ブリを養殖していますが、現在相場が高値で推移しているようです。しかし、相場が低下することもありますし、漁獲量の増減で推移しているわけではない気がします。
いつかは独立したいので、相場の変動について理解しておきたいのですが、養殖ブリの相場は何が原因で決まるのでしょうか?変動する理由を教えてください。
ブリを養殖していますが、現在相場が高値で推移しているようです。しかし、相場が低下することもありますし、漁獲量の増減で推移しているわけではない気がします。
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中平博史
全国海水養魚協会 専務理事
ブリの相場は出荷量や2年前の種苗により変動します
養殖ブリの相場
天然ブリは季節によって相場が大きく変わりますが、養殖ブリは年間を通してそれほど相場は変化しません。
東京都中央卸売市場「市場統計情報」によると、養殖ブリは2013年1月から2016年8月までの価格の振れ幅(最大値と最小値の差額)が590円なのに対し、天然ブリは1,011円でした。
このように、養殖ブリの価格は天然ブリに比べて安定しています。
東京都中央卸売市場の1月の平均卸売価格を比較すると、2021年が859円であるのに対し、2022年は1,543円であり、1年間で684円上昇しています。
さらに、2022年は1月以降、10カ月連続で前年を上回っており、高値が続いています。
本来であれば、8月ごろに最高値になり、その後値が下がりはじめ、冬場の年明けごろに最低値となります。しかし、2021年は冬場になっても値が下がらず高値で推移しました。
高値が続いている原因は、コロナ禍の影響による在地量の減少や餌料の高騰、資材の高騰、燃料代の高騰などが考えられます。
養殖ブリの相場が変動する理由
コロナ禍やコストの高騰により相場が変動することはありますが、通常は需給バランスで決まります。出荷量が少なく需要が高まる夏に上昇し、出荷量が増える冬場に下落します。
2011年は在地量が多く、夏の卸売市場への出荷量が過去2年間の夏に比べて増加しました。すると、相場が上昇せず、前年の冬と同じ水準にとどまり、翌冬に出荷量が増加するとそのまま単価が低下し続けました。
一方、2013年の在地量は少なく、前年より卸売市場への出荷量が減少しました。すると、単価も2010年の水準まで上昇し、回復しました。
このように、需給バランス(出荷量)が養殖ブリの相場に影響を与えていることが分かります。
相場に対応すること
養殖ブリの単価は卸売市場への出荷量(需要量)と相関関係がありますが、もう一つ単価に影響を与えるものがあります。それが種苗の量です。
養殖ブリの単価は、2年前に養殖し始めた種苗の総量と関係しており、種苗を多く養殖すると2年後には価格が減少します。
これは、ブリ養殖の育成期間が2年ほどであるため、種苗の量を多くすると、2年後の生産量も多くなり、その結果価格が低迷すると考えられます。
また、2020年に新型コロナウイルスが流行し、ブリの需要が激減しました。その結果、在地量が多くなりイケスに余裕がなくなったため、養殖業者はモジャコ(種苗)の池入れ量を抑えたのです。
そして生産量が少なくなり、2021年から高値相場が続いているのです。
このように、ブリ養殖の経営を計画的に行うには、販売先を確保し、相場を把握して、2年後の需要を見据えて種苗の導入量を検討することが重要です。
このお悩みの監修者
中平博史
全国海水養魚協会 専務理事
全国海水養魚協会の専務理事や一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会の理事を務める、魚類養殖業のプロフェッショナル。養殖水産物の輸出や赤潮などの環境保全対策活動にも携わっている。