先代がビワ栽培をしており、継承することになりました。
私は事業の拡大も考えており、今あるビワをさらに増やすため、台木となる苗木を育てています。
ある程度育ったところで接ぎ木をしたいのですが、初めてひとりで挑戦するので、ちょっと不安に感じています。
ビワの苗木の繁殖方法はどうすればいいのでしょうか?
先代がビワ栽培をしており、継承することになりました。
私は事業の拡大も考えており、今あるビワをさらに増やすため、台木となる苗木を育てています。
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前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
ビワの繁殖には苗木の育成と植付けがポイントです!
ビワの繁殖と苗木
ビワの繁殖には、接ぎ木による栄養繁殖が一般的です。
接ぎ木とは、ビワ樹の芽や枝を切り取って、他の樹の枝などにつなぎ合わせることです。
接ぐ方の芽や枝などをつぎ穂または穂木、接がれる方の根のある株を台木(だいき)と呼びます。
接ぎ木は果樹栽培では古くから一般的な繁殖方法で、果実などに優れた形質を持った個体を強い根を持った個体に接いで、優良な株(苗木)が作れるという利点があります。
このように、果樹は台木と穂木の複合体として生育しています。
ビワ接ぎ木苗のメリット
・着果、収穫までの年数の短縮
・品種の特性が維持される
・効率的な繁殖と収穫量の増加
ビワ接ぎ木苗のデメリット
・購入すると価格が高い
・台木の育成、接ぎ木に時間と技術を要する
ビワ果樹の増やし方についてはこちらをご覧ください
「ビワを種から栽培するのは現実的?繁殖はどうすべき?」
ビワ苗木の育成
ビワ苗木は購入することもできますが、営利栽培を前提とするなら接ぎ木による苗木の育成が望ましいです。
ビワの接ぎ木に適した時期は3月で、台木の樹液が上がりすぎると接ぎ木部に水がたまり、穂木が腐敗するため、それまでの時期が良いでしょう。
台木の育成
ビワの接ぎ木の台木には、接ぎ木が可能な太さ(直径1.5cm以上)となる2~3年以上のビワの木(実生)を使います。
ビワの完熟した果実から中粒以上の種子を取り出し播種します。
乾燥しない程度に潅水すれば、約1ヶ月ほどで発芽します。
プランターなどに種をまいた場合は、播種から約3ヶ月をめどに鉢上げし、育成します。
ただし、発芽するまでは病気に感染しやすいので、注意深く観察しておきましょう。
接ぎ穂の準備
繁殖させたいビワの樹から2~3芽付いた枝を8cm程度にそろえ、接ぎ穂の準備をします。
接ぎ穂の基部を斜めに3cm程度表面を削ります。
接ぎ穂を裏返して基部から1cm程度を斜め45度に切り落とします。
この時のポイントはよく切れるナイフを使い、接ぎ穂の削った部分を凸凹のないように真っ直ぐに切ることです。
接ぎ木の方法
台木は地上10cmくらいの高さで水平に切ります。
次に、水平に切った切断面の一ケ所の角を少し削り、(樹)皮部と木質部の境(黄緑色の形成層部分)がよく見えるようにします。
その後、木質部を少しつけて約3cmほど切り下げます。
接ぎ穂と台木の形成層を片側だけ密着させます(本来、両側を密着させた方が生育は良好ですが、穂木と台木の太さが異なるため、片方だけしか密着できないことがほとんどです)。
この時、穂木の削った先端と、台木の切り込みの一番末端を完全に密着させることがポイントです。
その後、接ぎ穂が乾かないように、また、水が入らないように接ぎ木テープでしっかり固定します。
この際、接ぎ穂と台木のすき間を埋めるように巻きます。台木から芽が出てきたときは早めにかき取ります。
ビワ苗木の植付け
ビワ苗木の植付けは、春(3月〜4月)または秋(10月)に行います。
ビワは、温帯南部から亜熱帯地域に原生(自生)分布しており、低温に弱いので、冬でも日が当たる温かい場所に植えるのがポイントです。
水はけの良い場所に、深さと幅が40~50cmの植え穴を掘ります。
深植えしないように接ぎ木部は必ず地上部に出し、苗の根をできるだけ広げて配置し、土と根が密着するようにたっぷりと潅水します。
ビワの木は浅根性なので、苗木を植える際は、支柱で支えると良いでしょう。
このお悩みの監修者
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。