夫と弟と酪農業を営んでいます。家族経営のためか、牧場の雰囲気はよく言えばアットホーム、悪く言えば緊張感に欠けています。
それが家族経営の良さだと思っていたのですが、先日、同じく家族経営をしている米農家から「うちは兄弟でやってるけど仕事中は敬語。そうじゃないと、だらけるでしょう?」と言う話を聞き、そういう方法もありだなと思いました。
ピリピリした職場にしたいわけではありませんが、最低限の緊張感は必要ではないかと考えています。
家族経営において気をつけるべきことや、意識した方がいいことを伺いたいです。
(宮崎県・田中実日子さん/仮名・30代)
山下弘幸
株式会社農テラス代表取締役、農業経営戦略家
家族経営のメリットとデメリットを整理して、仕事と家庭を明確に分けましょう
家族経営におけるアドバイスは2つあります。
1つは「家族経営のメリットとデメリットを整理する」ということです。
もう1つは「家族経営であっても仕事と家庭を明確に分けること」、つまり各人が自立するということです。
1、家族経営のメリット・デメリットを整理する
家族経営のメリット・デメリットを整理するには、「ヒト」「カネ」「時間」の3つの方向から整理すると良いでしょう。
【ヒト】
家族経営のメリットは頑張れば全部自分たちに返ってくるという意識から同じ方を向いて一丸となれる点です。
デメリットは仲が悪くなったら気まずくなって事業存続が危うくなる点などです。
【カネ】
メリットは売上、利益がすべて身内でシェアできる点。
デメリットは売上が上がらない(給料が払えない)でも甘えてしまう点、おカネにルーズになりがちな点などです。
【時間】
メリットは、不定期な仕事時間、不規則な休みでも許してもらえる点。
デメリットは身内行事(冠婚葬祭)時に変わりがいない点。
また、誰かが抜けた時、その穴埋めをまた身内に頼らざる得ないようになる点などです
2、家族経営であっても仕事と家庭を明確に分け、各人が自立する
ご質問にあったアットホームな雰囲気は、お金が回っている時だけです。お金が回らなくなると、とたんにギクシャクするものです。
本当に家族のことを思いうなら規制、規定、規約などを取り入れるなどルール化したり、法人化したりすべきです。
理由は、仕事と家庭が一緒の状態は、得てして依存しあう状態になりがちだからです。
家族が依存しあっていると、知らず知らずのうちに誰かに負担がかかりやすく、その負担を抱えたモノから崩れていくことがあります。
つまり、依存しあっていることに気が付かないと、家族経営はうまくいかない可能性があるのです。家族経営の場合は、誰かが必ず「我慢」していることに気付きましょう。
ということで、どうしても家族経営を維持存続させたのであれば、各人が「自立」していることが絶対条件です。精神的にも経済的にも健康的にも依存しない状態です。
これは夫婦が長く一緒に暮らせる秘訣でもあります。ご参考までに。