福井県で代々続く、漁師の家の出身です。
後継者不足と漁村存続に対し、かなりの危機感を持っています。
かつては、漁師の子息が跡を継ぐのが当たり前でしたが、それも遠い昔の話。
自分もその渦中にいるのですが、「家業を継いでもらいたくとも、漁を取り巻く環境が厳しいので難しい」のが現状です。
それでも何とか守っていきたいと、わらにもすがる思いです。
こちらは何もない漁村ですが、豊かな自然や食は自慢できます。
また、コロナ禍により、生活や働き方を見直し郊外へ移住する都会の方が増えているようです。
休業を強いられたり、解雇や雇い止めにあったりする方もいるかもしれません。
その中で、現役を引退した漁師、田舎暮らしを検討している方などに、漁業に携わっていただけないものかと考えます。
今風に言えば「ワークシェアリング」でしょうか。
兼業でもパートでも、無理のない範囲から最初の一歩を踏み出せば、次の展開が見つかることもあると思います。
とにかく人に来てもらわないことには未来がありません!
(福井県・伊崎毅さん/仮名・54歳)
馬場 治
東京海洋大学名誉教授
ビジネス経験者は引退後も戦力になる。受け入れ側にもマニュアルが必要です
いわゆる現役を引退した方々を受け入れている地域はあります。都心でバリバリ働いてきたビジネスマンが、定年退職後に地元で何か働けないかと考えて、できる範囲の漁業の手伝いに入るというケースがあるのです。
そうした場合、問題になるのは受け入れる漁業者側の対応のあり方です。来ていただく方々はまったくの素人ですので、そのことを前提に考えないといけません。
素人が漁船に乗るときに注意すべき安全上のポイント、作業上でのポイントなどがありますが、「見て覚えろ」という態度は厳禁です。
文書や的確な口頭説明で伝える必要があります。ビジネスの世界で経験を積んできた方なら、そのような指導のほうが伝わりやすいでしょう。
また、都会を離れて地方に来られた方は、まずは地域になじむことが大事です。その地域への憧れもあるはずですから、その土地の良さをより理解しようとし、地元に溶け込むため漁業などの地元の産業の手伝いをしてみようと考える方がいるかもしれません。
いずれにしても、最初は多くを期待せず、徐々に慣れてもらうくらいの気持ちで接してみてはいかがでしょうか。円滑に進めるためには、来る方にも受け入れる方にも、一定のマニュアル化は必要です。