お見合いパーティーで出会った3代続く兼業農家の夫に嫁いで、今年で3年になります。
夫は会社勤めをしていて、私は高齢になった義父母の畑と義父母に借りた夫の畑で農作業を手伝いながら主婦をしてきました。
これまで私は農作業をどれだけ頑張ろうと「家族を助けたい」という気持ちから手伝っていたために、特に賃金はもらってきませんでした。
しかし念願の子供を授かったため「妊娠中はできる限り畑に出て、出産したら早めに子供を預けてまた畑に出たい」と思っていたのに、役場の子育て関係の担当課に事前相談に行ったところ、「畑を手伝っていても実際には収入の振込実態がないので、無職であるとみなされる可能性が高い。そうなると幼稚園は午前中だけ・保育園でも時短保育になるかもしれない」というのです。
義父母は高齢であまり無理がきかないため、私はなるべく朝夕に畑を手伝いたいのですが、これでは乳児を連れて畑に出ることになってしまいます。
役場では、地域ぐるみで育児を互助する制度として「ファミリーサポート」があると聞きましたが、それ以外にも何か使えるサービスはないでしょうか。
とはいえ、高額なサービスは使えないのですが…。
(群馬県・益子さん/仮名・30代)
福田いずみ
(一社)JA共済総合研究所 調査研究部 主任研究員
自治体の「一時預かり」の利用も検討して。一部地域ではJAも組合員向けに同様の事業を開始しています
子供の預け先には、幼稚園や保育所のほかにも「地域子ども・子育て支援事業」として、質問者さまがおっしゃる「ファミリーサポートセンター事業」や、家庭において保育を受けることが一時的に困難となった乳幼児を幼稚園や保育所などの保育施設で預かる「一時預かり事業」などがあります。
「一時預かり事業」の申し込みや実施状況に関しては、地域のニーズなどによって各自治体が独自の方法を採用していますので、詳しくはお住まいの自治体の保育担当課にお問い合わせください。
農業者の協同組合であるJAは、戦後の発足時から農業者の生活を支援する取り組みとして、農繁期に全国で託児所を開設していました。
当時の調査によると、JAの託児所は全国に250か所以上あったことが報告されています。
また、1960年~1970年代には地域の要望に応える形で当時の農村部に不足していた幼稚園や保育所の運営にも取り組んでいました。
当時設立されたJAの保育施設は、現在、そのほとんどが学校法人や社会福祉法人に移管され、JAの直営から離れていますが、兵庫県には当時のまま直営を続けている保育所があります。
近年のJAの保育事業に関する新たな動きとしては、子ども・子育て支援新制度や企業主導型保育制度などの新しい制度を活用した事業所内保育所を設立し、JA職員の出産後の就労継続をはじめ、子育てをしながら農業に従事する組合員への支援などを行っています。
また、こうした制度を活用した取り組み以外にも、地域によって異なる保育ニーズへの対応などを行っています。
例えば、北海道の酪農地帯にあるJAでは、新規就農者の受け入れを積極的に推進しており、営農だけでなく生活面においてもきめ細やかなサポートを行っています。
子育てに関しても、他の地域から就農した若い家族が地縁も保育所も無い中での農業(酪農)と子育ての両立が非常に厳しい状況にあると知ったJAが実態調査を行い、自治体と連携して、児童館の中で農業関係者を対象とした乳幼児の一時預かり事業を展開しています。
これまでは、保育所待機児童問題をはじめとした都市部における保育の課題に注目が集まる一方で、人口が減少傾向にある農村部などの保育の課題にスポットライトが当てられることはほとんどありませんでした。
しかし、ここにきて農水省は、農林水産関係予算の重点事項である「農業農村整備、農地集積・集約化、担い手確保・経営継承の推進」の「女性が変える未来の農業推進事業等」において、女性にとって魅力ある職業として農業が選択されるよう、地域で託児と農作業を一体的にサポートする体制づくりを支援していくことを目指すとしています。
かなり以前から、企業などに雇用されて働く母親に比べ、農家の母親の保育ニーズは顕在化されにくいといわれてきました。
農業の担い手として女性に期待が集まる中、都市部とは異なる農村地域特有の保育ニーズへの柔軟な対応は、農業と子育ての両立に必要なことであり、女性農業者の活躍を期待するうえで重要な支援であると考えます。