栽培した野菜や山菜を使って漬物(醤油漬けの瓶詰めなど)を個人で製造し、直売所で販売しています。
加工は納屋を改造して最低限の施設でやってきました。
昨年、地元の保健所から「食品衛生法が改定され、加工品を製造・販売している場合は営業の届出が必要になる」と言われました。
そのため、県の食品衛生協会が主催する講習を受けて、食品衛生責任者になりました。
その際、「今後はHACCP(ハサップ)の考え方で衛生管理をしっかりと行うように」と保健所から指導を受けました。
現状の施設ではとてもHACCPの基準を満たすことはできず、早急に衛生管理基準を満たした施設に改修しないと営業が続けられなくなります。
漬物の製造・販売している場合は、3年間(令和6年5月31日まで)の経過措置が設けられていますが、それまでに何とか施設を改修しなければなりません。
ただ、自己資金では厳しいため、施設の改修・整備を支援してくれる補助金や融資制度があれば利用したいです。
(長野県・伊藤吾郎さん/仮名・50代)
田中耕一
田中耕一税理士・中小企業診断士事務所
HACCPの導入には、一定の条件はありますが、補助金や貸付制度があります
食の安全に対する気運が高まる現在、HACCPの導入は時代の流れです。
HACCPは事業者にとっては負担が増加する問題ですが、これを追い風と考え、新たな付加価値を付けて販売する戦略をご検討いただくよい機会になるかと思います。
施設の改修・整備を支援してくれる補助金としては、国内市場に向けた販売のためのHACCPの施設整備については、現在のところ直接的な国の補助金は見当たらないようです。
もしかすると地方自治体によってはあるかもしれませんので、お住いの県または市町村のWebサイトでご確認ください。
一方、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」(通称:ものづくり補助金)であれば、条件は厳しいものの、一定の要件に該当すれば補助金を受けることができるかもしれません。
一度「ものづくり補助金総合サイト」のWebサイトをご確認ください。
公募が行われていない時期もありますが、今後も募集されることが予想されます。情報収集に努め、早めの準備を行ってください。
なお、輸出向けの製造であれば、「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業」(画期的補助金HACCPハード事業)があります。
名前の通り輸出向けの食品製造事業者が対象で、交付額は250万円から5億円、交付率は1/2または3/10です。
一定の要件がありますので、農林水産省のWebサイトでご確認ください。
融資制度としては、「食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法」(通称:ハサップ支援法)が、日本政策金融公庫からの資金貸付けについて規定を設けています。
この条文を受けて、日本政策金融公庫の農林水産事業では、HACCPを導入して製造過程の管理の高度化を促進する事業(高度化事業)、およびHACCP導入の前段階の衛生・品質管理等のための事業(高度化基盤整備事業)を行うために必要な施設整備を支援する「HACCP資金」を取り扱っています。
この資金については同公庫に一度ご相談ください。