漁協に勤務している者です。
漁師の担い手不足は深刻で、5年後、10年後のことを考えると、暗い気持ちになっています。
解消する方法はないものかと考える日々を過ごしていたある日、孫と話していたら「もう昔と違うんだから、女性の漁師がいたっていいのに」と言われました。
漁協には確かに女性部があり、部員は主に漁家の女性です。
漁村を支える大きな力となっていますが、漁師の減少と高齢化から減少の一途をたどっています。
女性部加工事業や料理を通した魚食推進を担っており、最近はカフェの展開や新商品の開発などを広く手掛けている女性もいたりして、頼もしいなと思っています。
ただし、船の上となると完全な男社会です。補助的に働くということではなく、漁師を志望する女性もきっといるでしょうが、漁師たちの理解を得るのは難しいと思います。
こうした環境的な事も含めて改善し、女性にも門戸を広げなければ未来はありません。
能力とやる気があれば、年齢も性別さえも関係ありません。
そこで、漁業の魅力を発信し、広く内外から人材を募ってみたいものです。
女性漁師誕生の取り組みや課題など、前例があれば話を聞いてみたいです。
(山陰地方・島村嘉さん/仮名・60歳)
三木奈都子
一般社団法人うみ・ひと・くらしネットワーク会員
制度を見直して女性を漁業者として歓迎し、2人以上の女性を要職に配置してみてはいかがでしょうか?
人数こそ少ないかもしれませんが、漁業好きな女性はこれまでもいましたし、もちろん今もいます。女性排除の空気感から、漁業に近づかない、近づけないでいた人も少なくありません。
女性をこれまでと同様に、単なる労働力、特に低賃金で雇用できる安上がりな労働力、あるいはタダ働きの世帯内労働力と見ているなら、女性が漁業に歩み寄ることはないでしょう。女性は敏感で「使われない」ようにしています。
質問者さんたちが想定する女性の海上作業者は、雇用(乗組員)と、自営漁業者前者のどちらでしょうか。
前者であれば雇用条件の見直し、後者であれば家族経営協定の締結や青色申告でその女性に対する給与分の確保などが求められ、家族内での家事分担の取り決めと働いた分の給与支払いも必要です。
いずれにしても、漁協組合員制度や運用の見直しは避けられません。制度や風土をしっかり変え、女性を一漁業者として認め歓迎しましょう。すると、地域全体として女性の漁業者を当たり前とする意識が高まっていくと思います。
女性漁業者の地位向上のためには、漁協の理事やその他の代表に女性を据えて、意見を挙げていくことが求められます。つまり、要となるポストに女性を選ぶことが求められます。
しかし、例えば男性理事ばかりで、忖度文化がある漁協で、女性1人が革新的な意見を出すことは困難でしょう。女性理事が形骸化しないためにも、2人以上の女性がいることが望ましいです。
女性漁業者がそれなりに存在を発揮している他地域の事例として、例えば神奈川県の鎌倉市漁協、葉山漁協、小坪漁協」では、鎌倉市漁協に隣接する小坪漁協が組合員数20名を切りそうな漁協存続の危機を迎えたとき、地域外出身者に対し漁業者の募集を行いました。
その際、漁業に参入した女性が数人いて、その背中を見た女性がさらに漁業者になりました。
また、三重県熊野市では、漁家出身女性が漁業者を希望していたが、親が反対。そこで、地元の飲食会社が募集した乗組員の求人に応募し、漁業者として参入を果たしました。 その結果、女性3名だけで定置網漁業を行うという地元の既成概念を崩しました。
その他の地域でも、定置網漁業への女性の乗船は、徐々に行われるようになっているようです(コロナ禍の影響で、外国人技能実習生の導入が難しくなっていることも影響しているようです)。
これらの事例はもともと漁業に関心を有していた希少な人たちかもしれませんが、女性のやりたい、やってみてもいいかなという気持ちを刺激しつつ、その方向を阻害しない環境整備を漁協等ができるかがカギとなりそうですね。
漁協をベースとした地域の変革と女性漁業者の増加を期待しています。