脱サラをして草生栽培で幸水や豊水、新高などの梨を栽培しています。
昨年、開花時に晩霜にあい、雌しべが黒変する被害が発生しました。
もともと冷気が溜まりやすい窪地にある梨園で、防霜ファンやスプリンクラーの施設もないので、深夜から明け方にかけて一斗缶で灯油を燃やしましたが、あまり効果がありませんでした。
今年は4月が高温で推移していたので問題はなかったのですが、最近は温暖化の影響で開花が早まってきているので、今後も晩霜の被害が心配です。
防霜ファンもスプリンクラーもない梨園だと、どのように防霜対策をすれば良いのでしょうか?
(栃木県・石川進一さん/仮名・30代)
橋本哲弥
橋本梨園
梨の防霜対策の基本は未然に防ぐこと、防災網の展開や防霜剤を用いることで被害を最小限に抑えましょう
残念ながら遅霜による被害痕は基本的に治りません。
ただ被害の程度次第では、それなりに見られる外観に生長することがあります。
目安についてはリンクを紹介しますので、そちらをご参照の上摘果をしてください。
防霜対策の基本は霜害に遭わないようにすることです。
おっしゃるとおり防霜ファン、スプリンクラー(散水氷結法)、燃焼剤の使用が一般的ですが、設備や資材のない場合でも様々な対策を講じることができます。
1、防災網の展開と防風網の巻き上げ
防災網で梨園の天井を覆うことで放射冷却を防ぐことができ、園内の気温が0.5℃程度上昇するという調査結果があります。
また外周を覆う防風網を巻き上げることで、冷気を貯めずに逃がすことができます。
斜面などに畑がある場合は、逆に冷気が上方から流れ込んでくるので、上方は防風網を閉じて、下方は開けておくとよいでしょう。
2、下草を短く刈る
地面を丈の長い草が覆っていると、日中の地温の上昇や夜間の土壌からの放熱が妨げられ、園内の気温が下がってしまいます。
草生栽培の場合は下草を低く刈り込んだり、春先だけ清耕栽培にしてください。
稲わら等でマルチをする場合も凍霜害の危険期を過ぎてからおこなうようにしてください。
3、防霜剤を用いる
防霜剤を前日にSS等で散布することで被害を防ぎます。
何種類か販売されており、防霜の機構は各剤によって異なるため、詳しくはメーカーなどの商品紹介ページやカタログをご参照ください。
各地で取扱商品も異なりますので、JA等でまずは取り扱いがあるか確認してみてください。
上記の方法は一つ一つでは効果は小さいですが、複数組合わせることでより効果を高めることができます。
また燃焼法などの対策と組み合わせも大変有効で、防霜ファン+多目的防災網+燃焼法の組み合わせは昇温効果が高く、果実の被害を最小限に抑えることができるという調査結果があります。
ご質問者は防霜ファンの設置はないとのことですので、多目的防災網+燃焼法を試してみてはいかがでしょうか。
あまり効果がなかった燃焼法も力を発揮するかもしれません。
▼令和4年度の防霜対策(果 樹)
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/504972.pdf
▼ニホンナシ(果樹類)における晩霜対策の実用性評価
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/new_technology_cultivar/2015/attach/pdf/list-18.pdf
▼ニホンナシ園における防霜ファン、多目的防災網および燃焼資材の組合せによる防霜効果
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010902401.pdf