新潟県。米と野菜の少量多品目栽培をしている主婦です。
まだまだ先の話ですが、現在4歳の息子にいつか農業を継いでもらいたいと考えています。
これからの時代は「手に職」でないと生きていけないのでは、というのがその理由です。
今からできる農家の英才(英農)教育には何があるでしょうか?
教育といっても勉強ではなく、父と母がしてあげられることをメインでお願いしたいです。
お勉強は私たちに似て才能がなさそうなので(笑)。
停車中のトラクターに乗せたときにはとても楽しんでいたので、親バカだとは思うのですが、すでに農家になる素質はあるかと思っています。
(新潟県・堀田加奈さん/仮名・30代)
伊東悠太郎
水稲種子農家
「農家を継ぎたい」と思わせる環境づくりから始めてみましょう!
事業承継を考える上で、「幼少期の原体験」というのは、大人になってからの職業選択の際に大きな影響を与えると思っています。そこで、「親(経営者)が農業=楽しい!」というように演出してみてはいかがでしょうか?
私にも3歳の一人息子がいて、相談者さんと同じく「いつかは継いでほしいなあ」と思っています。
原体験の演出として、田んぼで石拾いを一緒にする際は、「一番大きな石を拾った方が勝ちだよ」「たくさん拾った方が勝ちだよ」と言ってゲーム性を持たせています。
必ず最後は子供に勝たせるのも大事です。息子も楽しそうに参加してくれていますよ。
農業機械に乗せることも我が家では積極的にしています。動いている機械に乗せることもあります。これは農作業安全の観点からは必ずしもおすすめできないかもしれませんが、危ないものを何でもかんでも排除する風潮にはあまり賛成しないので、私の判断と責任でそうしています。
ただし、動いている農業機械に子供を乗せるときは、乗せる前に危険性や注意点を説明し、ふざけたらすぐに中止するよ、と約束します。すべての農作業の中でもっとも丁寧に、注意深くやっています。自分の子供にケガしてほしいと思う親はいないですし、万が一、事故が起きたら、子供にも自分にもダメージを受けるので、安全への配慮は通常時の100倍はしていると思います。
また、保育園のお迎えにはつなぎ姿で行くようにしています。保育園がちょうど圃場までの移動途中にあるので、トラクターを駐車場に停めて、子供たちに見せてあげることもあります。
「●●くんのお父さんはあの格好で何してるの~?」「●●くんのお父さんは、大きなトラクターに乗っていて、すごくカッコいいね」とお友達が羨ましがってくれるのですが、それが息子にとっての喜びにつながっています。
最後に、子供が手伝っている様子は、写真や動画に残しています。これを大きくなったときに見せてあげたいと思っています。「あなたはこんな風にお父さんと一緒に農作業しながら育ったんだよ」と。
いずれ本人が継ぐか継がないかの判断をする日が来ます。子供が自分から「継ぎたい」と言ってくれる環境づくりが親の責任なのではないかと思っています。
高田裕司
日本プロ農業総合支援機構(J -PAO)上席コンサルタント
頑張る親の背中を見せつつ、お子さんの気持ちを大切にしてあげましょう
どうして後継者になってもらいたいんでしょうか?それ以前に質問者さんはいま、農業にどのような思いで取り組まれているのでしょうか?
親がやりがいを感じながら、多くの方と関わり、そのなかで感謝されたり、感謝したり、多くの苦労はしているけど、でもそのおかげで得られるものがあって……。
そんな親の背中を子供に見せ続けるのが、いちばんの英才教育かもしれません。
サラリーマンはなかなか働く姿をお子さんに見せることはできません。親が何をしているのかは想像の世界になってしまいます。
でも、農業は働く姿をお子さんに見せることができます。そのことを生かして、いろんな機会を通じて一緒に苦労をすることはできますよね。
そのなかでいろいろ感じながら、農業もひとつの選択肢として、人生をかけていくものをお子さん自身が決めていくのでしょうね。