今は違う仕事に就いていますが、時間を見つけては果樹農家である両親の仕事を手伝っています。
いずれは農家を継ごうと考えていますが、先日隣の農家さんが廃業するというので、その畑を借りないかという話をもらいました。
両親は梨をメインに育てていますが、もし畑を借りるのであれば、自分が引き継いで、ビワを育てたいと考えています。
しかし、梨の栽培で行っている袋かけ作業が大変で、人手がギリギリな中、ビワでも同じ作業をしなければならないと思うと、人手が足りなくなるのではないかと心配になります。
ビワで無袋栽培はできないのでしょうか?
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
品質の良いビワを収穫するなら袋掛けは必須です!
なぜビワに袋かけをするのか?
ビワは果樹の中では比較的病虫害に強く、薬剤散布の少ない種類と言えますが、ビワ栽培では袋かけの作業がとても重要です。
袋かけは、鳥や病害虫の食害防除、風雨からの果面の保護、熟期の促進が主な目的です。
ビワの無袋栽培は、リンゴや梨のように有袋栽培と比べて糖度は高い傾向を示しますが、病虫害被害や果面が傷ついたり、果皮が厚くなったりし、秀品果率は著しく低くなる傾向にあります。
また、果実の剝皮が難しく食べにくくなるので、現在も無袋栽培は現実的ではありません。
デメリットとしては、ビワ栽培における袋かけには多大な労力が必要となることから、規模拡大を図ることを困難にしている点があげられます。
ビワの袋かけをする時期
ビワの袋かけは、摘果と同時に行うのが一般的です。
ビワの幼果は少しの低温でも寒害に遭う可能性があるので、着花が少ない樹ではあまり早めに摘果するのは控えた方が良いでしょう。
そこで摘果の時期は寒害の心配のなくなる3月頃から始めて、4月下旬には終えるようにします。
摘果、袋かけでは事前に果実を観察し、低温被害の程度、着果位置等を確認することも重要です。
摘果の方法についてはこちらをご覧ください
「ビワ栽培における摘果のポイントとは?」
ビワの袋かけ方法とポイント
摘房・摘蕾をしたままでは実が多く付きすぎているため、摘果を行うのと同時にビワ専用の袋をかけていきます。
摘果の程度は「茂木」では1果房当たり3~5果、「田中」では1果房当たり1〜3果を標準として、弱い結果枝は1果とします。
摘果は傷果、病害虫被害果、寒害被害果、発育の悪い小果、かたまって着果しているものを除くようにします。
残す果実は発育が進んで大きく緑色の濃いもの、細長いものよりやや丸いものとし、袋をかけやすいように適当な間隔をあけて、小果梗に1果になるようにします。
ビワの袋掛けの順序とポイント
1.袋に付いている止め金を外して袋の口をふくらませて、果実にかぶせます。
2.袋の口を絞るようにして折りたたみます。
3.虫や水が入らないように、折りたたんだ袋の口を止め金でしっかりと巻きつけます。
4.袋の底部を舟形に整えて、内部に空間ができるように整えます。
摘果と袋かけの作業時は、指サックや手袋などで手を保護すると良いでしょう。
ビワの袋かけの「袋」について
ビワの袋かけには、市販のビワ用かけ袋を用いるのが良いでしょう。
特殊なクラフト紙に撥水材を処理することで風雨を防ぐ効果があります。
粒かけ用と房かけ用など異なるサイズが用意され、止め金の付いたものが一般的です。
このお悩みの監修者
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。