いま新規就農をしようと準備をすすめていますが、まずは年に数回収穫できるアスパラガスを生産してみたいと考えています。
アスパラであれば、自分ひとりで栽培できますし、出荷するタイミングで収入があるので、経営も安定するのではないかと思います。
しかし、肝心のアスパラガスを育てた経験がなく、まったくの初心者です。
一応、育てかたについては把握したつもりなのですが、実際に育ててみたらトラブルが発生するのではないかと不安に感じています。
まずは露地栽培ではじめようと考えていますが、初心者が注意すべき栽培のポイントを教えてください。
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
アスパラガスは長年同じ畑で育てるため、土壌の排水性を確認しましょう
アスパラガスの特性
アスパラガス栽培は、一回植え付けた株を何年も管理しながら育て続けるため、土壌を適正に管理して、株が持つ力を維持、向上させていく必要があります。
通常は5〜6年くらいで成株(成長のピークに達した株)になり、そこから10~15年ほどは収量を維持できます。
成株になった後は少しずつ収量や品質が低下するため、10年ほど育てた後は更新する必要があります。
露地栽培方法についてはこちらをご覧ください
「アスパラガスは露地栽培でどう育てればいい?」
初心者がアスパラ栽培を失敗しないためのポイント
初心者が失敗しないために注意したいポイントは、畑の土壌条件です。
アスパラガスは一度株を植え付けると何年も同じ畑で栽培し続けることになるため、畑の土壌条件が重要です。
アスパラガスは深根性(深く根を伸ばす性質)のため、貯蔵根を深く、広く伸ばします。
そのため、土の深いところまで通気性や排水性をよくする必要があります。
植え付ける前には、土壌分析を行いましょう。
通気性や排水性
植え付け予定の畑の排水性を見るために、まず、大雨のあと、その畑に行って水が溜まっていないか確認しましょう。
元々、水田であったところや地下水位が高いところなどは、水が溜まりやすいです。
そのようなところでは、まず、畑に排水溝(明渠)を掘りましょう。
その上で、水が畑の外に流れるか確認して下さい。可能な限り、畑に水が溜まらないように心がけましょう。
畝を10センチで立てる場合、露地栽培では60センチ、ハウス栽培であれば40センチ以内に地下水が出てくるようであれば、対策が必要です(つまり、露地栽培で60cmほど、ハウス栽培で40cmほど掘ると水(地下水)が出てくるような畑では、対策が必要です)。
再度お伝えしますが、アスパラガスの栽培においては土壌の状態が大切です。
肥沃な土壌で根をしっかり生長させ、株を充実させることが、品質の良いアスパラガスを栽培する大前提になります。
植え付けの2週間前には肥料をたっぷり与えて土壌環境を整えましょう。
栽培に適した土壌条件についてはこちらをご覧ください
「アスパラガスを栽培するための土づくりのポイントは?」
このお悩みの監修者
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。