化成肥料を使いアスパラガスを栽培していますが、土壌分析をしたところ窒素が不足していました。
先輩農家に相談してみたところ「鶏糞を使うといい」と教えてもらったのですが、本当に効果があるのでしょうか?
アスパラガス栽培に鶏糞を使うと、どんな効果があるのか教えてください。
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前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
アスパラガス栽培での鶏糞は、元肥としても追肥としても使えます
鶏糞の成分
鶏糞は値段が安いわりに、植物の成長に必要な窒素(2~5%)、リン酸(2~4%)、カリウム(1.5~3%)がバランスよく含まれており、カルシウムなども含まれています。
肥料の効果としては、牛糞や豚糞に比べて窒素量が多いのが特徴です。
また、牛糞や豚糞のC/N比(炭素率)が15前後であるのに対し、鶏糞は5~8と低いことから炭素の量が少なく、地中で分解されやすいです。
注意点として、鶏糞は「堆肥」に分類されますが、土中の腐植質を増やすことや、土質を改善する効果はあまり期待できません。
そのため、他の堆肥(牛糞、豚糞など)や有機物(ワラ、もみ殻など)と組み合わせて使うのがおすすめです。
アスパラガス栽培で鶏糞を施肥する時期
鶏糞は施用すると牛糞や豚糞と比較して、かなり早く窒素分の効き目が現れますが、効果が薄れるのも早いです。
アスパラガス栽培の場合、窒素の吸収量は生育初期の時期に増加します。
そのため、3〜4月ごろに元肥として与えましょう。
追肥として使う場合は、春どりの普通栽培では収穫後(7月頃)、夏秋どりや長期どりの場合は、7月頃と8月に毎月1回ただし、鶏糞は窒素分が多いので、与えすぎには注意しましょう。
アスパラガス栽培での鶏糞の注意点
鶏糞は、大きく分けて「乾燥鶏糞」と「発酵鶏糞」があります。
乾燥鶏糞は単純に乾燥させたもので、比較的早く効く窒素肥料として使用されています。
ただし糞を乾燥しただけの資材なので、施用後、土の中でガスが発生し、作物の根を傷めることがあります。
そのため、元肥として使う時は作付けの1ケ月以上前に施用し、追肥として使う時は株から少し離して、根に触れないように施用しましょう。
一方、発酵鶏糞は乾燥させながら微生物の働きで堆肥化したものです。ガスは少ないものの、乾燥鶏糞に比べると窒素分は少なくなります。
また、投入しすぎるとリン酸やカリ成分が過多になり、畑に溜まってしまうので注意が必要です。
さらに、鶏糞の保管に関しても注意が必要です。
乾燥鶏糞でも発酵鶏糞でも、保管している袋に雨水が入ると、ベトベトになり、異臭が発生します。保管時には水が浸入しないように注意しましょう。
栽培に適した土壌条件についてはこちらをご覧ください
「アスパラガスを栽培するための土づくりのポイントは?」
このお悩みの監修者
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。