定置網をするにはどんな漁船が必要ですか？

YUIME Japan編集部 / 2022.10.27

漁具・船具

#定置網 #沿岸 #沖合

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漁師になりたいと思い続けて、ようやく脱サラして漁師の見習いになることが決まりました。

まずは定置網漁船に乗りますが、将来は独立して自分で定置網をやろうと考えています。

働きながら独立のための準備を進めていこうと考えていますが、一番気になるのは漁船です。

費用もかかりますし、きちんと情報収集をしておきたいので、落し網を使って定置網漁を行う場合の漁船の大きさや設備などを教えてください。

石戸谷博範

海と定置網の研究室

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10～19GT(総トン数)規模の船が一般的です

定置網の漁船を選ぶポイント

漁具を定置（固定）して行う漁業のことを「定置網漁」と言い、大半の定置網は、陸から数百m～5kmほど離れた場所に設置します。

日本の漁業法では、水深27m以上の海域に設置されるものを大型定置網と定義しています。

また、27m未満の海域に設置されるものを小型定置網と定義します。

定置網漁を行う漁船を選ぶ上で重要なポイントは「操業性」と「航行性」の両方を兼ね備え、「安全性」が確保されていることです。

操業性については、作業を行える船上スペースがあるか、船上で網の規模に合ったマリンクレーンの作業範囲が確保できているか、船倉への積載段階で選別が可能かという点がポイントとなります。

また、定置網漁においては、陸から数百メートル～5kmほどのところに網が設置されるものの、基地港・漁場・水揚港が離れていると、移動に時間が奪われるため、航行性も重要なポイントになります。

小型底定置網についてはこちらをご覧ください
「小型底定置網に興味があるので、どんな漁法なのか知りたいです」

定置網漁船に必要な設備

使用する網や漁法により多少異なりますが、定置網を行う漁船に必要な基本設備を紹介します。

ウインチ（キャプスタン）

船舶において錨鎖やロープを巻き上げるために水平ないし垂直に回転する装置です。

これを使用して定置網のロープをたぐります。

キャッチホーラー

2個の空気入り球形ゴムタイヤで網やロープを挟み、引き上げる空気バネを利用した揚網機です。

網などの漁具を痛めず連続で引き上げることができます。

マリンクレーン

網にかかった魚を引き揚げる「すくい網」を吊り下げるためのクレーンです。

イケス

獲った魚は港までイケス(魚倉)に入れられます。

魚の鮮度管理のために水温計を設置している漁船もあります。

エンジンと油圧装置

漁船の走行だけでなく、設備を動かす際に使用する動力としてエンジンと油圧装置が必要です。

その他

他にも、クラゲ対策の機材「大型クラゲクラッシャーポンプ」を搭載している船もあります。

網に掛かったクラゲを吸い込み、網の外に排出する機械で、網に掛かった魚がクラゲによって傷つかないようにしています。

定置網漁船の大きさと目安の価格

新造船と中古船で価格は大きく異なりますが、新造船の場合、数千万円～2億円という価格帯になります。

船体価格はトン当たり76万円といわれており、エンジンが1000万円前後、さらに魚群探知機やレーダー、更にマリンクレーンなどの機材費用も加わります。

中古の場合、タダ同然のものから、大きさによっては数千万円と価格は一概に決まっていません。

ただし、船体に異常がないように見えてもエンジンや機器類、配管・配線に異常がある場合もあるため、故障するリスクや修理費を見込んだ上で、購入することをおすすめします。

定置網漁船の進化

桝網漁は1～2GT（総トン数）規模の小型船でも操業可能ですが、落とし網漁の場合は全国的に10～19GT規模の大きさの船が大半です。

船の大きさについてはそこまで違いがないものの、搭載するマリンクレーンを1基ではなく3基を備えるような船もあり、魚の鮮度保持のために、網締めや水揚げ作業が行えるよう工夫されている船もあります。

さらに、定置網にユビキタス魚探を設置すれば、分からなかった網の中の状況が、自宅で判断できる機器もあります。

定置網漁は環境保全型の漁業として注目されているため、今後も新しい機械や船が開発されるかもしれません。