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胴枯病に感染しないための予防や、罹患してしまった時はどう対策すべき?

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胴枯病に感染しないための予防や、罹患してしまった時はどう対策すべき?

地元の福島に昨年Uターンし、実家の畑を継ぎました。桃、梨などの果樹を中心に育てています。

栽培について知識不足のまま現場に入ってしまったので、作業しながら勉強する日々です。

最近近くの県で胴枯病発生が確認された影響で、地域でも注意喚起がありました。

胴枯病にどのような対策が必要かを教えていただけないでしょうか。

李 哲揆

データサイエンティスト

胴枯病対策には保護剤塗布や畑の環境改善を 感染部の処理も確実に

胴枯病とは


胴枯病の症状や被害例


胴枯病は木の枝や幹を侵す病害です。

苗木から成木まで広い範囲で発生します。

初期症状としては、枝や木の感染した部位の樹皮に赤褐色や紫褐色の特徴的な病斑が現れます。

症状は細い枝では枝枯れ、太い枝や幹では褐色〜赤褐色の陥没した病斑が見られます。

発見や対処が遅れると、他の部分への感染や内部への進行が起こり、最悪の場合、果樹全体が枯れてしまいます。

また果実にも被害を及ぼし、収量の低下、内部が腐敗し空洞になることによる品質の低下も引き起こします。


胴枯病の被害を受ける植物


胴枯病の被害を受ける植物は多岐にわたります。

日本ではこれまで、梨や柿、桃、栗、イチジク、リンゴなどに被害が見られました。

特に梨や柿では深刻な病害として報告されています。

果樹のほか庭木や造林用樹木で発生することもあり、サクラやモミジ、クワ、ポプラ、カシ、プラタナス、カラマツなどにも発生リスクがある病害です。

梨の胴枯病対策についてはこちらをご覧ください
梨が胴枯病に。どう見極めてどう防ぐ?症状や対策を教えて



胴枯病の原因


胴枯病の病原菌は糸状菌(しじょうきん)で、これはいわゆるカビのことです。

害虫による食害、剪定による切り口、強風、水割れ、凍害により樹皮や枝に傷がつくと、病原菌が侵入し発症します。


胴枯病に有効な薬剤はない


現在のところ胴枯病に有効な薬剤はないため、一度感染してしまうと治癒することができません。

したがって胴枯病は予防が第一です。発生しにくい環境を整えた上で、栽培に取り組みましょう。


果樹の胴枯病予防策


以上を踏まえて、果樹で胴枯病を防ぐために重視すべき4つのポイントを説明します。

1、剪定後のケア


剪定によって枝の切断面が増えると、それだけ原因菌が侵入するリスクが増えます。

そのため枝を切った直後の切り口全体に、しっかりと「癒合(ゆごう)促進剤」を塗布してください。

木にとっての傷口を保護し、迅速な回復をうながしましょう。

具体的な癒合促進剤としては、「トップジンMペースト」や「バッチレート」「ベフラン塗布剤」、マシン油で希釈した「ベンレート」などがよく使われます。


2、排水不良なほ場の改善


ほ場が排水不良で根が傷んでいる場合は、胴枯病をはじめさまざまな病気が発生しやすくなります。

適度な冠水や施肥を心がけながら樹勢を適正に保ちましょう。

また、排水用の溝を設置するなどで、土壌に水がたまりにくいよう改善しましょう。


3、害虫対策


害虫対策も欠かせません。虫の食害で木に傷口ができるのを防ぎましょう。

定期的に木を観察し、見つけたらすぐに駆除してください。

特に注意が必要なのが、ナシホソガ、カイガラムシ、ガの幼虫、シンクイムシなどです。

定期的な薬剤散布や捕獲トラップ設置など物理的対策によって、発生・拡大を最小限に抑えることが大切です。


4、凍害対策


寒い冬には、梨の樹皮が凍ることにより亀裂が生じる可能性があります。

凍害リスク軽減のため、冬の剪定では強く刈り込みすぎないようにしましょう。

また低温期を迎える前にアルミシートやわらを木に巻いたり、根元に敷いて対策をする農家もあります。

また特に先に述べた胴枯病にかかりやすい品種の剪定作業は、寒い時期からずらして、春先に行うとよいでしょう。


胴枯病が発生したら、迅速かつ適切に除去を


最後に胴枯病が発生してしまったときの対処法についてまとめました。

胴枯病に感染した場合、早期発見と迅速な対処が最も重要です。

病斑の削り取り


病斑を発見したら、すぐに削り取るようにしましょう。

この削り取り治療は形成層をなるべく傷つけないように、病斑部を浅く広めに削り、前述の塗布剤を塗っておきましょう。


枝や部位はすぐに切除


胴枯病の発生を認めた際は、その枝や部位を迅速に切り除きましょう。

そして切り離したものはすぐに畑の外に持ち出してください。

発見が遅れれば被害は一気に拡大するため、日頃からよく果樹の様子を観察し、早期発見・対処することが大事です。


切り落とした感染部の処理方法


発病部位をそのまま野外に放置してしまうと、病原菌の温床となり周辺へ感染してしまいます。

切り落としたものは袋に入れて密閉した上で焼却するか、地域のルールにしたがって廃棄してください。

除去後の枝や幹の表面には、しっかりと保護剤を塗って、再び病原菌が入ることのないよう注意を払いましょう。

さらに切除に使った剪定バサミなども消毒し、道具を介した二次感染を起こさないよう十分に配慮してください。

このお悩みの監修者

李 哲揆

データサイエンティスト

名古屋大学大学院生命農学研究科にて博士(農学)を取得。東北大学、東京大学、理化学研究所などを経て、2018年からは東京農工大学生物応用システム科学府にて助教を務める。主な研究テーマは土壌微生物を用いた環境に優しい農法の開発。2021年4月から民間企業でデータサイエンティストとして働く。

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