新たにナス栽培を始めるのですが、農薬をできる限り使用したくありません。
コンパニオンプランツを使えば程度効果を発揮するという話を聞き、うちでも導入してみようかと考えています。
しかし、これまでコンパニオンプランツを使った経験はなく、どうすればいいのかわかりません。
ナスに適したコンパニオンプランツにはどのような種類があるのでしょうか?
また反対に、ナスの近くで栽培するには向いていない品目についても教えてもらいたいです。
新たにナス栽培を始めるのですが、農薬をできる限り使用したくありません。
コンパニオンプランツを使えば程度効果を発揮するという話を聞き、うちでも導入してみようかと考えています。
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前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
ナスの減農薬栽培には、多くのコンパニオンプランツが活用できます
コンパニオンプランツとは?
最初に、「コンパニオンプランツ」の基本について確認しておきましょう。
「コンパニオンプランツ」は、野菜など栽培したいある植物に対して、近くに植えることで互いに良い影響を及ぼし合う別の植物のことや、その組み合わせを指す言葉です。
ある植物を単体で育てるよりも、コンパニオンプランツを一緒に育てることで、病害虫が広がるのを防いだり、成長を促進したりするというメリットがあります。
日本語では「共栄作物」や「共生作物」と表現されることもあります。ざっくりと「植物には相性のいい植物がある」と認識しておいても良いでしょう。
逆に「相性の悪い」組み合わせも存在しますので、栽培を始める前に、必ず確認しておきましょう。
コンパニオンプランツは、農薬をできるだけ減らして栽培したい農家などでよく活用されています。
ナス栽培で注意すべき害虫についてはこちらをご覧ください
「ナスによく発生する虫の種類や防除方法は?」
ナス栽培におすすめのコンパニオンプランツ
ナスはナス科で、トマトやピーマン、ジャガイモなども同じナス科に分類されます。コンパニオンプランツを理解するには、「栽培する植物が何科で、他の科にはどんな植物が属するのか」を知っておくと便利です。
なすのコンパニオンプランツとしては、主に以下の5種類の植物がおすすめです。
(1)ヒガンバナ科(ネギ、ニラなど)
※ヒガンバナ科は、以前ユリ科に含まれていました。1998年に被子植物の新しい分類体系APG体系が公表され、ヒガンバナ科と言われています。したがって、これらはネット等で検索するとユリ科としてもでてきます。
(2) マメ科(枝豆、落花生など)
(3) シソ科(シソ、バジルなど)
(4) セリ科(パセリなど)
(5) ナスタチウム、マリーゴールド
それぞれの特徴やポイントについて説明します。
ヒガンバナ科(ネギ、ニラなど)
ナス(ナス科ナス属)とネギやニラ、にんにくなどは「ヒガンバナ科ネギ属」に分類されます。
ネギ属の植物の根には「拮抗菌(きっこうきん)」と呼ばれるいわゆる植物の病気を予防する善玉菌が生息しています。
ネギやニラをナス科やウリ科の作物と同じ場所に植えると、ネギ属植物の根が張っている土壌にいる微生物が拮抗菌を土壌の中に出します。
結果的に、ナスに多い病気である「青枯病」などの病原菌を減らす効果があります。
ナスの根と、ネギやニラの根が近ければ近いほど高い効果が期待できます。
マメ科(エダマメ、ラッカセイなど)
マメ科とナス科は、相性が良い植物の組み合わせです。
マメ科の植物の根には根粒菌(こんりゅうきん)、菌根菌(きんこんきん)という微生物が共生しています。
根粒菌は、空気中の窒素を取り込んで、植物の生育に欠かせない窒素化合物であるアンモニアに変換する働きがあります。この働きのことを「窒素固定(ちっそこてい)」と呼びます。
また、菌根菌はリン酸を吸収しやすくする効果を持っています。リン酸も窒素と同様に「肥料の3大要素」に含まれる、植物にとって必須の栄養素です。
これらの微生物の働きにより、特にナス科やウリ科の野菜は、マメ科の植物を一緒に混ぜて植えることで、生育が良くなることが知られています。
マメ科には、エダマメ、ラッカセイ、インゲン、大豆などがあります。
シソ科(シソ、バジルなど)
シソ科の葉野菜は独特の強い香りで、テントウムシダマシ類やアブラムシなどの害虫を遠ざける効果を持ちます。
また、ナスの間にシソなどを植え、葉が茂り地表に影を作ることで、土壌の乾燥を防ぎます。
ただし、葉や茎で過繁茂にならないよう、植えるときには適度な間隔を保つ必要があります。
シソ科の植物には、シソ、バジル、エゴマなどがあります。
セリ科(パセリなど)
セリ科の植物も香りが強く、害虫を遠ざけます。特にパセリはナスと相性が良く、互いに生育に良い影響を及ぼします。
ナスはパセリを食害するキアゲハを遠ざけます。パセリは日陰を好むので、なすの成長とともに葉や茎の陰でよく育ち、お互い干渉しません。
また、根元に一緒に植えると、土壌を乾燥させない点もなすの栽培にはメリットです。
パセリのほかのセリ科の植物には、ニンジン、セリ、セロリ、ミツバなどがあります。
ナスタチウム、マリーゴールド
ナスタチウムは「キンレンカ」とも呼ばれる南米産の植物で、ハスのような丸い葉と金色の花を付けます。
主に観賞用で栽培されていますが、エディブルフラワー(=食べられる花)としても知られています。
ナスタチウムを植えると、テントウムシなど害虫の天敵である「益虫」を呼ぶことにつながります。同じ虫の力で、害虫からの被害を抑制するのです。
マリーゴールドも主に花を観賞用に栽培される植物です。匂いで一部の害虫を遠ざけるほか、土壌中のセンチュウ類を減らす効果を持っています。
センチュウはなすに限らず、多くの農作物に被害をもたらす害虫です。
ナス科は同じ場所で栽培を続けるとセンチュウが発生しやすくなる性質がありますので、センチュウ被害を防ぐためにも、株の間や畝の横にマリーゴールドを植えておくのがおすすめです。
ナスの近くでの栽培は避けたほうがいい植物
ナス科とウリ科の植物は、互いに土壌にセンチュウ類を増やして生育に悪影響を及ぼす可能性があるので、近くでの栽培は避けたほうが良いでしょう。
ウリ科にはキュウリ、スイカ、カボチャ、ズッキーニなどがあります。
また、成長すると草丈が高くなるトウモロコシは、ナスに光が当たらなくなるので、一緒に植えないでください。
ナスの後作に、同じナス科の野菜を栽培すると、病気にかかりやすくなったり、生育が悪くなるので、別の科の作物を植えましょう。
センチュウ類に弱いニンジン、ダイコン、ゴボウなどの根菜類も、ナスの後作だと生育不良につながるので避けたほうが無難です。