私の代で3代目になる稲作の専業農家です。稲作の他には、大根や人参、とうもろこし、アスパラを作っています。
最近、小学生の息子に「うちもみんなの家みたいにパパとお出かけしたい」と大泣きされました。
自分の子供の頃を振り返ってみると、確かに自分も同じように思ったことはありました。
ただその当時は周りの家庭も農家が多く「そういうもの」と自然と納得した気がします。
今は専業農家も少なくなり、土日もお盆も関係なく仕事があるのは我が家くらいです。冬はオフシーズンになるので農作業はありませんが、除雪作業の仕事をしているため休みが読めません。
せめて、繁忙期以外だけでも定休を作って家族サービスの時間を作りたいです。もっと家族サービスの時間を設けるためには、どのような働き方をすれば良いのでしょうか。
(北海道・菊地翔平さん/仮名・30代)
村田翔一
ロックファーム京都 代表取締役
作業内容や作付け品目を見直し、人の雇用も視野に入れましょう
私も自分で働き方改革をしたうちのひとりですので、自分の経験から得たおすすめの方法をお伝えしたいと思います。
まずは、現在の経営を見直してみてください。
具体的には、現在栽培している品目の売上と経費を算出し、費用対効果を検討することです。
自分ひとりで得られる売上と経費が変わらない場合、新たに人を雇用することはできません。
なので第一段階としては、現在の作物を見直し、利益単価が高い作物に挑戦することが大切になります。
そして自分の右腕になりそうな社員をひとり雇うことで、パフォーマンスが2倍3倍になり売上増につながる算段が出た段階で、人の雇用を考えましょう。
現場を任せられるようになれば、経営者と従業員が交代で休めるようになるので定休を設けることも可能です。
私自身、10年勤めた消防士を辞めて家業を継いだ時、社員雇用を見据えて選択した作物が九条ネギでした。
これは、効率よく農場経営できる作物は何かを考えに考えて出した答えです。
初めは全ての作業を自分ひとりで対応していましたが、売上が立ってきた段階で「収穫→調整→出荷」という作業のなかで、誰でもできる仕事を外国人実習生に任せました。
人に任せることによって、自分自身も経営者としての業務に時間をあてられるようになり、定休日を設けてキャンプや食事会に参加するなど自由な時間を持てるようになったのは、家庭にとっても自分にとっても大きな変化です。
私の場合は九条ネギでしたが、販路をしっかり確保していることを前提に、品目選びさえ間違っていなければ、農作業のどこかに必ず誰でもできる仕事はあります。
そうした作業はアルバイトやパートさんなどに任せられるということがわかれば、定休日を設けることはそれほど難しいことではないと思います。
中村雅和
いのしし社会保険労務士事務所所長/農業労災事務センター常務理事/社会保険労務士
休みの日程を先に組み込んで仕事を進める意識を
「休み」を取ることは無駄と思われがちですが、労働環境の改善は、作業の効率化や経営の向上、労災事故の減少に繋がるということは科学的に証明されています。
休みなく働き続けることが、かえって無駄につながるということですね。
作られている品目によっても働き方は異なると思いますので、あくまで一般論にはなってしまいますが、農林水産省の働き方改革検討会が2018(平成30)年に公表した「農業の働き方改革経営者向けガイド」を参考に、次の点を意識してみてください。
まず大切なのは、週に1日は必ず休む、月に4日は必ず休む、という具合に休みをあらかじめ組み込むことを前提に仕事を進める意識を持つことです。
そのためには、季節ごとの作業量を洗い出し、農繁期と農閑期の労働時間を明確にすることが大切です。
農繁期の無駄な作業を減らし、農閑期に出来る作業リストを作り、農繁期のピークを均す工夫をしてみましょう。また、無駄な動きを減らす為にも、日頃から書類や道具の整理整頓を行うことも作業効率アップにつながります。
家業であることが多い農業は、どうしても自分の都合で動けてしまうので日々無駄な動きや作業が目に見えない形で積み重なっていることが多いと思います。
それらをちゃんと分析して目に見える形にすれば、時間を作り出すことができます。そうすれば、お子さんと休日を過ごせるようになることも夢ではないと思います。
また、相談者さまの経営規模にもよりますが、GAPを勉強することもひとつの手だと思います。
GAPとは、簡単にいうと安全な農産物の生産や環境に配慮した農業をしている農業生産者に与えられる称号のようなものです。
より専門的に農業の効率化が図れるようになるので、ぜひ検討されてはいかがでしょうか。