網部に役割が分かれ、垣網がイワシを身網に導入する仕組みになっています。

魚の入網状況を見て1日1～2回身網の一部をあげて魚を獲ります。

船びき網（パッチ網）

船びき網は、2隻の網船と1隻の運搬船、1隻の魚探船が1組になって操業します。

漁場に到着すると、2隻の網船で袋状になった網をひきます。この袋がももひきに似ていることからパッチ網と呼んでいる地域もあります。

漁獲対象となる魚種は主にマイワシ、カタクチイワシ、イワシの稚仔魚であるシラスです。漁獲対象の魚種により、網目の大きさを変えています。

日の出から操業をはじめ、魚群探知機で魚群を探し、１日4～5回網をひきます。

ひき船は常時網をひき、運搬船は１回のひき網毎にイワシを取り上げて港まで運びながら操業を続けます。

地びき網

地びき網は、千葉県銚子市にある「九十九里海岸」で行われているものが有名です。かつて九十九里海岸の砂浜には、イワシ漁に使われた長大な網が干される風景が広がっていました。

2隻の船で長さ2キロもの長大な網を広げ、浜では100名を超える人々が網を引き上げ、イワシを浜に積み上げるという大地びき網漁が繰り広げられました。

しかし現在では、人手が必要で生産性がよくないこともあり、ほとんどが船団での漁法に変わり、全国的にも地びき網を行っている漁師は少ないのが現状です。