新規就農してまだ数年ですが、今年新たに夏野菜を栽培しようと思い、ナスの露地栽培に挑戦中です。
現在は育苗している最中ですが、畑作りの作業について知りたいことがあります。
この後、ナスの苗を畑に植え付けていくことになりますが、畝の立て方がイマイチどのようにすればいいのかわかりません。
ネットで調べてみても、家庭菜園向けの情報しか得ることができず、畝の幅や高さ、平畝か高畝どちらにすべきかなど、農家向けの情報に辿り着けません。
どのように畝を立てるべきなのか、営農目的の場合、注意すべきことはあるかなど、畝の立て方について教えていただけませんか?
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
畝立てはナスを定植する数日前に行い、南北畝で栽培しましょう
ナスの畝立て栽培のメリット
植物を地面に直に植えるのに対し、畝立てして栽培するのには3つのメリットがあります。
まず1つ目は、栽培場所と通路とが分かれるので、全体的な栽培作業がしやすくなること。
次に、畝は通路より高いため水はけや通気性が良くなります。
最後に、植物にとってもベッドの役割を果たし、畝を作ることで日当たりを確保し根を伸ばしやすくなります。
ナスの苗を、より大きく成長させ、効率的に実を収穫するために、畝に沿って植え替えます。
ナス栽培で畝を立てる時期、必要な道具
畝を立てるタイミング
畝を立てるのは、一般的に、ナスの苗を畑に植え替える(=定植する)数日前に行い、適期の良い条件で定植するようにしましょう。
定植する時期の目安は、地温15度以上となる5月頃です。ナスはインド原産で寒さに弱いので、暖かくなってから植えましょう。
晩春から初夏の季節には、昼間よく晴れていたのに夜に冷え込んで、明け方に霜が降りるような日があります。
晩霜(おそじも・ばんそう)と呼ばれる現象ですが、ナスの苗は霜害に弱いため、早すぎる定植は禁物です。
畝立てに必要な資材
小規模な圃場を手作業で済ませるのであれば、畝の間隔や高さを測るためのメジャー、地面を掘るためのスコップ(シャベル)・クワ、整地のためのレーキが必要になります。
規模が大きい場合や作業の効率化を図りたいときは、手押しタイプの耕運機や乗用トラクターで畝立てをすることも可能です。
ナス栽培での畝の立て方
続いて、畝の立て方の前に「条」について説明します。
「条(じょう)」とは、作物を植え付ける列のことです。
1つの畝でナスの株を1列に植える場合は「1条植え」、2列に植える場合は「2条植え」と呼びます。
1条植えと2条植えとでは、栽培するのに必要な畝の幅が変わります。
ここでは1条植えの畑を例に、畝の立て方を解説します。
ナスを育てる畝の幅は「90センチ以上」が基本です。
根や葉の広がりを考慮して、1株あたり前後60センチを確保する必要があるためです。
支柱の立て方とも関連するので、「何条植えにして」「支柱は何本で(どのような形で)仕立てるか」も計画し、最適な幅を算出しましょう。
畝の幅は、60センチという農家もあれば、120センチという農家もあります。
作業がしやすい通路幅を30センチ以上取ることと、畑全体の大きさなどを考慮して、畝の幅を決めると良いでしょう。
高さは10センチほどが目安です。あまり高い畝にすると乾燥しやすくなるので、気をつけましょう。
後述しますが、水はけが悪かったり、地下水位の高い土地では、高畝で栽培する方法もあります。
地面を掘って、幅や高さが決めた大きさになるよう、土を盛って寄せていきます。
正確に間隔を保つため、支柱や紐を用意して、四隅に支柱などを立てて紐を張り、高さを決めてから土を紐の内側に寄せていく、という農家もいます。
ナス畑作りのポイント
平畝と高畝、ナス栽培におすすめなのはどっち?
畝には高さによって「平畝」と呼ばれるものと「高畝」と呼ばれるものがあります。
平畝の高さは5~15センチ、高畝の高さは20~30センチほどです。
畝を高くすると土の表面積が増えるので、日光がよく当たり、水はけがよくなります。
作物にもよりますが、もともと排水性の悪い土地では高畝栽培が適しているでしょう。
平畝は畝立てに必要な労力が高畝に比べて少ないほか、高さを出さなくてもよい分、畝立てをしやすいというメリットがあります。
その反面、地面は乾燥しづらいため排水性が悪い土壌には向きません。
ナスは平畝でも栽培可能ですが、高さを決めるには、水はけなど圃場の条件を確認して判断してください。
また、インドが原産で暑い時期によく成長するナスの栽培には、排水だけでなく地温の管理が非常に重要です。
栽培・収穫期間が長い野菜なので、地温を高く保ち乾燥を防ぐために、ビニールなどでマルチを張って管理するのも一案です。
マルチを張る場合、使用するシートのサイズも想定したうえで畝の幅や高さを決めましょう。
畝を立てるときの注意点
平畝と高畝の他に、畝には「南北畝」と「東西畝」があります。
文字通り南北方向に立てるのが「南北畝」、東西方向に立てるのが「東西畝」です。
午前中は東から、午後は西から日が当たるので、一般的な平地にある畑では南北畝を立てて栽培するのがおすすめです。
東西畝で栽培すると、日当たりが一方に偏り、畝の後方に植えた株ほど生育が妨げられる、といった事態が起こります。
また、連作障害が起こりやすい作物なので、直前の3~4年間はナス科の植物(トマト・ナス・ピーマンなど)を育てていなかった場所に畝を立てましょう。
畝を立てる以外の作業についてはこちらをご覧ください
「ナス栽培では季節ごとにどのような作業が必要?」
このお悩みの監修者
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。