長らく耕作していない圃場の空きスペースで、果樹の栽培を検討しています。
そのうち、ビワを検討していますが、夏場は繫忙期になるので、収穫の時期が重なることは避けたいと思っています。
そこで、ビワの収穫から出荷までの大まか時期を教えていただきたいです。
もし繁忙期が被らないようであれば、栽培管理を立ててみようと考えています。
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前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
ビワの一般的な収穫時期は5月から6月にかけて
ビワの特徴と栽培スケジュール
ビワは東アジアの温帯南部から亜熱帯にかけてが原産の果樹で、その野生種は中国や日本に広く分布しています。
ビワは冬期に花が咲くので寒害を受けやすく、栽培適地は年間平均気温が15℃以上、冬季の最低気温が-3℃以上の地域とされており、日本での主な産地は長崎県と千葉県が有名です。
露地作型における年間の栽培スケジュールの目安は以下のとおりです。
1月~2月
(晩生系統の)摘房、摘蕾
2月~3月
施肥
3月~4月
植付け、植替え、 摘果、袋かけ
5月~6月
収穫、施肥
8月~9月
整枝、剪定、施肥
10月~12月
(早生系統の)摘房、摘蕾
ビワの収穫時期
ビワは露地(ハウス栽培ではない外で)の作型では5月から6月にかけてが熟期ですが、同一品種であっても場所や年によって熟期は変動します。
「長崎早生」「福原早生」などの早熟種は、暖地で栽培した場合や暖冬の年や寒害を受けない場所では露地においても3月下旬から着色をはじめ、4月下旬から収穫できる年もあります。
「茂木」「田中」「大房」など中・晩生種の熟期は5月下旬から6月中旬にかけてが収穫適期となります。
ただし、栽培地域によっては、少し時期が前後します。
果樹の熟期は開花後の気温に影響されます。ビワの収穫期は4月下旬の平均気温との関係が深く、「茂木」種の収穫は、4月下旬の平均気温が18℃以上あると5月から、17℃以下だと6月が熟期となるようです。
また日中の気温が25℃前後に達すると着色が始まり、こうした気温に早く達する年では果実は小さいまま着色するようです。
収穫時と出荷時における注意点
完熟期をむかえたビワの味が最も良いですが、果皮が薄くデリケートなので収穫、出荷、流通の過程で傷みやすくなります。
8分着色ぐらいで収穫した果実は糖度、酸含量ともに低く味も落ちます。
このような早期収穫果は3〜7日放置すると、着色は進み酸含量は減りますが、糖度が上がらないので味は良くなりません。
そのため9分着色程度での収穫、出荷となるよう注意が必要です。
このお悩みの監修者
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。